ダイハツ「ハイゼット」誕生60周年! その歴史を振り返る

日本人の生活を支えるクルマといえば、軽トラックと軽バンでしょう。ほかの国にはない、日本独自の存在です。その軽トラック&バンのパイオニアであり、代表格でもあるダイハツの商用車「ハイゼット」シリーズが1960年11月から販売され、今年で60周年を迎えました。

現在は軽トラックの「ハイゼット トラック」、バンの「ハイゼット カーゴ」「ハイゼット キャディー」の3モデルをラインナップ。シリーズ全体では、累計で約740万台が販売され、現在でも約220万台が保有されています。まさに日本の生活を支える、働くクルマと呼べる存在です。

では、60年に及ぶ歴史の中で、どんな進化を遂げてきたのでしょうか?

3輪トラックのミゼットに続いて1960年に初代が誕生

ダイハツは1907年(明治40年)に誕生した非常に古い会社で、1930年(昭和5年)には、3輪自動車「ダイハツ」を発売します。そして第二次世界大戦後の復興期を経た1957年(昭和32年)に軽3輪トラック「ミゼット」を発表。これが大ヒットモデルとなりました。

  • 1957年に登場して大ヒットした「ミゼット」。このモデルの上のモデルとして「ハイゼット」が誕生した

その後、日本は高度経済成長時代に突入します。そこで人々が求めたのは、ちゃんとした4輪のクルマでした。それに応える形で初代「ハイゼット」が1960年11月に誕生。ダイハツとしては初めての軽四輪自動車(360㏄エンジン)でした。

初代「ハイゼット」はエンジンを運転手の前に置く、ボンネットタイプの軽トラックで、翌1961年にはクローズドのボディを持ったバンも登場。「ビジネスとレジャーを結ぶニューファミリーカー」として売り出されました。

  • エンジンをキャビンの前に置く初代ハイゼット。当時としては斬新なデザインと居住性のよさが特徴

  • 1961年搭乗のバンモデルは、ファミリーカーニーズにも対応した

ちなみに、ライバルとなるスズキ「キャリー」やスバル「サンバー」は、1961年の登場。ホンダの軽トラック「T360」は、1963年に発売開始となっています。

エンジンを床下にして荷台を大きくした2代目

2代目の「ハイゼット」が登場するのは1964年。東京オリンピックが開催され、日本は高度経済成長のまっただ中。2代目モデルはエンジンを床下にしたキャブオーバータイプ「ハイゼット キャブ」となりました。これによりボンネットがなくなり、荷台が拡大します。また、翌1965年にバン・タイプの「ハイゼット キャブ バン」が発売となりました。

  • エンジンを床下にしてボンネットのないキャブオーバータイプとなった2代目モデル

  • ワンボックス型となった「ハイゼットキャブ・バン」。まだスライドドアは採用されていない

ちょうど、このころは、ダイハツから小型乗用車「コンパーノ」も発売されています。そして1968年5月に、3代目となるトラックとバンが同時に発売。斬新な「アクティブキュービックスタイル」というデザインが採用されていました。

  • 「アクティブキュービックスタイル」という斬新なデザインとなった3代目モデル

  • このころの軽自動車規格が現在とは異なり、ボディサイズは2,990mm×全幅:1,290mmだった

利便性を高めた4代目、大きくなった5代目

1971年に登場した4代目モデルの特徴は、積載性や乗り心地を向上。1972年には軽ライトバンとして初めてスライド式ドアを採用。また、急速充電システム付のEVバージョンとなる「クイックチャージャー式電気自動車」が開発され、1976年の大阪国際見本市にお目見えしました。

  • 積載性や利便性を高めた4代目モデル。エンジンはまだ水冷2サイクル直列2気筒の360ccで26psだった

  • バンモデルはスライドドアを初採用。現在まで続く軽バンのスタイルが完成する

1977年登場の5代目モデルは、軽自動車の規格変更により排気量や車両サイズを拡大。その名も「ハイゼット55(ゴーゴー)ワイド」として発売されています。1970年代は二度のオイルショックがあり、排気ガス規制も強まった時代。当然、「ハイゼット」にも厳しい排気ガス規制に対応する新型のAB型550㏄エンジンが搭載されました。

