強風のときにクルマのドアはどこまで開けられる?JAFユーザーテスト

カーライフを襲う大雨や大雪などの天災。そのひとつに強風も含まれます。2020年は台風来襲の少ない年となりましたが、2019年9月には記録的な暴風を伴った台風15号が日本に上陸し、最大瞬間風速は観測史上一位となる57.5m/sを記録。関東エリアに大きな被害をもたらしました。

台風などの強風のときにクルマのドアは開けることができるのでしょうか? そんな疑問に答えるべく、日本の自動車ユーザー団体であるJAF(日本自動車連盟)は2017年6月と2020年3月の2回にわたって、強風がクルマに与える影響のテスト(JAFユーザーテスト)を実施しています。どんなテスト内容で、どのような結果になったのかを紹介したいと思います。

強風にさらされたクルマのドアを開ける

JAFが実施したテストは「強風時のドア開け」(2017年)と、「ドアが壊れる!?車や自転車、歩行者への影響は?」(2020年)というもの。基本的に、どちらも強風があたる状況でクルマのドアの開閉を行うというものです。

2017年に実施した「強風時のドア開け」は強風の中でドアを開けたときに、ドアを押さえられるかどうかを、子どもと大人の場合で実施。また、強風であおられたドアが隣のクルマにあたったときのダメージを見るものでした。そして、2020年に実施した「ドアが壊れる!?車や自転車、歩行者への影響は?」では、強風の中で、成人男性がクルマから降りることができるのかが試されました。さらに強風に対して、自転車や歩行者が前進できるのかというテストも実施しています。

  • (写真:「【ダイジェスト版】強風時のドア開けに注意!【JAFユーザーテスト】」より)

(写真:「【ダイジェスト版】強風時のドア開けに注意!【JAFユーザーテスト】」より)
(https://www.youtube.com/watch?v=smG3oazND4M)

大人でも風速30m/sくらいからドアを押さえることが困難になる

まず、一つ目のテストである「強風時のドア開け」に挑んだのは、6歳男児と10歳女児、30代女性と40代男性です。風はクルマの後方から、そして、その強さは、風速20m/s、30m/s、40m/sの3つ。ところが、もっとも弱い風速20m/sであっても6歳男児と10歳女児は、ドアが風にあおられてしまい、押さえることはできません。そして、30m/sになると 40代男性が押さえることができなくなり、40m/sになると30代女性もダメ。
つまり、風速30m/sを超えると大人でも押さえるのが難しくなり、40m/sでは全員がNGという結果。

  • 子どもは風速20m/sでもドアを押さえきることはできませんでした。

    子どもは風速20m/sでもドアを押さえきることはできませんでした。

  • 風速40m/sでは大人の男性も女性もドアを押さえきることはできませんでした。

    風速40m/sでは大人の男性も女性もドアを押さえきることはできませんでした。

また、風にあおられたドアが隣のクルマにあたったときは、風速20m/s、30m/s、40m/sで、風が強くなるほど倍々ゲームのように傷跡が大きくなります。

  • 強風であおられたドアが隣の車両に与えるダメージ。

    強風であおられたドアが隣の車両に与えるダメージ。

  • 風が強くなるほど隣の車両に与えるダメージも大きくなる。

    風が強くなるほど隣の車両に与えるダメージも大きくなる。

テストのまとめとして、「強風時は大人でもドアが開けられなくなるので、ドアの開け方に注意する」「子どもは勢いよく開くドアによって体のバランスを崩し、クルマから転落することもあるので、大人が外からドアを開けて降ろす」などの注意喚起が発表されています。

  • 風速30m/sでは、なんとかドアを開けて外に出ることができました。(写真:「ドアが壊れる!?車や自転車、歩行者への影響は?【JAFユーザーテスト】」より)

