チューニングショップがオリジナルのタイヤを開発!その名も「シバタイヤ」

「R31スカイライン」こと、7代目日産「スカイライン」を得意とするチューニングショップ「@@@R31ハウス」。これまで、R31用の補修・改造パーツのみならず、オリジナルのラジコンカーも開発してきたショップですが、なんとオリジナルのタイヤまで開発!

社名である柴田自動車から「シバタイヤ」と名付けられ、旧車オーナーの間で人気沸騰中だといいます。オリジナルタイヤまで作ってしまう真意とは? 柴田自動車代表の柴田達寛さんにお伺いしました。

ドリフトで年間1000本を使用。タイヤ代がかさむ…

  • (写真:柴田自動車株式会社)

タイヤはタイヤメーカーが作るもの。そんな常識を覆してオリジナルのタイヤを開発したのはなぜでしょうか? まずは開発の経緯から聞いてみました。

「弊社ではドリフト競技に参戦しています。ドリフト競技ではタイヤの消耗が激しく、年間1000本以上タイヤを消費していました。もちろん、勝負に勝つためには高性能で高価なタイヤを使用する必要があり、タイヤ代がかさんでしまいます。そこで『オリジナルのタイヤを作ったら安くできないか?』と考えました」(柴田さん)

  • ドリフト競技では多くのタイヤを消費する(写真:柴田自動車株式会社)

競技のために「オリジナルのタイヤを作ろう!」という考えは、普通では思いつかないもので驚かされますが、さらに驚かされるのが柴田さんの行動力です。

「国内のタイヤメーカーに『オリジナルのタイヤを作ってほしい』と頼んでもまず無理だろうと、海外メーカーに目を向けました。そこで、200社以上のタイヤメーカーが集まる上海のタイヤエキスポに行ってみたんです。もちろん『ここだ!』と思ったメーカーに頼み込むためですね」(柴田さん)

  • 上海タイヤエキスポへタイヤメーカーを探しに(写真:柴田自動車株式会社)

上海タイヤエキスポで出会ったカッコいいタイヤ

200を超えるブースの中から自分が納得のいくタイヤメーカーを見つけるために、柴田さんがしたことは、とにかく「タイヤを触る」ということ。

「タイヤエキスポに行くのはいいのですが、私はそんなに英語や中国語ができるわけではありません。信じるのは、己の経験から蓄積された記憶と感覚のみです。とにかく、いろいろなタイヤに触ってみて、よさそうなメーカーを見つけようと思いました。すると、『RYDANZ(レイダン)』というメーカーのタイヤが好感触で、『これしかない!』とピンときたんです」(柴田さん)

柴田さんは、すぐさまその場にいた担当者に声をかけ、「年間1000本使うからこんなタイヤを作ってほしい!」とオリジナルのイラストを見せて交渉したそうです。そのときのイラストがこちら。

  • 実際に柴田さんが見せた手書きのイラスト(写真:柴田自動車株式会社)

「タイヤに対して性能を求めるのはもちろんですが、カッコよさが何よりも重要だと私は考えています。オリジナルのタイヤを作るならば、弊社のコーポレートマークである稲妻をモチーフにしたカッコいいタイヤを作りたかったのです」(柴田さん)

普通ならば、「急にそんなことを言われても……」となりますが、レイダンはモータースポーツ用タイヤを得意としていて細かな注文にも対応可能なため、その場でOKが出たそうです!

数値を変えてベストな性能を探る

タイヤエキスポに足を運んだ柴田さんの熱意と、自作のイラストが生んだレイダンとの関係。柴田さんは競技に使用するベストなタイヤを探るため、40~440までさまざまなトレッドウェア数値(耐摩耗性)のタイヤをテストします。基本的には、このトレッドウェア数値が低いほどグリップ力が高くなりますが、耐久性は劣ります。

  • 競技で使用するとタイヤの摩耗はこのとおり(写真:柴田自動車株式会社)

「スポーツラジアルと呼ばれる公道走行も可能なスポーツタイヤでは、180または240のトレッドウェア数値が主流なので、まずはこの2種類で作ってもらったところ、すごくよかったんです。サーキット走行を前提としたSタイヤに近いグリップ力を感じました。それでいて、Sタイヤのように、熱を入れないとグリップしないといった気難しさがなく、雨の日も普通に乗れるので、街乗りからサーキットまでオールマイティにこなせるタイヤだと思いました」(柴田さん)

グリップ力が高くて、扱いやすく、しかも安い。さらにカッコもいい。人にすすめられる要素をすべて詰め込んだタイヤができたと、柴田さんはこのタイヤの販売を決断したそうです。

装着ユーザーと直接LINEでコミュニケーション

  • (写真:柴田自動車株式会社)

こうして2021年1月17日に販売開始となったシバタイヤ。R31ハウスのお客さんから徐々にそのよさは口コミで広まり、SNSで話題となります。

「SNSで話題になってから、問い合わせが増えましたね。でも、売り始めたばかりのタイヤなので、販売そのものよりも、ユーザーさんの手にわたったあとのことを重要視しています。2021年3月現在、タイヤの注文はLINEで受け付けていて、購入された方にはその後、使用感などを伺っています。『ベストタイムを更新した!』『乗り心地もいい』といったうれしい声と同時に、「このサイズがほしい」「こうするともっといいと思う」という声も直にユーザーさんから聞けるため、次の開発の参考になります」(柴田さん)

こうしたLINEでユーザーさんから届けられた声をもとに、すでにサイズ展開の拡大などを考えているそう。でも、「絶対に変えたくない」というこだわりのポイントもあるのだといいます。

「トレッドパターンのデザインは、絶対に変えなくないこだわりです。それはもちろん、このパターンが一番カッコいいと思っているから。今までいろいろなタイヤを試してきた中で、カッコよさに惚れたタイヤもあったのですが、モデルチェンジでトレッドパターンが変わってしまい、ガッカリしたこともあります。シバタイヤではそんなことがないように、見た目は変えずに中身をバージョンアップしていきますよ!」(柴田さん)

  • このトレッドパターンは変えずに中身を進化させていくという(写真:柴田自動車株式会社)

タイヤに人一倍こだわりのあるクルマ屋さんが作ったタイヤであるシバタイヤ。柴田さんはユーザーさんの声をなによりも大事にし、スポーツ走行を楽しむすべての人に必要なタイヤを提供し続けたいと話していました。安くて、性能がよくて、カッコいいという三拍子揃うタイヤ、「待ってました!」という人もいるのではないでしょうか?

(取材・文:西川昇吾/写真:柴田自動車株式会社/編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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