人気コミック『となりの妖怪さん』に出てくる「ワーゲン君」って、どんな妖怪?
現在、アニメ企画が進行中の人気コミック『となりの妖怪さん』。
「ワーゲン君」こと、つくも神(妖怪)の西谷千彰くんは脇役の予定だったものの、担当さんの一言がきっかけでレギュラーに昇格したキャラクターです。ワーゲン君だけでなく作品自体からも、作者であるnohoさんのクルマへの思い入れを感じることができます。
では、ワーゲン君はどんなキャラクターで、どのような経緯で生まれたのでしょうか? nohoさんへのインタビューを交えて(ネタバレをしないように!)紹介します。
描いたのは人と妖怪が隣人になった世界
舞台は、人と妖怪とが共存する世界。猫としての寿命をむかえた「ぶちお」は、新たに猫又としての生をうけます。隣人ではあるものの、異なる時間を生きる人と妖怪。
ぶちおは、猫又としての生き方に悩み、手探りで答えを探し続けます。
ちょっと変わった猫を描くnohoさん
2016年、「教えて!goo ウォッチ」の『ものしり執事のニールさん』でデビューし、以降は漫画家、イラストレーターとして活躍するnohoさん。
代表作に『となりの妖怪さん』のほか、「ねこぱんち(少年画報社)」に連載の『L.A.猫物語 -the walking cat-』シリーズがあります。
メインキャラクターの親しい友人という主要キャラに抜擢!
ワーゲン君の初登場は、単行本2巻から。
妖怪仲間から勧められたこともあり、自動車教習所に通い始めたぶちお。そこで、同じく教習生として通うワーゲン君と出会います。冒頭でも触れたように、登場当初、ワーゲン君は主要キャラクターではなかったそう。
「自動車学校のお話を描くにあたり、『クルマつながりの妖怪を出したいな……』と思案していて、ふと『クルマのつくも神がいたら良さそうだ!』とひらめいてワーゲン君が生まれました。
最初、ワーゲン君は脇役にするつもりだったのですが、担当さんに『もっと見てみたい』とご提案いただいたんです。そして、もくもくとお話が浮かんで出番が増えていき、いつの間にかメインキャラになっていきました」(nohoさん)
ぶちおたちと活動するうちに、まるでキャラクターとしても生を受けたようにワーゲン君の表情や仕草は豊かになっていきました。
ちなみに、ワーゲン君の手はタイヤのイメージで黒いものの、ゴムでできているわけではなく、人肌のような温もりもあるそう。
また、ヘッドライトが目になっているほか、ドアミラーやルームミラーから後方確認もでき、乗車した人の目線からも見ることができるとのことです。
互いに妖怪(つくも神)に新生したばかりという境遇もあって、すぐに打ち解けたぶちおとワーゲン君。一緒に出かけ、相談相手になるなど、親しい関係を築きます。「家族と共に生きたい」と願う2人が、どのような日々を紡ぐのかは皆さんの目で確認してください。
40年間、人に愛されることで生まれたワーゲン君
ワーゲン君という愛称は、もちろんクルマのメーカー名から。愛嬌のある顔は、やはりあのクルマがモデルになっていました。
「ワーゲン君のモデルは、フォルクスワーゲンの初代ゴルフ(17型)です。キャラクターを作る際に、つくも神になるぐらい長く乗られそうな、それでいて古すぎない車種を探して決めました。丸型ライトと四角いボディがかわいいと思ったこともあります」(nohoさん)
作品の発表後、読者からの反響は良好で、多くの心温まるコメントが寄せられたそうです。
「自動車学校のお話を出したときは、たくさんのコメントをいただきました。
中にはワーゲン君と同じイエローのゴルフに乗られていた方もいましたし、クルマが好きで大切にされている方から『うちのクルマもつくも神になったらいいな』というコメントもいただきました。
ご自身の経験と重ねて読んでいただけて、とてもうれしく思います」(nohoさん)
ワーゲン君は、かつて自身の所有者だった西谷和彦(にしやかずひこ)さんの元に身を寄せています。少し天然なところのある性格は、和彦さん譲りなのだそう。
