目標はニュル最速!? サーキット走行に特化した高性能な市販車たち
量産市販車は、公道走行を最優先で考えて作られるのが常識です。しかし、中にはそんな常識から外れたクルマも存在します。どんなクルマかと言えば、サーキットでの走行性能をとことん追求した超高性能なクルマたち!
公道走行のための安全性を満たし、ナンバープレートを取得可能ながら、あくまでサーキット走行に重点を置いて作られたクルマもあるんです。今回は、そんなクルマ好きが憧れる最高峰のモデルを5台紹介しましょう。もちろん、すべて改造車ではなく、自動車メーカーが販売する(した)モデルです。
ターボと自然吸気が選べるポルシェ911の最高峰
レースとは切っても切れない関係にあるドイツのスポーツカーメーカー、ポルシェ。同社の定番モデルである「911」をベースにして、究極の走行性能としつつ、ナンバーが取得できる仕様としているのが「911GT2 RS」や「911GT3 RS」です。前者はターボエンジン、後者は自然吸気エンジンの最高峰モデルという位置づけとなっています。
最新となる991型911GT2RSのエンジンは、3.8Lターボでパワーはなんと700ps! 停止状態から時速100キロまでの加速(0-100km/h加速)は、わずか2.8秒だというから驚くしかありません。
性能はもちろん、大きなウイングをはじめとするスタイリング、標準装備のフルバケットシートにオプション設定のロールバーを装着した室内も、まさに「公道を走るレーシングカー」ですね。走りはカミソリのようにキレッキレで、じゃじゃ馬のように過激です。
そんな「GT2 RS」は、ドイツにある超過酷なサーキット「ニュルブルクリンク」の北コースにおけるタイムアタックにおいて、量産市販車史上2番手となる6分44秒97という記録を持っています。
量産市販車“ニュル最速”を誇るメルセデスの凄い仕様
メルセデス・ベンツの超高性能スポーツモデルである「メルセデスAMG GT」。その最高峰となるのが、2020年秋に発表された「メルセデスAMG GTブラックシリーズ」です。
730psというエンジン最高出力は、メルセデスAMGの歴史において最もパワフルな強心臓。2020年12月には、ニュルブルクリンクの北コースで、6分43秒616という量産市販車の最速ラップを記録しました。見るからにレーシングカーのような仕立てで、このまま公道を走れるとは思えないほどのスタイルですね。
東京モーターショーでデビューした特別なM4
もう1台、ドイツ製の特別なクルマを紹介しましょう。「公道を走れるレーシングカー」というコンセプトで2015年に発表されたのが、BMW「M4 GTS」。世界初公開の場はなんと、東京モーターショーでした。同社の4シリーズをベースにした超高性能仕様「M4」をさらにハイパフォーマンスに仕立てたサーキット向けモデルです。ニュルブルクリンクのラップタイムは7分27秒88。
このモデル専用にモデファイを受けたエンジンは、シリンダー内に水を噴射して温度を下げる「水噴射システム」を世界初搭載。その出力は500psにものぼります。
サーキットに照準を合わせたサスペンションはガチガチのハードな乗り味で、室内は徹底した軽量化が施されたうえでフルバケットシートや6点式シートベルト、ロールバーを標準装備するなど、レーシングカーそのものでした。法規の関係で日本仕様には非装着でしたが、本国仕様では消火器まで標準搭載というから驚きですね。
実際に運転したことがありますが、アクセルを踏み込んだときの鋭い吹け上りと、シフトダウン時に響きわたる雷が落ちたかのような轟音、あまりに激しい排気音の刺激が印象的でした。世界限定700台で日本では30台が販売されましたが、あっという間に売り切れたのは言うまでもありません。それにしても、ドイツの自動車メーカーはこういうクルマが大好きみたいですね。
FF量産車のニュル最速を樹立したスペシャルなマシン
フランスにもサーキットを本拠地とする過激なモデルが存在します。その最新といえるのが、ルノーのハッチバック「メガーヌ」の最高峰となる「メガーヌR.S.トロフィーR」。
このクルマに課せられた使命は、たったひとつ。ドイツのサーキット「ニュルブルクリンク」の北コースで量産市販車FFモデル最速のラップタイムを刻むことです。それはつまり、ライバルであるホンダ「シビック・タイプR」の記録を超えることを意味します。
エンジンは300psと控えめですが、注目は徹底的な軽量化。ベース車両に対してリヤシートをはじめ、後輪操舵システムといったメカニズムまで徹底的に部品を取り外し、130kgのダイエットを実現。そして、目的だった量産市販車FFモデル最速のラップタイム(7分40秒1)を樹立しています。
通常モデルは、世界限定470台のうち47台、さらに軽量化を施した“ニュルアタック仕様”は世界限定30台のうち4台が日本でも販売されました。本当に限られた人だけのクルマですが、日本にもしっかり導入されたのはうれしいですね。
日産が誇る、世界級の性能を持ったGT-R
日本を代表する“サーキット走行に特化した市販車”といえば、「日産GT-R NISMO(ニスモ)」でしょう。超高性能車の「@@@GT-R」をベースに、エンジン出力アップやサスペンションの強化を実施してポテンシャルアップ。通常の@@@GT-Rですらサーキット走行を不満なく楽しめますが、それ以上の速さを実現しています。
エンジンは通常モデルの570psに対し、このNISMOは600ps。これは国産車最高峰です。それを支えてしっかりと生かすために、ボディはカーボン素材を多く使って軽量化すると同時に、超高速域での空力性能を徹底的に強化。もちろん、サスペンションはサーキットに最適化され、さらに超高速域からの安定した減速を実現するカーボンセラミックブレーキ、パワーを路面へしっかりと伝え、旋回性能も高めるナノレベルの素材構造から見直した超ハイグリップタイヤを装備。すべてがサーキットでタイムを削るために設計されたと言っていいでしょう。価格は2420万円。限定生産ではないので、誰でも購入可能です。
サーキットが本拠地の市販車は、ニュルとの関係が深い?
これらのクルマはすべてナンバー取得が可能ですが、それはサーキット向けのクルマながら公道を走ってサーキットまで移動するためと考えると意味を理解できます。そして、こうしてサーキットを本拠地とする市販車を並べてみて気が付くのは、「ニュルブルクリンク」におけるラップタイムが一つの指標であり、それを縮めるために開発されたクルマが多いということ。スポーツモデルはイメージ作りが大切で、どのクルマもタイムを縮めることで、ブランドイメージを向上させる役割を担っているかもしれません。
(文・写真:工藤貴宏/写真:メルセデス・ベンツ、ポルシェ、BMW、ルノー、日産自動車/編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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