<世界のタクシー事情>主流は背の高いワゴンで、定番はあのドイツブランド。 中国・上海編
海外に出かけると、クルマ好きとしてはついつい気になるのが現地のタクシー車両。どんなクルマがタクシーとして使われているのかは、とても興味深いところです。今回紹介するのは、中国経済の中心となっている上海のタクシー事情。中国だから中国メーカーのクルマが使われているかと思いきや、実はそうでもないのです。
背の高いワゴンタイプのタクシーがたくさん走っている
近年、上海の街でもっともよく見かけるタクシーは、セダンではなく背の高いワゴン。しかもそのほとんどが、フォルクスワーゲンの「トゥーラン」です。トゥーランは日本では3列シートミニバンの「ゴルフ・トゥーラン」として販売されていますが、上海のタクシーは2列シートのワゴンタイプ。ステーションワゴンのように荷室を広くして、スーツケースを複数積むといった使い方にも適しているので、タクシーとしては理想的なパッケージングといっていいでしょう。
ちなみにこのクルマ、日本のように「ゴルフ・トゥーラン」と呼ぶのは異例で、世界的には本国ドイツも含めてゴルフからは独立した「トゥーラン」が一般的。日本では「ゴルフ」の知名度が高いので、特例的に「ゴルフ」が付いているのです。
- 会社ごとに異なる、いろいろなカラーリングのタクシーがあります。
もちろん、セダンのタクシーも
上海には、もちろんセダンのタクシーも走っています。その代表的なモデルがフォルクスワーゲン「ラヴィダ」。日本では販売していないモデルなのでご存じない方も多いかもしれません。中国専用のセダンで、タクシーとして使われているのは2012年から2018年まで販売されていたモデルです。
- 「ラヴィダ」はゴルフと基本設計を共用した中国専用モデル。
どことなく懐かしい、こんなセダンも
少数派になりますが、違うセダンも使われています。それがこのクルマ。
写真を見て「なんだか見たことがあるような……」と感じた人もいるのではないでしょうか。何を隠そう、このクルマの名前はフォルクスワーゲン「サンタナ」。懐かしい響きです。なぜなら、日本でもかつて日産が自社工場でノックダウン生産して販売していたモデルだからです。1984年から1990年までと、30年も前のことになります。
サンタナは日本での販売が終了してからも、現地では基本設計を変えずに幾度もの改良を重ねながら生産が続き、タクシーとしても主力車両だった時期が長く続いていました。生産は2012年に終了しましたが、タクシーとしてときどき見かけます。
気が付いた人も多いことでしょう。ごく一部の例外を除き、上海のタクシーにはドイツブランドである「フォルクスワーゲン」の車両が使われています。しかしそれらは輸入車ではなく、中国の工場で作られた現地生産車です。
実は中国では、タクシーに限らずフォルクスワーゲンの車両がたくさん走っています。そのほとんどが、タクシー車両と同様に現地生産車です。フォルクスワーゲンの中国現地生産は1985年と早い段階ではじまり、現地のモータリゼーション発展とともに普及。だから親しまれているのです。
10年ほど前には、韓国の自動車メーカーである「ヒュンダイ」製のタクシーが増えたこともありました。しかし、あまり見かけなくなってしまったところをみると、フォルクスワーゲンの牙城を崩すのは難しかったようです。また、希少な車種としては、「吉利汽車(ジーリー)」製の「ロンドンタクシー」も走っています。
日本に比べると初乗り料金はリーズナブル!
そんな上海のタクシーの運賃(上海市街地)は、3㎞までの初乗り料金が一般車両は14元(約213円)。ワゴンタイプは16元(約243円)。そしてロンドンタクシーはちょっと高くて19元(約289円)ですが、日本に比べると安いので気軽に乗ることができます(深夜時間帯は料金が割り増しになります)。料金メーターが付いているので、料金交渉の必要もありません。(金額は2020年8月4日時点)
タクシーは日本のタクシーと同様に屋根の上に行燈がついているので、一目瞭然。行燈が緑色の場合は空車の合図です。
日本と違って海外のタクシーのドアは基本的に手動です。右側通行なので、降りる際は日本とは気持ちを切り替えて右側のドアから降りることをお忘れなく!
(文・写真:工藤貴宏 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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