道路を守る「車限隊」に密着! プロの目で違反車両を取り締まる
高速道路には「車限隊(しゃげんたい)」というチームが存在しており、日々、道路を守る活動をしています。では、この「道路を守る活動」とは、具体的に何をしているのでしょうか? 2021年1月早々に行われた活動を取材してみました。
車限隊の役割は重量オーバー車両を取り締まること
車限隊の由来となる「車両制限令」。あまり耳馴染みはありませんが、意外に身近な法律によって定められたもの。それが「道路法」です。名前の通りに「道路」にまつわる法律で、罰則も用意されています。そして「車両制限令」とは、その道路法のひとつとなります。
具体的にいえば、道路が壊れないように、その上を走る“クルマの重さを制限する”というもの。そもそも道路は、重い車両が走れば走るほど、疲弊してゆき、最後は壊れてしまいます。永久に壊れないものではありません。そして、当然のように補修には、お金も手間も時間もかかります。なるべく壊れないように使うことが、大切です。
そこで、道路の構造上の限界を見据えて制限が定められました。ざっくりいえば、普通の道で総重量20トン、高速道路で25トン。それ以上の重い車両は、基本的に走行してはいけません。どうしても走りたいというときは、許可証の申請を出すというルールになっています。
ちなみに、道路に対するダメージの大きさは、重量(軸重)の12乗に比例します。つまり、重量が2倍になると、2を12回掛けることになり、その結果は4096。車両の重量が2倍になると、4096倍もの負担がかかるのです。そのため、全体のわずか0.3%の重量オーバーの違反車両が、道路や橋の劣化に与える影響のなんと9割を占めています。
そこで、車両制限令の違反車両を取り締まるのですが、取締りは警察だけでなく、道路管理者が行うことも許されています。つまり、東日本エリアの高速道路であれば、NEXCO東日本が道路管理者になりますし、ほかに首都高速道路やNEXCO中日本、NEXCO西日本も、同じ道路管理者となります。
道路会社としては違反車両が増えるほどに道路が傷みますから、警察任せにするのではなく、独自に車両制限令の取締りを行うチームとして車限隊を編成し、警察と合同だけでなく独自の取り締まりも積極的に行っているのです。
一瞥するだけで怪しい車両をピックアップしてゆく
今回、取材した車両制限令の取締りは、ETCゲートの付近で行われました。まず、ETCゲートに向かって減速してくる車両を隊員が目視でチェック。見た目やサスペンションの沈み具合、エンジン音などで、違反の可能性のある車両を識別してゆきます。
怪しい車両を見つけると、無線でETCゲートにいる仲間に連絡。ETCゲートの隊員が、該当車両を停止させて、重量を測る装置の上に誘導し、実際の重さを計測するというのが取締りの流れです。
実際の取締りを見ていると、一見なにも問題なさそうな車両も停止させています。ところが、計測してみれば総重量は規定の25トンを軽々と上回る38トンで、びっくり。また、車幅が規定の2.5mを超える車両も見つけていました。ETCゲートに向かってスピードを落としているとはいえ、一瞬で判別する目利きの鋭さは、さすがプロだなと感心するばかりです。
違反車両に対しては、次のICからの流出、積み荷の減載、通行の中止などの措置がとられます。また、違反を点数制として、累積した会社に対しては、NEXCOなどが提供している大口・多頻度利用者向けの高速料金割引を停止する措置も。さらに警察に告発されれば、100万円以下の罰金刑も用意されています。もちろん見た目で識別するため、中には許可証を持っているというケースもあります。
取材日は、正月早々ということもあってか、1時間の取締りで違反となったのは、わずか1両に留まりました。
取材時に停止指示を受けたドライバーはすぐに従っていましたが、違反車両のドライバーが素直に応じることの方が少なく、怒鳴ったり威嚇的になったりする人も多いとか。ひどいときは、暴れて警察に逮捕されてしまう人も……。
たしかに、「あなたは違反です」と言われて気分のいい人はいないでしょう。でも、トラックのドライバーはみなプロ。何が違反なのかは、理解していて当然のこと。重量オーバーした車両は道路を劣化させるだけでなく、ブレーキの効きも悪くなり、交通事故の危険性も高まります。本来、違反したということを素直に認めて、是正すべきものです。
「肉体的なつらさは休めば取れますが、精神的な負担は厳しいものがありますね。取り締まる側のつらさもあるし、諭す大変さもあります。ただ、多くの方は、根気強く説得することで最終的には納得していただけています」とは車限隊の伊藤隊長。
警察官でもないのに、一般の人を取り締まるというのは、相当なストレスになることでしょう。それでも車限隊の一員として、今日も高速道路に立つというのは大変なことです。
道路を守る頼もしい存在
「隊員は使命感を持ってやっている人間が多いですね。やはり道路は国民の財産となるもの。道路の効果を最大限に発揮すれば、暮らしが発展し、日本経済全体が活性化します。それを次世代によりよい形で渡したいと考えています」と伊藤隊長。
高速道路のETCゲートで青い制服を着た人たちを見かけたら、かなりの高い可能性で車限隊の人たちです。道路と安全を守るために働く車限隊という存在のあることを、ぜひとも知ってほしいと思います。
▼NEXCO東日本 ドラぷら
https://www.driveplaza.com/
(取材・文:鈴木ケンイチ/写真:鈴木ケンイチ・NEXCO東日本/編集:木谷宗義type-e+ノオト)
[ガズー編集部]
最新ニュース
-
-
ついに1000万円超えた、トヨタ『アルファード』『ヴェルファイア』に初のPHEV…510万円からの入門車も
2024.12.21
-
-
-
初心者必見! エアクリーナーフィルター交換で失敗しないためのポイント~カスタムHOW TO~
2024.12.21
-
-
-
トヨタ『MIRAI』が動力源の水素キッチンカー、汐留クリスマスマーケットに出店へ…12月21-22日
2024.12.21
-
-
-
日産『キックス』旧型を「キックス プレイ」として併売へ
2024.12.21
-
-
-
マルチスズキ、『ワゴンR』発売25周年を祝う…3年連続インドベストセラー車に
2024.12.21
-
-
-
横浜ゴムはタイヤ/ホイールの2ブース出展、織戸茉彩選手の『MAAYA GR86』展示も…東京オートサロン2025
2024.12.21
-
-
-
マツダが8車種と最多、米IIHS最高の安全性評価「トップセーフティピック+」獲得
2024.12.21
-
最新ニュース
-
-
ついに1000万円超えた、トヨタ『アルファード』『ヴェルファイア』に初のPHEV…510万円からの入門車も
2024.12.21
-
-
-
初心者必見! エアクリーナーフィルター交換で失敗しないためのポイント~カスタムHOW TO~
2024.12.21
-
-
-
トヨタ『MIRAI』が動力源の水素キッチンカー、汐留クリスマスマーケットに出店へ…12月21-22日
2024.12.21
-
-
-
日産『キックス』旧型を「キックス プレイ」として併売へ
2024.12.21
-
-
-
マルチスズキ、『ワゴンR』発売25周年を祝う…3年連続インドベストセラー車に
2024.12.21
-
-
-
横浜ゴムはタイヤ/ホイールの2ブース出展、織戸茉彩選手の『MAAYA GR86』展示も…東京オートサロン2025
2024.12.21
-