オイル交換しないと、クルマの内部では何が起こる?
定期的なメンテナンスが必要なエンジンオイル。クルマもオイルも日々性能が進化しているとはいえ、ずっと交換しないでいると一体どうなってしまうのでしょうか? オイルの劣化やその結果として起こる不具合などについて、株式会社和光ケミカル 技術部の重田英人さんにお話を伺いました。
——オイル交換をしないと、クルマのどの部分がダメージを受けるのでしょうか?
「オイル交換せずにクルマを使い続けると、エンジンオイルの特性である『汚れを取りこむ性能』を超えてしまい、エンジン内部に徐々に汚れが溜まります。エンジンには汚れをろ過するオイルエレメントが装着されていますが、オイルの汚れをすべて除去できるわけではありません。
汚れがオイルエレメントの許容量を超えてしまい閉塞する恐れがある場合には、循環(潤滑)を優先し、汚れがそのままエンジン内を循環する仕組みになっていることもあります。最近のクルマに搭載されているエンジンはエンジンオイルの油圧を利用しさまざまな部品を動かすものが多いので、こまかな制御をつかさどるオイルの通路に汚れが溜まってしまうと、作動を阻害することも考えられます。
また、汚れで油路が狭くなったり、オイルの流動性が失われたりすると、オイルの供給に支障をきたし十分な量のオイルが潤滑部位に送られなくなります。これにより動弁系やタイミングチェーンの摩耗、各軸受けの摩耗などに繋がる恐れがあります」
人間の血液と同じで、オイルの流動性が落ちて巡りが悪くなると、さまざまな部位に支障をきたしてしまいます。「動くから大丈夫だろう」と思っていても、実はクルマの内部でじわじわと摩耗が進んでいる可能性もあるわけですね。
——オイルがうまく循環しないと、起こりうる不具合はどんなものでしょうか?
「極端な例かもしれませんが、国交省が『エンジンオイルの劣化による車両火災防止に向けた対策について』という資料を公開しています。内容としてはまず、オイル交換を怠った結果としてオイルがスラッジ化し、ストレーナーからオイルを十分に吸うことができなくなった状態を想定。ストレーナーを疑似的に閉塞させたうえで耐久走行試験をした結果、コンロッドベアリングが破損し、エンジンのシリンダブロックを貫通するという劇的な不具合の発生が認められています。最新のクルマであってもエンジンオイルが潤滑してクルマを動かす仕組みである以上、オイル交換を怠った場合には同じような不具合の発生が考えられます」
頻発する不具合ではないにせよ、エンジンそのものの故障や車両火災に発展する危険性もゼロではないということは頭の片隅に置いておくといいかもしれません。
——長期間、エンジンを始動せずにいた場合はどうなりますか?
「オイルが空気に触れることで懸念される酸化劣化に関しては、大きな変化は起こりにくいです。しかし『ちょい乗り』と呼ばれる短時間かつ短距離の運転後にエンジンを止めた場合、エンジンオイルに混入した未燃焼ガソリンや水分が、エンジンの熱で蒸発する機会を失うことで、オイルの添加剤成分の消耗を早める恐れがあります。いずれにしても長期間エンジンを始動せず、最後にいつオイル交換をしたかわからない状況であれば、一度オイル交換されることをお勧めします」
最後に、ハイブリッド車のメンテナンスについても教えていただきました。
「最近ではハイブリッド車が普及し、省燃費という観点ではエンジンの稼働時間が短くなる非常に優れたシステムだと思います。ですがその反面、エンジンの稼働時間が短くなるということは、それだけ油温が上がりにくい状況が生まれます。エンジンはその構造上、エンジンオイルへ未燃焼ガソリンや水分の混入が避けられません。これらは油温が上がるとエンジンの熱によってある程度蒸発するのですが、油温が上がりにくいとその機会が失われやすく、オイルが厳しい環境にさらされる実状があるのです。
『エンジンが動いていない分、オイル交換のサイクルを延ばしても大丈夫』と思われるユーザーさんがいらっしゃるかもしれませんが、実はそうではないため、オイルメンテナンスには気を付けてもらいたいと思います」
オイル交換をしないままでいると、クルマへの負担は着実に蓄積していきます。取扱説明書などに記載された目安となる期間や走行距離に従って、定期的に愛車のメンテナンスを行っていきましょう。
<取材協力>
株式会社 和光ケミカル
https://www.wako-chemical.co.jp
<関連リンク>
国土交通省 『エンジンオイルの劣化による車両火災防止に向けた対策について』
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha09_hh_000063.html
(取材・文:吉田奈苗 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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