タクシー「相乗りサービス」制度とは? サービスやメリットを紹介

電車やバスに比べ、便利だけど運賃面がネックになるタクシー。もっと気軽かつ割安に利用できるようになれば日常の足として利便性が向上しますよね。最近では、民間の配車アプリを通じて目的地の近いユーザー同士をマッチングし、タクシーに相乗りできるサービス(タクシー「相乗りサービス」)の運用が開始され、制度としても国土交通省に認められました。その目的や利用方法、どんなメリットが得られるのかについて紹介します。また、2022年4月にサービスインしたユーザー同士をマッチングし、タクシー配車までを行うサービス『nearMe.Town』について、株式会社NearMe 代表・髙原幸一郎さん、真弓聖悟さんにお話を伺いました。

タクシー「相乗りサービス」とはどんな制度?

令和3年11月1日から運用が始まったタクシーの「相乗りサービス」は、タクシー乗車前にスマートフォンアプリなどを通じて目的地の近いユーザー同士を結びつけ、相乗りできるサービスが制度として認められたものです。タクシーへの相乗りサービスが制度化されたことで、乗客同士のタクシー料金の按分に関する考え方もルールとしてわかりやすくまとめられました。

タクシー「相乗りサービス」が制度として認められた背景

筆者はひとりでタクシー移動をする際、タクシー乗り場に並びながら「この中に同じ方面に向かう人がいたら、タクシー料金が割安にできるのに。でも話しかけて交渉するのも勇気が要るなぁ……」と葛藤した経験が何度もあります。似たような思考を巡らせたことがある方も少なくないのではないでしょうか。

タクシー「相乗りサービス」が制度として認められる以前から、タクシー乗り場などで直接声がけをしたり、SNS上で相乗りの相手を募ったりして、見知らぬ人同士でタクシーに相乗りする行為自体は行われていました。しかし、運賃の按分をはじめとしたさまざまなトラブルのリスクがあるため、国土交通省がタクシー「相乗りサービス」をしっかりと制度としてまとめたという経緯があるそうです。

運賃の支払いはどのように計算する?

  • 乗客AとBがそれぞれ別の地点から乗車し、別の地点で降車した場合の利用イメージ(画像:国土交通省)

本サービスは複数の乗客が同じ地点から乗車し、同じ地点で降車する場合にのみ対応可能なわけではありません。たとえば上図の例では、乗客Aと乗客Bがそれぞれ別の地点から乗車し、別の地点で降車するケースを想定。原則として、運賃は乗車距離に応じて按分する仕組みです。

上図のようにタクシー運賃が5,000円で、乗客Aの乗車距離が15km、乗客Bの乗車距離が10kmの場合、乗客Aが負担する運賃は3,000円、乗客Bは2,000円となります。乗客A・乗客Bそれぞれの乗車距離(乗客A=15km、乗客B=10km)を、合計乗車距離(15km+10km=25km)で割り、算出された値を運賃の総額(5,000円)に掛けると、それぞれの乗客が負担すべき運賃が導かれるというわけです。

使用するアプリにもよりますが、タクシー乗車前に乗降地の情報を登録する運用が基本となっているそう。そのため、上図の例でいえば、乗客Aがどこから乗りどこで降りるのかという情報を乗客Bは事前に承知したうえで乗車できるので、乗客Bは確定した運賃を支払って先に降車することが可能です。乗客同士で運賃にかかわる交渉をする必要がないのは、大きなメリットといえるでしょう。

ユーザーはより安全で便利に。タクシー会社は利用機会増に期待

ここまで述べてきた「相乗りサービス」を利用するための手段は、おもにスマートフォンアプリです。 アプリストアで「タクシー 相乗り」などのキーワード検索をしてヒットするアプリを利用します。これらのアプリをリリースするにあたり国交省の認可制度は特になく、アプリの運営者は四半期に一度、相乗りサービスの利用状況などに関する報告を国交省へ上げる仕組みになっているとのこと。

また、アプリによって異なりますが、サービス利用時にユーザーの個人情報を登録したり、運賃の按分をアプリ上で提示したりする運用により、相乗りしたユーザー間におけるトラブルを防ぐようなシステムになっているそうです。安心して、かつ割安にタクシーを利用できるのはうれしいですよね。

人と人をつなぎ、配車サービスを提供する『nearMe.Town(ニアミータウン)』

空港送迎をメインに相乗りサービスを展開する『株式会社NearMe』では、ユーザー同士をマッチングし、タクシー配車までを行う『nearMe.Town(以下、ニアミータウン)』をサービスイン。これまで「移動に対してあまりお金をかけたくないけれど、もっと便利に移動できたらいいな」という考えを持っていた人々のニーズを汲み、新たな形態のサービスを提供しています。

「おもにワンボックスカーを使用し、相乗りによる空港送迎を行うサービスはコロナ禍でも利用が盛況で、2022年4月度は過去最高の利用者数を達成。基本的にはユーザーさん同士が隣り合って着席することがないため、密を避けられる点で移動手段として選ばれています」(真弓さん)

  • 混雑を避けてスムーズな移動ができる空港送迎サービス(画像:株式会社NearMe)

「ひとりでタクシーを利用するよりも料金が割安であること、荷物が多いときにもドアツードアで楽に移動ができることから、“コスパがいい”とユーザーさんの声をいただくことが多いです。ほかにも、とくに小さなお子さんを連れた方で“公共交通機関を利用すると周囲に迷惑をかけてしまうのではないか”と考える方も少なくなく、NearMeのサービスを選ぶきっかけにしてくださる場合もありますね」(髙原さん)

空港送迎サービスでは認知度が高まるなか、まだサービスが始まったばかりの『ニアミータウン』も、今後は日常的な通勤・通学、高齢者の通院や子連れでの買い物といった、普段使いできる移動手段として浸透させたい狙いがあるそう。

「“シェアすればするほどみんながハッピーになる”という考えのもと、シェアして移動することが当たり前になれば、交通渋滞の解決や環境への負荷軽減なども実現できると考えています。将来的には、高齢者が運転免許を返納したあとの移動手段の確保をはじめ、第四の公共交通インフラになることを目指して地域に貢献していきたいです」(髙原さん)

ユーザー目線からの利用しやすさだけでなく、社会問題の解決に向けた希望の光として、「相乗りサービス」の需要は今後ますます高まっていくことでしょう。

<参考リンク>
国土交通省

株式会社NearMe

(文:吉田奈苗 編集:奥村みよ+ノオト)

[GAZOO編集部]

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