「ワーゲン君の性格は、元の持ち主である和彦さんから引き継いでいるところもあります。思ったことを恥ずかしげもなくはっきり言ったりするところなど、2人はいろいろなところが似ていますね」(nohoさん)
ワーゲン君と和彦さんの出会いは、40年前にさかのぼります。当時、ショールームに展示されていたワーゲン君を、会社員だった和彦さんと恋人の奈美子さんが購入。それからずっと2人に愛され、語りかけられたことで、つくも神への新生を果たしました。
つくも神は“神”と付けられていますが、作中では妖怪に近い存在です。
「和彦さんと奈美子さんは旅行好きだったので、『ドライブして動くのもいいんじゃない』」と話し合って、いろいろなクルマを見て回っていました。
ワーゲン君を見た2人が直感的に『すてき』と感じて購入したんです」(nohoさん)
長く1台のクルマに乗り続けている人ならば、いずれ愛車がワーゲン君のように新生してくれるか気になるところ。しかし、作中では「クルマのつくも神は少なく、珍しい」と明言されており、一筋縄ではいかないようです。
「持ち主に長い間大切にされ、言葉(言霊)をかけられてきたクルマだけがつくも神になるので、途中で手放されることが多いクルマがつくも神になるのは、難しいことなのだと思います。
クルマ以外にも、もしかしたら長く大切に乗られている電車や汽車なども、つくも神になることもあるかもしれません」(nohoさん)
nohoさんの印象深いクルマはダイハツ「ミラジーノ」
ワーゲン君とぶちお以外にも、多くの妖怪が登場する『となりの妖怪さん』。妖怪は人と比べて体格差が大きいため、それぞれにあわせたクルマが登場します。
妖怪用のクルマは数コマしか登場しませんが、クルマに詳しい人が見れば、それぞれにモデルとなった車両があることがわかります。ここからもnohoさんは、クルマに思い入れがあるように感じられますが……。
「(各モデルや構造など)詳しくはないのですが、クルマはわりと好きです。描くのも好きで、クラシックを感じさせる丸型ライトのクルマに惹かれます。
新型車で丸型ライトのクルマが出ると、チェックしてニコニコしていますね。ちなみにベトベトサンが乗っているのは、フィアット500です」(nohoさん)
丸形ライトが好きというnohoさん。これまでに所有されたクルマで一番、印象深かったのはダイハツの初代「ミラジーノ」だと教えてくれました。
「ミラジーノは初めてのクルマで、ボディカラーはブラックでした。中古で買ったのですが、運転に慣れていない時期に擦ったりぶつけたり、散々な目にあわせてしまいました。シートの色はワインレッドでハンドルは木目調。クラシックな雰囲気で、お気に入りのクルマでした」(nohoさん)
最後にGAZOO.comの読者に向けてメッセージをいただきました。
「ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。『となりの妖怪さん』は、クルマのつくも神や猫又、天狗などの妖怪や妖精たちが、人間とともに暮らしている世界のお話です。
妖怪たちが人と一緒になって、笑ったり泣いたり悩んだりしている様子が気になる方は、ぜひお手にとって読んでいただけたらうれしいです」(nohoさん)
クルマに対して、感情のある生き物のように接するnohoさん。新たに連載の始まった『となりの妖怪さん外伝』をはじめ、今後の作品でも、愛すべきクルマに関わるキャラクターを描き、私たちに見せてくれることでしょう。
嬉しいとき、悲しいとき、いつもあなたのそばにいてくれる愛車にも、今度一声かけてあげてはいかがでしょうか。
もしかすると、あなたのクルマも聞いてくれているかもしれません。
<関連リンク>
noho portfolio
イースト・プレス
(文:糸井賢一 取材協力・写真:noho/イースト・プレス 編集:木谷宗義type-e+ノオト)
[GAZOO編集部]
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