【K4-GP】富士スピードウェイで20年以上前から開催される「軽自動車クラス」の耐久レース

上の写真を見てください。富士スピードウェイのホームストレートを走っているのはスバル「ヴィヴィオ」に昭和時代のホンダ「N」、最新の「S660」に「アルトワークス」、さらにフォード「GT」のようなマシンや1人乗りのレーシングカーの姿もあります。これは一体、何のレースでしょうか?

答えは「K4-GP」。

写真から想像されるように軽自動車を主体としたレースで、富士スピードウェイを舞台に20年以上開催されている歴史あるイベントです。バラエティー豊かなマシンで競われるのが特徴で、「勝つために走る!」というよりは、「楽しく走る!」といった雰囲気のユニークな耐久レースなのです。

さまざまな「軽」が走る耐久レース

  • さまざまな出で立ちのマシンが富士山を横目に駆け抜ける

現在、年間2回富士スピードウェイで開催されているK4-GP。
既存の軽自動車に安全装備などの最低限のモディファイを施した車両から、ル・マン24時間耐久レースなどで走るプロトタイプレーシングカーを思わせるような車両まで、さまざまな出で立ちのマシンが参戦しています。

さらに、定められたガソリンの量だけで5時間や10時間といった長時間を走り、走行した周回数を競います。使えるガソリンの量が決まっているので単に速くても勝てないのがこのレースのミソ。

車両クラス

車両クラスはGP-1~GP-5の5クラス。クラス分けの内容は以下の通り。

  • GP-1-N:量産軽自動車で争うクラス、ミッションはAT、エンジンはNA
  • GP-1-T:量産軽自動車で争うクラス、ミッションはAT、エンジンはターボ

  • GP-2-F:1998年10月以降の現在の軽自動車規格に沿った車両、ミッションはMT、エンジンはNA、排気量900cc未満
  • GP-2:1998年10月以前の軽自動車規格に沿った車両、ミッションはMT、エンジンはNA、排気量900cc未満

  • GP-3-F:1998年10月以降の現在の軽自動車規格に沿った車両、エンジンは過給機付き、排気量はNA排気量換算900cc以上1,200cc以下
  • GP-3:1998年10月以前の軽自動車規格に沿った車両、エンジンは過給機付き、排気量はNA換算900cc以上1,200cc以下

  • GP-4クラス:オリジナルのマシン(排気量900㏄まで)

  • GP-5クラス:オリジナルのマシン(排気量900~1200㏄)

「あれ?軽自動車って660㏄じゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、同じ660㏄の排気量ならターボ車の方が速いのは確実。そこで、ターボ車とノンターボ車の性能差をなくすため、このような排気量区分となっているのです。

モータースポーツでは、性能差をなくすよう排気量に“ターボ係数”をかけた数値でクラス分けされるケースがよくあります。
K4-GPの場合、ターボ係数は1.5。

ターボ車はもともとの排気量に1.5をかけた数値を、ルール上の排気量としています。つまり、「660㏄×1.5=990㏄」で、660ccのターボ車は990ccのノンターボ車と同等の性能だとして区分されているというわけ。

また、AT車限定のカテゴリーもあるので、スポーツ走行初心者でも耐久レースを楽しめるようなシステムとなっているのがこのイベントの面白いところ。普段サーキットを走り慣れている人はもちろんですが、日頃スポーツ走行をしていない初心者の人も多く参加しているのです。

GP1~GP3のクラスは普段から見たことがある軽自動車の形をしていますが、GP 4・GP 5クラスは「R車両」と呼ばれる、レース専用のオリジナルマシン(ベース車両がある場合もあり)だけで戦われる、車両を見ているだけでも楽しいクラスです。
エンジンは市販軽自動車用だけではなく、ジェットスキー用などを搭載するマシンもあるそう!

ドライバーは2人以上が必須で、本気で勝ちを狙うチームの多くは2~4名体制でエントリー。一方、楽しく走ることを目的に参加するチームは、大人数でワイワイ参戦しています。
耐久レースの雰囲気を味わうために参加するチームが多いのも、このイベントの特徴であり魅力でもあるのです。

そのため、サーキット走行の経験が浅いドライバーの参加や、学生時代の仲間や親子2世代ドライバーによる家族での参加などチーム形態はさまざま。
「紫電77」をはじめ数々のレーシングカーを設計し、現在はレース解説者としても活躍するレーシングカーデザイナーの由良拓也さんも、K4-GPの常連ドライバーです。

参加にあたっては、K4-GPライセンス、もしくは富士スピードウェイでのスポーツ走行時に必要なFISCOライセンスの取得が必要ですが、初心者もウェルカムな雰囲気と軽自動車でのレースという気軽さからかエントラントは、年々増加。今では、参加台数100台以上という人気イベントとなっています。

広々とした富士スピードウェイを、100台を超える小さなマシンが一斉にスタートする光景は圧巻です!

最初は身内の走行会だった

今でこそ100台以上ものエントリーがあるK4-GPも、当初は身内を集めた走行会のようなイベントだったそう。K4-GPを発足させたのは、レーシングカーデザイナーでレースガレージ「マッドハウス」の代表であった故・杉山哲氏(2013年に他界)です。

他にないおもしろいクルマを作って走らせることが好きだった杉山氏は、自身の手によるオリジナルカウルのマシンも含め、仲間内で軽自動車を走らせる走行会「軽自動車運動会」をスタート。
この走行会が話題となって、2001年にレースイベントとして「K4-GP&アザーズ」が開催されました。

レース開催時はオリジナルのマシンに加え、参加のハードルをさげるため市販の軽自動車も参加OKに。年々、参加台数は増え、年2回富士スピードウェイで耐久レースを行うようになって今に至ります。2007年には、マレーシアのセパンサーキットで24時間耐久レースが開催されたことも!

  • 仮装をしてル・マン式スタートをするドライバーたち

K4-GPの大きな特徴のひとつが、参加者が“レース以外”も楽しんでいること。コロナ禍以前は、パドックでBBQをしたり子どもをビニールプールで遊ばせたりといった光景も見られました。
また、レースによっては、仮装をしてル・マン式スタートをするという場合もあります。

レース×健康の研究素材にも!

こうした一大イベントとなったK4-GP。2022年は、さらに新しい風が吹き込んできました。なんと、大学と協力し予防医療の研究が行われることに。モータースポーツへの参加/観戦や、ゴール時の達成感が健康につながるかという研究を行うのだといいます。

他にもオーナーズミーティングやショートサーキットを使った走行会などを併催し、K4-GP開催時には富士スピードウェイを軽自動車一色にする計画があるのだとか。

「富士スピードウェイでの24時間耐久レース開催」が目標だというK4-GP。今年は8月12日に5時間耐久が、8月16日に10時間耐久が行われます。これからも独自の進化を続け、いつしか富士スピードウェイの名物レースになるかもしれません。

(取材・文:西川昇吾/写真:K4-GP事務局/編集:木谷宗義 type-e+ノオト)

[GAZOO編集部]

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