「“ととのう”町」を目指して……国内では珍しいサウナバスが北海道当麻町に誕生!
昨今、新たなファンを増やし続けているサウナ。サウナーとも呼ばれるサウナ愛好家は今やさまざまなスタイルでサウナを楽しんでいます。そんな中、北海道旭川市の隣に位置する当麻町に国内でも珍しいサウナバスが登場しました。サウナバスをつくることになったのは、とある人の提案がきっかけでした。サウナバス製作の経緯や今後の展開について、当麻町役場情報発信戦略課情報発信係 弘中芳春さん、サウナバスを製作したトウマ電子工業株式会社 代表取締役 只野憲弥さんにお話を聞きました。
前澤友作さんの「8億円寄付します!!」ツイートから広がった夢
――なぜ当麻町としてサウナバスをつくることになったのですか?
弘中さん:2020年11月に株式会社ZOZOの創業者前澤友作さんがふるさと納税として8億円の納付先を募集するというツイートをされたのです。そこで、町としてのアイデアを村椿哲朗町長が前澤さん宛にツイートしました。
――拝見しました。#ふるさと納税8億円アイデアというハッシュタグで、全国のたくさんの自治体による熱いプレゼンテーションが行われていましたね。
弘中さん:当麻町のアイデアは、「当麻町の環境や産物を生かして、森の中や街中にサウナを備えた一大テレワーク拠点をつくりたい」というもの。結果として、8億円は150の自治体に500万円ずつ寄付されることとなり、当麻町にも寄付いただけることが決まりました。しかし、当初の計画では予算8億円と考えていましたので、実現するにはどうしたらよいかということになったのです。そこで、立ち上がったのが「Made in 当麻町“ととのう”町サウナプロジェクト」でした。そして、そのプロジェクトの手始めとして、自然あふれる当麻町の中を移動して好きな場所でサウナを楽しむことができるサウナバスを開発しようという流れになったのです。
プロジェクトは町内の企業の全面協力で動き出した
――サウナバスをつくるにあたって、町内の皆さんがひと肌脱いだとのことですが?
只野さん:町長とお会いしたときに、「最終目標は、サウナ―の聖地・フィンランドにあるサウナバスをつくりたいのですが、移動可能なトレイラータイプのサウナを製作することはできないですか?」というお話がありました。うちは、もともとキャンピングカーの製作をしていまして、いろいろなタイプの販売やレンタルをしています。そのため、製作の勉強のためにとマイクロバスを購入し、キャンピングカーにしたものが既にあったのです。そこで、トレイラータイプではなく、そのマイクロバスのキャンピングカーを改造してサウナにするというのではどうでしょうと町長に提案してみました。
――トウマ電子工業さんが自社で製作されたということですか?
只野さん:そうです。提案したサウナバスという形でよければ協力させていただきますよと話しました。私たちも当麻町で48年間会社をやらせていただいていますので。既存のマイクロバスのキャンピングカーを大幅に改造、内装材には町森林組合の提供のトドマツ材を使用し、サウナストーブも町内の鉄工場で特別につくっていただきました。
――まるごと当麻町産のサウナバスということなのですね
弘中さん:そうですね。今回、サウナバス本体の改造にしても、ストーブのことにしても、町として「できないかも、どうしよう」と思っていることに対して、町内の皆さんが「やるよ!」と、二つ返事でやってくれて本当にすごいな、ありがたいなと思っています。
サウナを堪能しながら移動するのも夢じゃない?!
――サウナ室はどのような仕様になっているのでしょう?
只野さん:サウナは2畳程の広さで5人は入れます。サウナストーブはもちろん装備されていますが、弊社でつくっている遠赤外線シートを座席部分などに搭載しています。これは医療機器にも使用しているもので、サウナストーブを焚いていなくても遠赤外線サウナとして体を温めることが可能です。
――ということは、サウナストーブを焚けない走行中でもサウナに入ることができるのですか?
只野さん:キャンピングカーとしての登録の都合で今はまだ実現できていませんが、構造の条件をクリアすれば可能となるので、今後の課題として車内を工夫していきたいと思っています。
――流れる景色を見ながらのサウナ……それは楽しみですね。その他に特徴はありますか?
只野さん:弊社で製造しているイオンクラスター除菌脱臭器を設置していますので、安心・快適にサウナを楽しんでいだけるかと思います。
サウナバスを起点に町を盛り上げていきたい
――サウナバスが完成したわけですが、今後の展開はどのようにお考えですか?
弘中さん:まずは、ふるさと納税の返礼品として登録し、レンタルできるようしていきます。そして、できればサウナバスで当麻町内を巡ってステイしていただきたいということで、当麻の自然を存分に楽しんでもらえるような場所づくりを進めています。前澤さんからの500万円の使い道の一つがこの場所づくりの費用となっています。当麻町にはこれまでキャンプ場はありましたが、クルマごとステイできるオートキャンプ場がなかったのです。ですから、サウナバスはもちろんキャンピングカーも入れるような場所を今、つくっている最中です。
また、当麻町は農林業の町ですから、町産木材の活用も普段から進めています。そこで、キャンプの際に使う薪として町産木材を提供するといったことも考えています。そして、将来的にはサウナストーンも当麻町産にできればという構想もあります。サウナストーンは香花石という石を使用するそうですが、地元の当麻山で採れる赤石をサウナストーンにできないかと検討中です。いずれは、すべて当麻の地場産のものでたくさんの方に“ととのう”体験をしていただき、当麻町をアピールしていければと思っています。
サウナバスを巡っては製作のみならず、キャンピングカー登録の手配に町内のクルマ関連会社が迅速に動いてくれるなど、町の皆さんの積極的な協力が続いているそうです。そして、サウナバスの完成を聞きつけ、近隣のサウナーからは早速アプローチの声が届いているのだとか。ちなみに、村椿町長もサウナーだそうです。サウナバス・軽キャンピングカーなどのふるさと納税での取り扱い開始は6月21日を予定しているとのこと。当麻町の「“ととのう”町」としてのこれからが楽しみですね。
<取材協力>
当麻町役場
トウマ電子工業株式会社
Touma Auto Project
(取材・文:わたなべひろみ/写真:当麻町役場/編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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