風速30m/sでは、なんとかドアを開けて外に出ることができました。(写真:「ドアが壊れる!?車や自転車、歩行者への影響は?【JAFユーザーテスト】」より)
https://www.youtube.com/watch?v=hZJ7iUpRKU0&feature=emb_logo

2つ目のテストである「ドアが壊れる!?車や自転車、歩行者への影響は?」も、風速20m/s、30m/s、40m/sの風の強さでテストを実施。風は、クルマの真横の場合と、後ろからの場合の2方向からそれぞれ吹かせ、その状況下で成人男性がクルマから無事に降りることができるのかが試されました。

  • 風速40m/sでは、ドアを開けることさえできませんでした。

    風速40m/sでは、ドアを開けることさえできませんでした。

その結果は、真横からの風と後ろからの風の両方で、風速30m/sまでは無事にクリアできましたが、風速40m/sになると、真横の風の場合は、風の力でドアはびくとも動きません。そして、後ろからの風速40m/sの風では、ドアを押さえることができず、ドアが大きく開きすぎて、ドアヒンジが破損してしまいました。やはり、風速30m/sを超えると、大人でも普通にドアの開け閉めができなくなるというわけです。

  • 風速40m/sでは、運転手は何もできずに、強風でドアが勝手に開いてしまいました。

    風速40m/sでは、ドアを開けることさえできませんでした。

  • 風速40m/sでは、ドアが強風で開いて、ヒンジ部が破損してしまいました。

    風速40m/sでは、ドアが強風で開いて、ヒンジ部が破損してしまいました。

また、強風に向かって進んだ場合、風速30m/sの時点で自転車も傘も吹き飛ばされます。そして、身体ひとつであっても風速50m/sになると前進することができなくなります。

  • 風速30m/sになると押していた自転車も吹き飛ばされます。

    風速30m/sになると押していた自転車も吹き飛ばされます。

JAFが実施した2つのテスト結果を見ると、風速30m/sぐらいで、大人でもドアの開け閉めが難しくなり、40m/sでは、ほぼ不可能になると考えていいでしょう。また、自転車を押して歩いたり、傘を差して歩くのも風速30m/s以上で厳しいようです。

では、風速30m/sはどれくらいの風なのでしょうか。気象庁のホームページを見ると、風の強さを表す予報用語が公開されています。そこには、「やや強い風」が平均風速10m/s以上、15m/s未満、「強い風」が15m/s以上、20m/s未満、「非常に強い風」が20m/s以上、30m/s未満、「猛烈な風」が30m/s以上と規定されています。ただし、気を付けなければいけないのは、風は強弱があるもの。そして、この規定は「10分間の平均」です。そして同じ気象庁のホームページには、「瞬間風速は平均風速の1.5倍程度になることが多い」ともあります。そういう意味では、平均風速20m/sの時点で瞬間風速は30m/sを想定しなければならなくなります。

つまり、天気予報で「非常に強い風」と警告されたときは、瞬間風速30m/s以上を警戒しなければならないということ。下手をすると、そのひとつ下の「強い風」でも、瞬間風速30m/s近い強い風が吹く可能性もあります。また、子どもであれば「強い風」といった状況でもドアの開け閉めは危険が伴うと考えておきましょう。

「ただの風」と侮らずに、「強風は危険なものである」との認識を持つことが、安全なカーライフにつながります。JAFのテスト動画も公開されていますので、ぜひチェックしてみてください。

<関連リンク>
JAF
https://jaf.or.jp/individual
JAF 強風(ユーザーテスト)
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/windy
ドアが壊れる!?車や自転車、歩行者への影響は?【JAFユーザーテスト】
https://www.youtube.com/watch?v=hZJ7iUpRKU0&feature=emb_logo
強風時のドア開けに注意!【JAFユーザーテスト】
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/windy/door-open
気象庁 風の強さと吹き方
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kazehyo.html

(取材・文:鈴木ケンイチ/取材協力・写真:一般社団法人日本自動車連盟(JAF)/編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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