3350円は当時の実車と同じ価格!トヨタ博物館で買える1/43「トヨダAA型」ミニカー
1936年(昭和11年)にトヨタが初めて世に送り出した量産乗用車が、「トヨダAA型乗用車」です。
当時、自動車といえば欧米メーカーのものが当たり前の時代。戦前の日本にも、すでに数社の自動車メーカーが誕生していましたが、まだまだ1000cc以下の小型車や三輪トラックばかりの時代でした。
そんな時代に登場したトヨタ初の乗用車は、「デソート・エアフロー」というアメリカ車のスタイルを参考にしたと言われ、ボディサイズは全長4785mm×全幅1730mm×全高1736mm。排気量3389ccのエンジンを搭載した、堂々としたサイズのモデルでした。
トヨタ博物館オリジナルの1/43ミニカー
トヨタ自動車にとって記念すべき1台であるトヨダAA型。現在、愛知県長久手市にあるトヨタ博物館にて、1/43のミニカーがオリジナル商品として税抜き3350円(税込み3685円)で発売されています。
3350円というこの価格は、トヨダAA型の発売当時の車両価格なのだそうです。1936年といえば、ドイツでベルリンオリンピックが開催され、国内では二・二六事件が起きた年で、大卒の初任給は80円程度。
そのほかの大半の初任給が40円程度だったという時代ですから、少々乱暴ではありますが、中間をとって当時の初任給の平均を60円とすると、貨幣価値は現在と3300倍ほど違います。つまり、トヨダAA型を現在の価値に換算すると、約1100万円となるのです。
当時のクルマの貴重さを考えると、案外安いようにも感じられるかもしれません。いささか大雑把な比較ではありますが、同じレートで計算すると、当時13銭程度であったという蕎麦やうどん一杯の価格が429円、当時7銭だったタバコ1箱(ゴールデンバット)は231円となりますから、“案外安い”という感じ方も、当たらずといえども遠からずといったところでしょうか。
時代を象徴する「TOYODA」の文字
トヨダAA型が発表された当時は、まだ「トヨタ自動車」という会社はありませんでした。開発したのは、豊田(とよだ)自動織機製作所(現:豊田自動織機)の自動車部で、翌年にこの自動車部が独立してトヨタ自動車工業(現:トヨタ自動車)が設立されます。
このことから、発売当初の車名は「トヨダAA型」でしたが、トヨタ自動車工業設立にともない車名は「トヨタAA型」と変更されました。今回、紹介しているミニカーは「トヨダAA型」ですので、ホイールのロゴなどをよく見ると「TOYODA」の文字が描かれています。
トヨダ(トヨタ)AA型は、1942年までに1404台が生産されましたが、現存している個体はオランダのローマン自動車博物館が所蔵している1台のみと言われています。日本では、1980年代にトヨタ自動車が復元したものを、トヨタ博物館や鞍ケ池記念館、トヨタ産業記念館で今でも見ることができますが、いずれも初期の「TOYODA」バージョンです。
発売後わずか3年後に大戦に突入したため、民間人のためのクルマとしては決して恵まれた時代とは言えず、生産台数は決して多くありませんが、トヨタのみならず日本の自動車産業にとって記念すべき1台として今も語り継がれています。
縮刷カタログもつくこだわり
当時、トヨダAA型を購入した人々と同じ金額で85年もの歳月を経た令和の時代にミニカーを購入できるなんて、その価格設定の遊び心も楽しく、また感慨深くもあります。ボディカラーは黒と灰桜と呼ばれる明るいカラーの2種。当時のカタログの縮刷版のようなミニカタログもついています。
このミニカーはトヨタ博物館のほか、トヨタ産業記念館でも発売されていますが、それぞれが専用の外箱を用意するほどのこだわりは、トヨタにとってトヨダAA型がいかに大切な1台であるかを象徴しているようでもありますね。
▼トヨタ博物館
https://toyota-automobile-museum.jp/
(取材・文・写真:高橋学/編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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