町の特徴が一目で分かる道路標識「カントリーサイン」って?
国道や高速道路などを走っていると、市区町村などの境界にある「街の名物のイラストが描かれた看板」を見たことはありませんか?
ドライブ中や旅先で街の特徴を知ることができる看板が、北海道では「カントリーサイン」という名称で独自に発展しているそうです。北海道では道路のランドマークとして設置され、現在も道内すべての市町村に設置。オリジナリティあふれるデザインとともに、地元の人や観光客に愛されています。
今回は、国土交通省 北海道開発局でカントリーサインの担当である、建設部 道路維持課の宮﨑隆徳さんにカントリーサインの成り立ちや特徴を伺いました。
北海道の179市町村に設置しているカントリーサイン
一般道路の案内標識には、3種類の看板が設置されています。
- 目的地の方向や距離、目標地までの経路を案内する「経路案内」
- 現在地を示す「地点案内」
- パ-キングなどの附属施設を案内する「附属施設案内」
この中で、カントリーサインは「地点案内」に属するものです。
地点案内の看板の中には、都府県や市町村の境界となる道路上に設置され、地域名と都道府県章・市町村章、街のシンボルや標高などが書かれているものがあります。その看板を「カントリーサイン」という名称で独自に発展させたのが北海道。
利用しやすい道路環境の整備に関するニーズが増大した背景から、親しみと潤いのある道路環境づくりを目指して、1990年から道東の観光拠点を巡る国道38号線、39号線、237号線、391号線をモデル路線に、道内の31市町村で整備が始まりました。
宮﨑さん:「1993年には、国道が通過する196市町村で整備を完了しました。以後、市町村合併をしつつ地方道でも整備が進められていて、現在では利尻、礼文等の離島を含め、北海道179市町村すべてに設置しています」
それぞれが個性にあふれ、代表的な観光名所が描かれているものからご当地のマスコットキャラクター、名産品やお祭りなど、その地域の特徴が一目で伝わる看板です。国道(一部の市町村道も含む)上の境界地点には、すべて設置されています。
宮﨑さん:「市町村の境界に設置しており、走行中にどこの市町村に入ったか認識していただくとともに、その街の特徴を一目で理解してもらうことで観光振興の役割を担っています。ぜひカントリーサインをご覧いただき、1人でも多くの方々に親しみを持っていただけたら幸いです。カントリーサインを通じて、子どもたちも北海道の地理に詳しくなってもらえたらうれしいですね」
個性的なカントリーサインは、どうやって作られているの?
では、北海道179市町村に設置されているカントリーサインはどのようにデザインが決められているのでしょうか?
宮﨑さん:「カントリーサインに用いる図柄は、地元の自治体が主体になって決めています。デザインは、道路利用者にとって分かりやすいものを十分留意したものになっており、市町村名と市町村をPRできる名物、名所、特産物からイラストの内容を決定しています」
カントリーサインを作成する際は、自治体ごとにイラストを複数案作成し、住民投票を通じて決定するなどの流れになっているそうです。
また、デザインがあまりカラフルになりすぎると走行中に危険を伴う可能性があるため、色は市町村名の色を除き原則5色以内。一目で視認しやすい、複雑ではないイラスト、という基準があります。
自治体の合併や、時代の変化に応じ、その自治体を象徴する資源と言い難くなった場合は、カントリーサインが変更になることもあるのだとか。
2022年2月にデザインが変わったのは室蘭市。元々はサッカーをモチーフにしたデザインでしたが、いまの自治体のニーズに合わせて室蘭やきとりと白鳥大橋のデザインに変更されました。
カントリーサインで北海道の旅を楽しもう!
他地域の自治体からの注目度が高く、「参考にしたい」という声が寄せられているカントリーサインの取り組み。一目で街の特徴が分かることもあり、バラエティー番組で「カントリーサインを巡る旅」、などメディアからも取り上げたいというリクエストが度々あるそうです。
では、実際のカントリーサインをいくつかご紹介!
観光名所やランドマークなどのカントリーサイン
今回はテーマ別に分類してみました。まずは、観光名所やランドマークなどを描いたデザイン。描かれたイラストを見ているだけでその地を旅行したくなりますよ!
札幌市(道央エリア)
人口180万人を超える道庁所在地であり、北海道の中心都市。カントリーサインは、全国的に有名な札幌市時計台が描かれています。
小樽市(道央エリア)
歴史的建造物が建ち並ぶ国際商業港湾都市の小樽市のカントリーサインには、観光地として人気の小樽運河とガス灯が描かれています。
えりも町(道央エリア)
「襟裳岬」が有名なえりも町は北海道の東南端に位置する漁業と観光の町。右下に描かれているのはゼニガタアザラシで、日本一の生息地があります。
名産品が描かれたカントリーサイン
農業王国の北海道なので、カントリーサインも名産品のオンパレード。今回は、ほんの一部をご紹介。
北見市(道東エリア)
玉ねぎがラグビーをしているイラストが目を引きます! 北見市は、玉ねぎの生産量が日本一で、全国シェアの約2割を占めているほど。ラグビーが盛んな地域でもあり、カーリングも盛り上がるスポーツ都市でもあります。
名寄市(道北エリア)
道北地域の中心都市である名寄(なよろ)市。日本有数のもち米作付けを誇る街なので、もちのイラストが。奥には山と水田、星空、そしてひまわりが配置されていて、自然に恵まれた地域風土が読み取れます。
根室市(道東エリア)
日本最東部に位置する漁業都市。特に有名な「花咲ガニ」が大きく描かれています。カニの奥には、ノサップ灯台から見える北方領土も。
ご当地マスコットキャラクターが登場するカントリーサイン
地域の要素を詰め込んだ、住民に愛されるキャラクターがシンボルになっています。
俱知安町(道央エリア)
イメージキャラクター「じゃが太くん」は、特産のジャガイモがモチーフ。「雪の羊蹄山」を表した帽子とスキーをはいていることからスキーが盛んなのは一目瞭然。他地域の人からは難読な「くっちゃんちょう」という町名の読み方が分かるのもカントリーサインの利点!
岩内町(道央エリア)
スケトウダラをモチーフにした「たら丸」が登場するのは、豊かな漁業資源にも恵まれており、北海道で一番早くスケトウダラ延縄漁に着手した岩内町。たら丸が誕生したのは、なんと1985年。40年ほど前から愛され続けているキャラクターなのです。
さまざまなデザインを道路で発見したら、その街のことを知りたくなりますよね。ここで紹介したカントリーサインだけでも、北海道の特色豊かな地域性と恵まれた自然環境を感じ取ることができます。
最後に、北海道独自に発展したカントリーサインの今後について伺いました。
宮﨑さん:「北海道は、全国的に見てもカントリーサインの取り組みについて先進的です。設置の目的である観光のPRに寄与できればと考えていますし、カントリーサインを見るためにその地域を訪れて経済が発展してほしいですね」
北海道のドライブを楽しむ人への観光振興の役割を担うカントリーサイン。カントリーサインを巡って旅する人もいるそうです。自治体によっては道の駅などでカントリーサインのマグネットも販売していてこちらも人気!
カントリーサインをチェックしつつ、北海道のドライブを楽しんでみませんか。
(取材・文:笹田理恵/写真提供:国土交通省 北海道開発局/編集:奥村みよ+ノオト)
[GAZOO編集部]
<取材協力>
国土交通省 北海道開発局
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