  • 軽自動車の規格が変更になり、ボディサイズは3,195mm×全幅:1,395mmへ

  • エンジンは水冷4サイクル直列2気筒SOHCとなり550ccで28psを発生

好景気に沸いた1980年代を駆け抜けた6代目と7代目

6代目モデルの誕生は1981年。丸いヘッドライトの上に、ちょこんと横に伸びるターンランプが特徴で、「まゆげ」と呼ばれたモデルです。運転席を後ろ側に広げた「ジャンボ」が登場したのも、この世代です。バンには乗用車感覚の「アトレー」グレードが追加されています。

  • ライトの上のウインカーの形から通称「まゆげ」と呼ばれた6代目モデル

  • バンには写真のハイルーフ仕様も登場した

7代目の登場は1986年。日本が「バブル経済」と呼ばれる好景気に沸いた時代です。軽トラックには新開発のパワフルなエンジンが採用され、バンにはガラス天井バージョンが追加されるなど、RV感覚のモデルまで登場しました。また、1980年代には、ハイゼットの海外生産がスタートしています。

  • パワフルな新エンジンやスーパーデフロックなどで走行性能を高めた7代目モデル

  • 乗用グレードの「アトレー」には「コスミックルーフ」と呼ばれるガラスルーフも登場

規格変更にあわせて登場した8代目と9代目

軽自動車の規格変更によって1994年に登場したのが8代目モデル。現在と同じ660㏄のエンジンを搭載しています。このタイミングで、「アトレー」は乗用ライクなモデルとして「ハイゼット」シリーズから独立することになります。

  • 規格変更により、660㏄エンジンを搭載した8代目モデル

  • 水冷直列3気筒SOHCエンジンは44psを発生した

安全性向上を主眼とした軽自動車規格変更にあわせて、ボディを拡大したのが、1999年に登場する9代目モデルです。軽トラック・モデルは現在の「ハイゼット トラック」と名称を改めます。また、バン・タイプも名称を現在と同じ「ハイゼット カーゴ」に。「ハイゼット カーゴ」は、小さなボンネットを持つセミキャブ・スタイルのジウジアーロ・デザインが採用されました。

  • 規格変更によりボディを拡大し、安全性能を高めた9代目モデル

  • 「ハイゼット カーゴ」という名称となったバンモデルはトラックと異なるデザインに

軽トラックとバン、乗用タイプの3モデルになった10代目

2004年、バンの「ハイゼット カーゴ」が、軽トラックとは別のプラットフォームを採用してフルモデルチェンジ。10代目モデルとなりました。そして軽トラックは、それから10年後となる2014年にフルモデルチェンジを果たします。そして2016年に乗用車ベースの新モデル「ハイゼット キャディー」を追加。「ハイゼット」シリーズのバリエーションを強化します。また、2018年には、予防安全機能「スマートアシスト」が「ハイゼット」シリーズに採用されています。

  • 2004年発売の「ハイゼット カーゴ」。改良が続けられ現在も生産されている

  • 農林水産省の進める「農業女子プロジェクト」に参画し、多彩なボディカラーをラインナップする

軽トラックや軽バンの「ハイゼット」シリーズは、私たち日本人の生活のすぐそばで60年にわたって働き続けてきました。これほど身近な存在のクルマはありません。ダイハツでは「ハイゼット60周年記念サイト」をオープンさせています。歴代の「ハイゼット」を眺めれば、その当時のことが思い出されるはず。ぜひともチェックしてみてください。

<関連リンク>
ハイゼット60周年記念サイト
https://www.daihatsu.com/jp/company/history/hijet60th/

(取材・文:鈴木ケンイチ/写真:ダイハツ工業/編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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