“空飛ぶクルマ”って本当に実用化されるの? 日本発の「空飛ぶクルマ」「カーゴドローン」を開発・製造・販売するSkyDrive社
もし、「未来のクルマは、どんなもの?」という質問があったら、多くの人はきっと「空を飛ぶクルマ」と答えることでしょう。空を飛んで自由に好きなところへ向かう。古くから映画や小説、マンガなどに登場している未来の乗り物です。ところが、そんな未来の乗り物を大真面目に研究開発し、しかも実用化しようという試みがあります。しかも、日本で! それがSkyDrive(スカイドライブ)社です。
スタートは自動車や航空機メーカーなどの若手による有志団体
SkyDrive社は、2018年7月に設立されたベンチャー企業です。その目的は「空飛ぶクルマ」の開発・製造・販売を行うというもの。ここでいう「空飛ぶクルマ」は、電動で自動運転ができ、そして垂直で離着陸ができるもの。一般的には「エア・モビリティ」と呼ばれるものとなりますが、無人機だけでなく人を乗せる有人機も範疇になっています。
ちなみに、何もないところから急に誕生した会社ではなく、その前に100名程度のエンジニアが集う有志団体(つまりクラブ活動のようなもの)である「CARTIVATOR」(2012年発足)の活動がありました。この有志団体は、自動車・航空業界・スタートアップ関連企業の若手が集まり「空飛ぶクルマ」の開発に取り組んでいたのです。そして、そこでの活動の発展形として、本格的な事業化を目指す会社として生まれたのがSkyDrive社でした。
ですから、SkyDrive社の代表である福澤知浩氏をはじめ、主要メンバーには自動車や航空機メーカー出身者が多く存在します。代表の福澤氏はトヨタ自動車の出身ですし、最高技術責任者の岸 信夫氏は三菱航空機出身でMRJの元チーフエンジニアでした。
開発しているのは有人と無人の2種類のエア・モビリティ
そんなSkyDrive社が最初に開発したエア・モビリティ「SD-01」は、2人乗りで空が飛べるだけでなく、地上を走行する機能も備えた、文字通りの「空飛ぶクルマ」でした。その後、2019年から2020年春にかけては有人飛行が可能な「SD-02」を開発。さらに2020年8月25日には「SD-03」で、有人飛行試験を公開。順調に開発を進めています。
- 有人飛行可能なエア・モビリティとして2019年から2020年春にかけて開発された「SD-02」。
- 2020年8月25日に有人飛行試験を公開された「SD-03」。
また、SkyDrive社は並行して、荷物を運ぶ無人の「カーゴドローン」の開発も進めており、そちらは2019年12月に予約、2020年5月に販売をスタート。30㎏ほどの荷物を運べるということで、山奥で鉄塔をメンテナンスする電力会社や土木・建築現場での資材運搬などの利用が考えられ、実証実験が行われているとか。こちらは実用化目前といった状況です。
- 荷物を運ぶ無人機「カーゴドローン」。全長1300×全幅1700×全高1000㎜、機体重量25㎏。
人が乗るとなれば気になるのは安全性
最近ではドローン実機を目にする機会も多くなってきました。しかし、そこでドローンが強風で吹き飛ばされるのを見たことのある人もいるでしょう。そうなれば気になるのが、「エア・モビリティに人が乗っても大丈夫なの?」ということ。もちろん、有人エア・モビリティに安全性が重要だということは開発メンバーも重々承知です。また、試験で事故などが起きても大問題です。
しかし、そこはご安心を。有人機は、人を乗せるものであって、オモチャではありません。ですから、開発の手法は旅客機と同じ手法で進められています。旅客機の開発は、非常に長い歴史があり、その中で育まれたルールや制度が存在します。その結果、現代の飛行機は非常に高い安全性を実現しています。それと同じ手法で、SkyDrive社のエア・モビリティは開発されているのです。逆に言えば、安全性が確保できないうちは実用化されないというわけです。
- 「SD-03」。全長4000×全幅4000×全高2000㎜で重量は約400kg。8つの二重反転プロペラ・モーターで最高速は40~50㎞/h
有人機のサービス開始の目標は2023年
そんな有人機によるドローンの実用化はいつなのか? それが意外と近い未来、2023年のサービス開始を目標に開発を進めているそうです。まずは大阪の湾岸エリアで、USJと万博会場などを結ぶ海の上5㎞ほどの距離を片道約5分で往復するタクシー的な利用を予定。そして、2025年の大阪万博では、関西空港や神戸空港、大阪中心地など、より広いエリアにサービスを拡大。さらに2020年代後半には関東、中部、沖縄などへの展開も目指しているとか。
- 2020年8月28日、日本政策投資銀行など10社から39億円の資金調達を実施。
期待の大きさはスポンサーの多さに表れている
SkyDrive社の話を聞いていて驚くのは、そのスポンサーの多さです。発足から2020年夏までの間に共同開発や資金提供などで協力するスポンサーは100社以上。しかも、NECやパナソニック、ミズノ、ソニーPCL、東京海上日動、大日本印刷といった大手有名企業だけでなく、トヨタや日野自動車をはじめ矢崎総業、アイシン精機、小糸製作所、ジェイテクト、デンソー、日本精工などの自動車関連企業も数多く名前を連ねます。さらに2020年8月28日には、日本政策投資銀行をはじめ伊藤忠商事、エネオスなど10社から39億円の資金調達を実施したことも発表されています。このスポンサーの多さこそ、SkyDrive社に対する期待の大きさを証明するものではないでしょうか。
ちなみに、現在のところ聞こえてくる有人エア・モビリティの利用法は、タクシーなどインフラ的な使い方が中心です。クルマ好きな人であれば、自分もぜひとも運転したいでしょう。そこで、SkyDrive社代表の福澤氏に「有人エア・モビリティには、操る楽しさがあるのでしょうか」と質問してみました。すると福澤氏は「その通り」と即答し、「操る楽しさも大切にしていきたい」との言葉もいただけました。空飛ぶクルマが実現する日が待ち遠しいものですね。
- SkyDrive社の代表取締役・福澤知浩氏。東京大学工学部を卒業後にトヨタ自動車に入社。2014年に有志団体CARTIVATORに参加し、2018年に同団体の代表に。2018年7月にSkyDrive社代表取締役に就任。
<関連リンク>
SKYDRIVE
https://skydrive2020.com/
(取材・文:鈴木ケンイチ 写真:株式会社SkyDrive(空飛ぶクルマ©SkyDrive/CARTIVATOR、カーゴドローン ©SkyDrive) 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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