照らす範囲は左右対称じゃない?ヘッドライトの豆知識

(写真:トヨタ自動車)
(写真:トヨタ自動車)

暑かった夏も終わり、秋の気配が感じられるようになりました。どんどん日が短くなり、ヘッドライトをつける状況が増えた人も多いでしょう。ところで、ヘッドライトの光のあたる範囲(照射範囲といいます)を見て、左右対称ではないことに気が付いたことがあるかもしれません。実はこれは、異常や故障ではなく、あえてそうなっているのです。

クルマの直前の壁などにライトの光を当ててみるとわかりやすいのですが、右側(右ハンドル車では運転席側)の光に比べて左側(右ハンドル車では助手席側)は、より広い範囲を照らすようになっています。わずかな違いですが、ロービームでも左側のほうが右側よりも、より前方かつ外側まで光が届き、広い範囲を照らすようになっているのです。

左側の方が広い範囲を照らす理由は?

左側の方が広い範囲を照らすのはどうしてでしょうか。これは日本の道路が左側通行であることと大きく関係しています。

前提として、ヘッドライトの光は遠くまで届いた方が、より見える範囲が広がるので安全上も好ましいといえます。しかし、光が広範囲になると、対向車や前を走るクルマに眩しく、迷惑になってしまいます。だから、両者の最適なバランスを決め、照射範囲を法規で定めているのです。

右側と左側の照射範囲を分けて考え、右側はすれ違う対向車の迷惑にならないように範囲を少し狭く。左側は路肩の状況をしっかり確認でき、また歩行者を発見しやすいように、見える範囲を広くしているのです。

まとめると、ヘッドライトの光が当たる範囲が左右非対称である理由は、できるだけ迷惑にならないように配慮しながら、安全に運転できるようにサポートするため。これは自動車メーカーを問わず、日本の道路を走るすべてのクルマに定められた要件です。

ちなみに欧米など右側通行の国は、日本とは逆。対向車側となる左側は照射範囲を狭め、路肩側となる右側は少し広めになっています。もちろん、左側通行の国で作られた輸入車であっても日本仕様は、日本で定められた照射範囲に変更しているので安心してくださいね。

ロービームとハイビームの「自動切換」が増えている

ヘッドライトも、どんどん進化しています。たとえば、状況に合わせてロービームとハイビームを切り替える「オートマチックハイビーム」は、多くの新車に備わるようになりました。暗い場所を一定の速度以上で走る際、対向車や前を走るクルマがいないとき、自動的にハイビームにしてくれる機構です。

交通教本で「前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして、歩行者などを少しでも早く発見するようにしましょう」と明記されているとおり、走行の基本はハイビーム。とはいえ、ずっとロービームで走っている人も少なくありません。オートマチックハイビームがあれば、ハイとローの切り替えのわずらわしさをなくし、ハイビームを使う機会を増やして安全に貢献するというわけです。

部分的にハイビームにする仕掛けも採用拡大中

そして、このところ採用車種が増えているさらに高機能な仕掛けが、「アダプティブハイビーム」や「グレアフリーハイビーム」などと呼ばれる機構。夜の運転をサポートしてくれる心強い装備です。

これはハイビームの光の当たる範囲をいくつか(多いクルマでは20個以上)のブロックにわけてオン/オフすることで、状況に応じて自動で照射範囲を細かくコントロールする先進システム。ハイビームが照らす範囲を細かく切り替えられる仕掛けと考えていいでしょう。

具体的なメリットをあげると、街灯がなく真っ暗な夜の郊外や高速道路を走る時、前を走るクルマや対向車へ届く光をカットし、それ以外をハイビームで広く照らしてくれるのです。

ヤリスクロスのアダプティブハイビームシステム(AHS)(写真:トヨタ自動車)
ヤリスクロスのアダプティブハイビームシステム(AHS)(写真:トヨタ自動車)

夜道は、明るく見える部分が広いほど安心できますよね。この仕掛けは、まわりのクルマに迷惑をかけることなく、より広い範囲が見えるので状況が把握しやすく安全で、安心して暗い場所で運転できるようになる心強い機能なのです。

近年、技術の進化によってヘッドライトはどんどん高機能になっています。その根底にあるのは、安全性を高めることと、ドライバーの不安を拭うこと。時にはふらりと夜のドライブに出かけて、ヘッドライトのありがたみを実感しつつ、秋の夜長を楽しんでみてはいかがでしょうか。

(文:工藤貴宏 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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