「ショーファードリブン」「スペシャリティカー」……その言葉、どんなクルマを表すの?

ドライバーズカー、ショーファードリブン、スペシャリティカー、2+2……、クルマの記事を読んでいると出てくる車両のタイプを表す言葉。知っている人にとっては当たり前だけど、知らないとまったくイメージのつかないものかもしれせん。そこで、クルマの記事をより深く楽しめるように、こうした「クルマを表す言葉」の中から特に知っておきたい言葉を解説しましょう。

「ドライバーズカー」や「ショーファードリブン」は“誰のためのクルマか”を示す

「ドライバーズカー」という言葉は、目にすることが多いかもしれません。直訳すると「運転者のクルマ」となるこの言葉が意味するのは、“ドライバーが運転を楽しめるクルマ”ということ。

高性能エンジンを搭載していたり優れた運動性能を誇っていたりという意味もありますが、決してそれだけではなく、荷物を運ぶトラックや人を運ぶバスと違って、“運転者を設計の中心”として考えられているのであれば、ドライバーズカーといっていいでしょう。

ポイントは“ドライバーを中心として開発しているか”どうか。走る楽しみだけでなく、ドライバーの快適性を最優先に考えたモデルもドライバーズカーのひとつだといえます。

しかし、「乗用車=すべてドライバーズカー」かといえば、そうではありません。高級車の中には「ショーファーカー」と呼ばれるタイプがあり、これはある意味ドライバーズカーの対極です。

「ショーファー」とはフランス語で“お抱え運転手”を意味する言葉。運転は専従の運転手に任せて、主は後席でリラックスするタイプのクルマをショーファーカーと呼びます。「ショーファードリブン」ということもありますね。

  • ショーファーカーやリムジンは後席の快適性が最優先の設計。セダンスタイルだけでなくミニバンタイプも存在する(写真:トヨタ自動車)

ショーファーカーやショーファードリブンがどういうものかといえば、VIP(要人)が後席に乗るためのクルマをイメージすればわかりやすいでしょう。トヨタ「センチュリー」もそのひとつです。「リムジン」というのも同じ意味で、タクシーやハイアーもショーファーカーの一種だといえます。

どんなキャラクターかを意味する「スペシャリティカー」や「スポーツカー」

かつて日本でも市場規模が大きかったのが、「スペシャリティカー」と呼ばれたタイプです。代表的なのはトヨタ「セリカ」、日産「シルビア」、ホンダ「プレリュード」など。

見た目はスポーツカーに近いけれど、スポーツカーほど走行性能を追求したクルマではなく、スポーティーな“雰囲気を求める人のためのクルマ”といえます。

スペシャリティカーに明確な定義はありませんが、大衆車のメカニズムをベースにスポーティーなデザインのボディを組み合わせた、比較的手の届きやすい価格のモデルを指したのがルーツだとか。日本においては、カップルがドライブデートするイメージから「デートカー」とも呼ばれました。

一方で「スポーツカー」は、走行性能を最優先に考えたクルマのこと。ある意味「ドライバーズカー」の最高峰で、高い走行性能が伴わなければなりません。

  • トヨタ「GR86」は専用設計の車体を持つスポーツカー(写真:トヨタ自動車)

ただし、スポーツカーは見た目だけでは判断できないジャンルでもあります。トヨタ「スープラ」や日産「フェアレディZ」のように、いかにもスポーティーなルックスのスポーツカーもある一方で、ホンダ「シビックTYPE R」やルノー「メガーヌR.S.」のように、通常の乗用車をベースに走行性能を引き上げたタイプも存在するからです。

背が高くてタイヤが大きいクルマは「SUV」?

このところトレンドとなっているジャンルは、なんといっても「SUV」。でも実は、その定義はあいまいです。SUVとは「スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル」の略で、日本語では「スポーツ用多目的車」と訳されることもありますが、とてもわかりにくい日本語ですよね。

  • SUVは一般的に、悪路走行も考えて地上高(地面と車体底面の隙間)がしっかり確保されている(写真:BMW)

SUVがどんなクルマを指すかといえば、これまた明確な基準はないのですが、一般的にオフロード走行を前提に大きなタイヤを履き、背の高いボディを組み合わせたクルマだと考えれば間違いないでしょう。ただし、テスラ「モデルX」のように、オフロード走行を考えていなくても大きなタイヤを履き、天井を高めにしたパッケージングでSUVを名乗る例も増えています。

  • 地上高は低い「モデルX」だが、タイヤが大きくて天井が高めなことからメーカーはSUVに分類する(写真:テスラモーター)

もうひとつ「クロスオーバー」というのも、最近よく聞くジャンルです。クロスオーバーとは、“何かと何かが混じりあうこと”を意味し、多くは“乗用車とSUVの中間”といったニュアンスですが、中にはスバル「アウトバック」のようにステーションワゴンとSUVのクロスオーバーや、スズキ「ハスラー」のようなハイトワゴンとSUVのクロスオーバーも存在します。

「2シーター」や「2+2」はシートアレンジを表している

クルマのキャラクターではなく、シートのアレンジを示すのが「2シーター」や「2+2(ツー・プラス・ツー)」という言葉。2シーターは、運転席と助手席の2つしかシートがない2人乗りのクルマを指し、2+2は後席もあって定員は4名ながら、リヤシートは補助席適度の狭いタイプを示します。

  • 2シーターはスポーツカーがメイン(写真:ポルシェ)

2シーターはトヨタ「スープラ」などのスポーツカーに多く、2+2は本格スポーツカーながら実用性を高めたモデルに採用されるのが一般的。ポルシェ「911」をはじめ、アウディ「TT」、スバル「BRZ」、そしてトヨタ「GR86」などが相当します。かつてはマツダ「RX-7」やホンダ「CR-X」、そして「CR-Z」もそうでしたね。ちなみに、トラックやバンなどの商用車は、2人乗りでも通常は2シーターとは表現しません。

  • ポルシェ「911」は本格スポーツカーだが、通常モデルはリヤシートを備える2+2(写真:ポルシェ)

自動車用語は初めて聞くとわかりづらいものもありますが、一度その意味を知ると比較的に覚えやすいでしょう。今はネット検索で簡単に言葉の意味を調べられるので、わからない用語が出てきたら調べてみると、その言葉が持つ意外な背景を知ることができるかもしれません。

(文:工藤貴宏 編集:木谷宗義 type-e+ノオト)

[ガズー編集部]

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