運ぶもので素材や構造が違う! タンクローリーのタンクの話

石油やガスなどを運搬するクルマと言えば「タンクローリー」ですよね。でも、「タンクローリーの定義は?」と言われると、意外とわからないものです。今回は、タンクローリーの世界を深掘りしてみましょう。

タンク内部は複数の小部屋に分かれている

まずは、タンクローリーの定義から。道路運送車両法によれば、タンクローリーは8ナンバーとなる「特種用途自動車」の一種で、「危険物、高圧ガス、食料品等の液状の物品を専用に輸送する自動車」です。ローリー(lorry)は、イギリス英語でトラックという意味。つまり、タンク(大きな容器)を運ぶトラックという意味ですが、運搬するものの種類によりタンクの外観や内部構造は大きく変わってきます。

もっともよく見かけるタイプは、ガソリンスタンドなどで見る、ガソリンや軽油といった可燃性の液体
を運ぶタンクローリーでしょう。これら可燃性の液体を運んでいるタンクローリーは、消防法では「移動タンク貯蔵所」という位置づけで、タンクの容量は30,000リットル以下。タンク内部は、4,000リットル以下ごとに間仕切り板を設けるという決まりがあります。つまり、タンク全体に液体が満載されているわけではなく、複数の部屋にわかれたタンクで、ガソリンや軽油を貯蔵しているのです。

これには、安全性の確保以外にも大きな利点があります。各部屋は完全に独立しているため、ガソリンスタンドで使用するハイオクガソリン、レギュラーガソリン、軽油、灯油などを一度に運べるのです。

タンク内が腐食して液漏れなどの大きな問題が発生しないように、タンクの素材には鋼やアルミニウムなどが使われます。仕切り版のほかに「防波板」といって、液体が左右に激しく動くのを抑制する板も入っていますが、これはカーブなどを走行中に重量バランスを整え、重心を安定させるものです。

貯蔵した液体は「底弁」といわれる、底の弁からホースを通してガソリンスタンドの貯蔵庫などに移されます。最近では、誤って違う油種を混ぜてしまう「混油事故」を防ぐため、コンピューターが貯蔵する油種情報を管理し、タッチパネルで貯蔵庫の注入を操作する「混油事故防止装置」が搭載される車両もあります。

薬品やガスを運ぶタンクは特殊な素材や構造が

毒物及び劇物取締法で定められる薬品を運搬する場合は、タンクに耐薬品性が必要です。基本的には、耐薬品性があるステンレスタンクが使われますが、腐食性の強い酸性やアルカリ性水溶液などの薬品には、チタン製や「フッ素樹脂シートライニング」という樹脂で被覆することで、耐食性・非粘着性を向上させたタンクが使われます。こうした薬品を運ぶトレーラーは、「ケミカルローリー」とも呼ばれます。

液化したガスを運ぶ場合は、貯蔵する際にガスを加圧して液体化するので、高圧ガス保安法に基づいた構造で製造されているタンクを使用します。可燃性ガスは18,000リットル未満、毒性ガスは8,000リットル未満という制限があります。

圧力は全面に均等に作用する性質があるので、貯蔵タンクはすべて円筒です。液化ガスの種類によって、圧力以外に、温度(時には超低温)、化学変化などに耐えうるタンク素材、構造が必要になります。普通鋼、「ハイテン」と呼ばれる高張力鋼などが良く使われてます。

ステンレスでピカピカのタンクは水を運ぶ

最後は、水や牛乳などの飲料を運ぶタンクローリーをご紹介しましょう。人の口に入るものを貯蔵する関係上、これらのタンクは清潔であることが第一です。現在は、錆びに強いステンレス製のタンクがよく使用されます。ステンレスなので無塗装で、タンクの外観が鏡のようキラキラしているのが特徴。清潔なイメージをつけるため、納品前にタンクの外側をキレイに磨き上げる会社もあるそうです。

災害時や断水時の家庭飲料水の供給専用に製造された「給水車」も、タンクローリーの一種です。給水車は、飲料水を直接ペットボトルなどに入れられるように、給水口が複数ついているのが特徴です。

このように、ひとくちに「タンクローリー」といってもさまざまな種類があり、役割だけでなく構造や素材も大きく異なります。街を走るタンクローリーを見たら、どんなものを運んでいるのかを見てみると、おもしろいでしょう。

<参考文献>
「三栄ムック 働くクルマのすべて」(三栄書房)
「毒物及び劇物取締法」
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000303
「高圧ガス保安法」
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=326AC0000000204

<関連リンク>
総務省消防庁
https://www.fdma.go.jp/relocation/kasai_yobo/about_shiken_unpan/unpan_gaiyou.html
公益社団法人日本トラック協会
http://www.jta.or.jp/
東京都健康安全研究センター
http://www.tokyo-eiken.go.jp/

(取材・文:斎藤雅道 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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