北海道札幌市で地域の交通安全を見守る「無事故ダルマ」とは?
北海道札幌市豊平区を南北に走る幹線道路、通称・平岸街道。東京2020オリンピックのマラソンコースにもなったこの道路沿いに巨大な白いダルマが設置されています。
「無事故ダルマ」と呼ばれるこのダルマを設置・管理する平岸ハイヤー株式会社の専務取締役 百瀬浩行さんに無事故ダルマの由来などを聞きました。
乗務員がつくった交通安全祈願の雪だるまをきっかけに
――真っ白い無事故ダルマは平岸街道を通るとかなり目を引きます。先日のオリンピックの中継でもちらっと映ったようですね。この大きなダルマを設置したきっかけ教えてください。
無事故ダルマは、弊社のタクシー乗務員が交通安全祈願に雪だるまをつくり始めたのがきっかけです。実は、乗務員の皆さんが自主的につくっていたもので、残念ながらいつからというはっきりとした記録は残っていません。
古くからお勤めの語り部のような乗務員さんから代々語り継がれている話によると、最初はドライバー同士の安全祈願ということで小さい雪だるまをたくさんつくっていたそうです。それが、次第に大きくなっていき、「無事故ダルマ」として定着していったのが1975年頃のこと。
このころにはかなりの大きさになっていて、翌1976年には、声をかけていただき、さっぽろ雪まつりで大雪像ダルマを制作しています。
――なるほど! 最初が雪だるまだから、無事故ダルマは白いのですね。
そうなのです。その後、無事故ダルマの素材は雪から紙の張りぼてになり、グラスファイバーの丈夫なものへとアップデートしていきます。豊平警察署に設置したこともあります。しかし、紙の張りぼての頃には台風のような大風で一度道路に転がってしまったことがあるそうです。
――それは大変ではないですか!
一大事ですよね。今はしっかりと固定してそのようなことはありませんので、ご安心ください。
無事故ダルマがのっぺらぼう?! 毎年違う表情で平岸街道を見守る
――無事故ダルマのメンテナンスはどのようにされているのですか?
無事故ダルマは一年に一度のっぺらぼうになる期間があります。
――のっぺらぼうですか?!
毎年、夏の交通安全運動の初日にダルマの目入れ式を行います。その何日か前からお化粧直しをするのです。顔は真っ白に塗ってしまうのでのっぺらぼうになってしまいます。この期間に限り、ダルマは平岸街道を背にして反対側を向きます。
ダルマの下に車輪がありまして、回転させるときにはジャッキアップをしてぐるりと動かします。これ、かなり重いです。そして、固定するときはジャッキを下ろして地べたにつけるのです。新しい顔は毎年、退職した元乗務員がわざわざ描きに来てくれているのですよ。
――退職された方がわざわざですか
はい。基本の目鼻のレイアウトは決まっていますが、フリーハンドで描いています。その年によってイケメンだったり、ちょっと怖いなと思うときがあったり、やさしい感じだったり。毎年表情が違いますね。本人に聞くと「別に変えるつもりで描いているわけではないんですけど」というのですが、不思議ですね。台座はこちらも毎年、近くの中の島中学校の美術部の皆さんに描いていただいています。
夏の交通安全運動の初日に、豊平警察署の署長さんや町内会の方、弊社の社長などが1人ずつ上がって安全祈願をしながら目を入れます。目入れが終わって完成したらぐるりと平岸街道側に向け、新しい顔で平岸街道を一年間見守ります。
地域のランドマークとして交通安全を祈願する
――無事故ダルマは中の島中学校の美術部の皆さんの協力など地域との交流にもなっているのですね
地域の皆さんに楽しい気持ちになってもらえるような地域のランドマークであってほしいと思っています。クリスマスシーズンにはサンタになったり、ここ最近では大きなマスクをつけたりもしています。みなさん毎年、立ち止まって写真を撮っていってくれます。今年のクリスマスも帽子をかぶせてヒゲをつけ、ライトアップしますよ。
無事故ダルマで平岸街道を見守るのはもちろん、交通安全祈願の一環で1976年にはタクシー車両のあんどんもダルマに変えています。どこを走っていても、安全運転を心がけ、これからもたくさんのお客さまにご乗車いただけたらと思います。
白い無事故ダルマの由来が雪だるまだったとは驚きでした。地域とともに交通安全の意識を育む取り組みが、巨大なダルマや車両の屋根のあんどんとともに今後も広がっていくことを期待しています。
<取材協力>
平岸ハイヤー株式会社
(取材・文・写真:わたなべひろみ/写真:平岸ハイヤー株式会社/編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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