クラシックカー用のタイヤは普通のタイヤと何が違う?

何十年も前に製造されたとは思えないほど、見た目も美しく大切にされているクラシックカーたち。そんなクラシックカーの装着タイヤをよく見てみると、見慣れない銘柄を装着しているということはありませんか? それはクラシックカー専用に開発されたタイヤだからです。普通のタイヤとはどこが違うのか? 数多くのクラシックカー用タイヤをラインアップしている横浜ゴム株式会社 消費財製品企画部・製品企画1グループ主任の五来大輔さんに聞いてみました。

クラシックカー用タイヤの誕生はタイヤの進化が理由

クルマと同じく年々進化し続けるタイヤ。その流れの中で昔はスポーツカーの特権でもあった低偏平タイヤを、一般的な車種でも純正採用するようになってきました。

「我々のタイヤラインアップもトレンドに合わせて、大径化と低偏平化が進んでいました。そのような流れの中で『クラシックカーが装着できる小径で高偏平なタイヤが少なくなってしまった』という声がオーナーの方々から届きました」(五来さん)

こうしたオーナーたちの声に応えるために登場したのが「ADVAN HF Type D」でした。

  • ADVAN HF Type D

    ADVAN HF Type D

「2017年に弊社の創立100周年記念の一環として、1981年に登場した『ADVAN HF Type D』を復活させました。このタイヤはチューニングカーオーナーたちを中心にヒットしたもので、復活当初から当時を懐かしむ声が多く聞かれましたね」(五来さん)

一般的なタイヤとの大きな違いは見た目!?

オーナーたちの声から誕生したクラシックカー用タイヤと、現代のタイヤの一番の違いは見た目にあるそうです。

「実は見た目がクラシックカー用タイヤの誕生が最も望まれたポイントともいえます。当時のクルマたちは70、80といった高偏平のタイヤが純正装着されていて、カスタムした車両でも60、55といった偏平率でした。さらに13インチや14インチなど小径が基本です。しかし、クラシックカー用タイヤが復活するまでは、これらのサイズに対応できるのはエコタイヤくらいしかありませんでした。そのため、多くのオーナーさんたちはそのようなタイヤを装着していたのですが、『これではクラシックカーの見た目にマッチしない』という声がたくさん届いていたのです」(五来さん)

そこで横浜ゴムでは当時のタイヤを再現した商品の復刻や、当時の外見上の特徴を反映して新たに作られたオリジナルのクラシックカータイヤを展開しているとのこと。

「トレッドパターン(溝の形)はもちろんですが、サイドウォールに刻印されるメーカーや銘柄、サイズ表記のフォントなどにもこだわっています。また、近年見かけなくなった、サイドウォールに白い装飾を施したホワイトリボンタイヤも取り揃えています」(五来さん)

  • 白い輪が特徴のホワイトリボンタイヤ

    白い輪が特徴のホワイトリボンタイヤ

そして実際のクラシックカーの性能も、開発時に意識されているそうです。

「クラシックカーは現代のクルマと比べるとデリケートな部分が多く、グリップレベルの高いタイヤだと駆動系や足回りにダメージを与えてしまう可能性があります。そのため、サーキット走行を主としたタイヤを除いて、スポーツクラシックカーをターゲットとしたタイヤでも、基本的にはグリップレベルをあえて落として開発しています」(五来さん)

クラシックカーオーナーなくして開発は成り立たない

さまざまな点がクラシックカーのために作られているタイヤですが、実際の開発はどのように行っているのでしょうか?

「一番は市場調査ですね。実際にクラシックカーが集まるイベントへ行き、そこでオーナーさんたちから聞いた話を開発に活かしています。特に苦労したのは 『YOKOHAMA A-008P』というタイヤです。これは1989年にポルシェ911に標準装着されたタイヤで、復刻にあたりドイツのポルシェ社と共同開発を行い、現在の新車装着タイヤと同じように承認を得ることが出来ました。開発に費やした時間は2年以上になります」(五来さん)

クラシックに足元を飾ろう

クルマ好きならタイヤにもこだわりたいもの。おしゃれは足元からというように、性能だけでなく愛車の雰囲気にもバッチリと合ったタイヤを選ぶと、クラシックカーはより素敵に見えるはずです。タイヤ交換の際には、クラシックカー向けのタイヤを選択して、愛車をよりノスタルジックな雰囲気に仕上げてみてはいかがでしょうか。

(取材・文:西川昇吾/写真:横浜ゴム株式会社/編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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