なぜ価格が高い? 1回の充電で走れる距離は? EVにまつわる5つの基礎知識
カーボンフリー社会に向けて、EV(電気自動車)の普及が加速しようとしています。とはいえ、EVに触れたことがある人はまだ多くないでしょうから、EVについてはわからないことがあってモヤモヤしている人もいるかもしれません。そこで今回は、素朴な疑問として感じがちな5つのポイントから、EVの基本的な知識を紹介します。
1.EVの価格が高いのはどうして?
「EVは高い」と感じている人も、多いのではないでしょうか? たとえば、レクサス初の市販EVとなった「UX300e」の価格は、”version C”が580万円で”version L”が635万円。これはハイブリッドモデルの「UX250h」に比べてそれぞれ127万7000円/116万6000円高くなります(実際には、国や自治体からの補助金で、実質的な購入金額の差は小さくなる場合があります)。
中には、電気モーターとエンジンの両方を搭載するハイブリッドカーと比べると、「EVはエンジンがない分、価格も安いはずでは?」と疑問に感じている人もいるかもしれません。
EVの価格が高い理由は、バッテリーにあります。
ハイブリッドカーと比べるとEVのバッテリーは主に、大容量で、しかも高価な「リチウムイオンバッテリー」を採用。大きく、高価なバッテリーを使うことが、EVの車両価格に影響しているのです。
たとえば、2種類の容量のバッテリーが選べる日産「リーフ」では、バッテリー容量40kWhの「X」グレードが382万5800円ですが、バッテリー容量62kWhの「e+ X」は441万7600円と、バッテリー容量が1.5倍になると価格は60万円ほどアップします。このことからも、バッテリーがどれだけ高価なものかがイメージできるでしょうか。
ちなみに、リチウムイオンバッテリーの材料として使われる「リチウム」は、希少金属で価格が高いうえに、EV普及による需要拡大にともなって供給に対して需要が多い状態となっています。
今後は、さらに価格が上がると予測されており、EVがエンジン車やハイブリッド車と同じ価格帯になるまでは、まだしばらく時間がかかると見られています。
2.一回の充電で走れる距離はどのくらい?
EVは一回の充電で走れる距離(=航続距離)が短いから、使い勝手がよくない……。そんな話を聞いたことがある人もいるのでは?
航続距離は、おもにバッテリー容量によって決まってきます。バッテリー容量は、エンジン車のガソリンタンクの大きさだと考えれば、わかりやすいでしょう。
たとえば前出のリーフの場合、バッテリー容量40kWhのモデルは一充電の航続距離(WLTCモード)が322km、一方の62kWhモデルは458kmと、およそ1.4倍まで増えます(バッテリー容量が1.5倍でも航続距離が1.5倍にならないのは重量増によるエネルギーロスなどがあるから)。
2021年7月現在、日本で買える量産電気自動車で航続距離がもっとも短いのは、三菱「ミニキャブMiEV(ミーヴ)」の150km(JC08モード)、もっとも長いのは、テスラ「モデルS」の628km(推定値)です。
「航続距離は長い方がいい」と考えるかもしれませんが、航続距離の短いEVにもメリットはあります。ポイントは2つ。車両価格が安いことと、環境負荷も低いことです。
EVの価格が高い理由はバッテリーにありますから、バッテリーが小さければ車両価格は安くなります。
それは、先のリーフの40kWhモデルと62kWhの価格差からもわかるでしょう。ちなみに、ミニキャブ MiEVの車両価格は243万1000円から(各種補助金については公式ホームページ等をご確認ください)。
また、バッテリーが小さい分だけ、製造時や廃棄時の環境負荷が小さいので、大型バッテリーを積むEVよりも地球に優しいといえるのです。配送や日常の足として使うのなら、航続距離の短いEVは理にかなった選択肢といえるでしょう。
3.長く走るにはどうしたらいいの?
EVとエンジン車で大きく異なるのが、効率のいい状態。いい換えると、“電費や燃費のいい走り方”です。
エンジンは、ある程度、回転数を上げたときにエネルギー効率がよくなり、燃費も伸びますが、モーターが使う電気のエネルギー効率は回転数にかかわらず基本的に一定。そんな違いから、多段式トランスミッションを持たないEVはアクセルを踏めば踏むほど電気を消費して、航続距離が短くなってしまいます。速度が低いときほどモーター回転数は低くなるので、アクセルを踏み込みすぎないことがEVの航続距離を伸ばす秘訣です。
また、速度が低ければ、空気抵抗も少なくなり、より効率がアップします。
そのため、高速巡航とEVの相性はよくありません。街中で使うときの方が、航続距離を長く保てるのです。高速道路で燃費がよくなるガソリン車とは、特性が違うというわけ。
4.充電方法がいくつかあるって本当?
EVの充電といえば、高速道路のサービスエリアなどに設置された「急速充電器」をイメージする人もいるかもしれません。しかし、日常的には自宅で充電するのが理想的です。
一般的に、EVは急速充電器と普通充電の両方に対応。たしかに、普通充電は時間がかかりますが、自宅でバッテリーを満充電にできるメリットは大きいし、普通充電の方が急速充電よりもバッテリーへの負担が少なく、バッテリーの劣化を防げます。
自宅(戸建て)で普通充電をする場合は、200Vの充電器を用意するのが一般的。基本的には、分電盤からケーブルを伸ばす工事を行うことで、設置できます。 また、多くのEVは100Vコンセントからも充電できるようになっています。ただし、電圧の差はそのまま充電時間の差となりますから、100Vでの充電では200Vでの充電の2倍の時間がかかります。
なお、マンションなどの集合住宅に充電器を設置したい場合は、管理組合や管理会社の合意を得たり、場所や設置費用、電気料金の負担などについての協議をしたりといった手続きが必要となりますので、ご注意ください。
ちなみに、コストも手間もかかりますが、普通充電器がない環境で、近隣の急速充電器のみの利用でEVに乗っている人もいます。
5.スマホのようにバッテリー劣化はないの?
バッテリーを使った身近なアイテムといえば、なんといってもスマートフォン(スマホ)でしょう。多くの人が認識しているように、スマホのバッテリーは使っているうちに劣化して、少しずつ能力が落ちていきます。では、EVのバッテリーはどうなのでしょうか?
結論からいえば、やはり劣化は避けられません。使っているうちに、少しずつ充電できる量が減って、航続距離も短くなっていきます。
しかし、EVはスマホに比べるとバッテリーの構造も制御も高度で、スマホほど極端な劣化が起きるケースは多くありません。バッテリーも日々、進歩していますから、今後はより劣化しにくいものになっていくでしょう。
ちなみに、劣化したバッテリーはクルマ用としては能力不足でも、一般的な蓄電池としては十分に高性能なもの。そこで、EVから取り外したバッテリーを家庭用の電気を溜める蓄電池として使うリユースも試されています。リサイクルだけでなく、こうしたリユースも進めば、より環境負荷を減らせるでしょう。
EV購入を検討するならメリット・デメリットを知ったうえで
EVの基本的な知識を5つのポイントからお伝えしてきました。「次の買い替えではEVに」と考える方も、まだまだ「EVは先の話」と思っている方も、まずはこうしたEVのポイントから、EVのメリットやデメリットを知っておくといいですね。
(文:工藤貴宏 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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