「信号機のない横断歩道」には、どう対応する? 一時停止するのは、わずか21.3%!

JAFは、2016年から毎年「信号機のない横断歩道で、歩行者がいるときにクルマがどれだけ止まるのか?」という調査を実施しています。その結果、2020年の調査では全国平均21.3%! という数字。この数字は、低いのか、それとも高いのか。横断歩道に対して、ドライバーはどのように対応すべきなのかを考えてみます。

信号機のない横断歩道は、歩行者優先がルール

信号機のない横断歩道の脇に人が立っており、その人が横断しそうに見えたとき、ドライバーはどのようにしなければならないでしょうか。その答えは「一時停止して、歩行者に道を譲る」が正解です。横断歩道の近くに人がいるだけでも、停止できるような速度に落とす必要があります。つまり、信号のない横断歩道では、歩行者が優先です。逆に信号機があって、歩行者の横断が禁止されているとき、または、横断歩道の近くに人がいないときに限って、減速せずに通過ができます。

また、普通に走っていて、突然に横断歩道が見えても速度を落とすのは意外と難しいもの。ですから、横断歩道が近い印として、ひし形の白い標示が道路に描かれています。道を走っていて、路面にひし形の標示を認めたら、すぐに減速できるようにしなければなりません。

  • 郊外駅前のバス道にある信号のない横断歩道。(写真:鈴木ケンイチ)

    郊外駅前のバス道にある信号のない横断歩道。(写真:鈴木ケンイチ)

  • 信号のない横断歩道の手前にある白いひし形の標示。この先に横断歩道があることを示す。(写真:鈴木ケンイチ)

    信号のない横断歩道の手前にある白いひし形の標示。この先に横断歩道があることを示す。(写真:鈴木ケンイチ)

横断歩道は歩行者優先が守られていない

「信号機のない横断歩道は歩行者優先」というのは、ドライバーが守るべき交通ルールの基本といえるもの。ところが、実際に守っている人は非常に少ないことが分かっています。

JAF(日本自動車連盟)は、日本の自動車ユーザーのための団体で、ロードサービスやモータースポーツの統轄、交通安全や環境のための幅広い事業を実施しています。その一環として、交通安全アンケート調査や全国調査も行っています。

調査する中で問題が見つかりました。「交通マナーに関するアンケート調査」(2016年6月実施)で「信号機のない横断歩道で、歩行者がわたろうとしているのに一時停止しないクルマが多い」と思う方が87.2%(「とても思う」が43.7%、「やや思う」が42.5%)もいたというのです。そこで、実態把握のために「歩行者優先についての自動車運転実態調査」を2016年夏に実施。全国94か所、1万0026台を対象に調査したところ、一時停止した割合は、全国平均で、わずか7.6%という結果となりました。交通ルールを守っているのであれば、一時停止率は100%というのが本来の姿です。何とも残念な数字ですね。

  • 2016年にJAFが実施した「歩行者優先についての自動車運転実態調査」では、一時停止したのは全国平均で7.6%。

    2016年にJAFが実施した「歩行者優先についての自動車運転実態調査」では、一時停止したのは全国平均で7.6%。

JAFによる交通安全運動「思いやりティ ドライブ」

そんな事態を憂慮したのでしょう。JAFは2016年11月に「Omoiyalty Drive(思いやりティ ドライブ)」というサイトをオープンさせました。「街をゆくすべてのクルマが思いやりいっぱいだったら、もっと素敵な交通社会が成り立つはず。そんな想いをみんなで叶える思いやりのプロジェクト」というもの。具体的には「横断歩道での一時停止」と「ながらスマホはNO」というシンプルなものです。

JAFは、その運動に賛同する人へ「ナンバープレート型Thanks Card」のデータ(HPからダウンロード)や「オリジナルステッカー」(JAF支部窓口にて手渡し)などのプレゼントを実施しています。

  • 全国にあるJAFの支部の窓口にて、写真のオリジナルステッカーをプレゼントしている。

    全国にあるJAFの支部の窓口にて、写真のオリジナルステッカーをプレゼントしている。

2016年の7.6%から2020年の21.3%に年々増加中

そんなJAFの活動の効果もあったのでしょう。毎年、実施されている信号機のない横断歩道におけるクルマの一時停止率調査の結果は、2016年の7.6%、2017年の8.5%、2018年の8.6%、2019年の17.1%、そして2020年の21.3%と増加しています。最初に、21.3%と聞いたときは、あまりの少なさに驚くものですが、実は、これでも増えている! という事実にはさらに驚かされます。

ちなみに、調査では県別の一時停止率も発表されています。2020年の調査結果を見ると、全国平均は21.3%ですが、良いところとそうでないところの差が意外と大きいことに気づきます。もっとも停止率が優れているのは、長野県で72.4%。これは2016年から常に1位だったとか。

  • 「2020年 信号機のない横断歩道におけるクルマの一時停止率(全国平均)」。 JAF「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2020年調査結果)」より。※調査場所は各都道府県内で2箇所ずつですので、都道府県内すべての市町村の箇所で同様の数値(傾向)とは限りません。

    「2020年 信号機のない横断歩道におけるクルマの一時停止率(全国平均)」。 JAF「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2020年調査結果)」より。※調査場所は各都道府県内で2箇所ずつですので、都道府県内すべての市町村の箇所で同様の数値(傾向)とは限りません。

調査ポイントの数は限られているので、この結果は、その県すべての場所を意味するものではありません。とはいえ、第三者機関であるJAFが覆面で実施した調査は、重みがあります。こうした数字は、私たちの日ごろの運転マナーが反映されるもの。一人一人の心がけで必ず変化が現れるはずです。ぜひとも、これからは白いひし形の標示に注意して、横断歩道でしっかりと一時停止できるようにしたいものですね。

<関連リンク>
JAF 信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2020年調査結果)
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/library/survey-report/2020-crosswalk
思いやりティ ドライブ
https://omoiyalty.jp/

(取材・文・写真:鈴木ケンイチ データ・表組:JAF(日本自動車連盟) 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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