クルマ・バイクの 同人誌即売会「AMGモータースRound.3」が箱根のスカイラウンジで開催されたワケ

「ターンパイク」の通称で知られる、神奈川県箱根エリアの観光道路「アネスト岩田ターンパイク箱根」(以降、ターンパイク)。その利用者の多くは、富士山や芦ノ湖の景勝で有名な「アネスト岩田スカイラウンジ(以降、スカイラウンジ)」に、立ち寄ります。

2022年11月26日(土)、このスカイラウンジで、クルマやバイクをテーマとした同人誌即売会「AMGモータース Round.3」が開催され、スカイラウンジで初めて催された同人誌即売会ということもあり、SNSを中心に話題となりました。

  • たくさんのクルマとバイクが「AMGモータース Round.3」にやってきた

景勝や立地、ターンパイクといった周辺の設備により、オーナーズミーティングには最適なスカイラウンジ。しかし、広く参加者を集めなければならない同人誌即売会には(バスが運休中という現状もあって)、あまり適した施設とはいえません。

なぜ、スカイラウンジで同人誌即売会を開催したのでしょうか? 主催者へのインタビューとともに、「AMGモータース Round.3」の様子をお伝えします!

同人誌は“好き”をコミックや小説で表現した書籍

本題に行く前に、まずは「同人誌」がどんなものかをご説明しましょう。同人誌とは、趣味でコミックや小説を執筆する人たちが作品を持ち寄り、編集・発行した書籍のこと(個人で制作した書籍は「個人誌」ですが、広義として「同人誌」に含みます)。これに対し、出版社が編集して発行し、書店で販売される書籍は「商業誌」と呼びます。

同人誌即売会は、同人誌を制作した個人や集団(サークル)が一堂に会し、それぞれが発行した同人誌を頒布する場です。国内で催される大規模同人誌即売会の「コミックマーケット(コミケ)」を、知っている人は多いでしょう。実は、同人誌即売会は「コミックマーケット」だけでなく、大小、様々な規模で広く開催されているのです。

「AMGモータース」は、クルマやバイクをテーマに描いた同人誌、およびアイテムを中心に頒布する即売会で、非営利団体「アフタヌーンパーティー準備会」により運営されています。

  • 「アフタヌーンパーティー準備会」代表の中川賢太さんと副代表の石川さん。中川さんは、ミニ四駆を題材としたマンガ『ダッシュ!四駆郎」から乗り物好きになったそう

当初からの夢だったスカイラウンジで「AMGモータース」の開催

今回で3回目の開催となる「AMGモータース」は、1回目の開催より「クルマとバイクを中心とした同人誌即売会」というコンセプトで運営されています。AMGモータースを開催するアフタヌーンパーティー準備会は、代表の中川さん自らが「クルマとバイクの同人誌を読みたい」と作られたものだそう。

「AMGモータースの開催前、クルマとバイクのコンテンツを数多く扱った同人誌即売会はコミケぐらいでした。コミケの中で、クルマ・バイク系を扱うサークルが一定数、常にいて、それを求めてくる一般参加者もたくさんいます。だから、十分に賑わう同人誌即売会を開催できる見込みはありました」(中川さん)

それまで同人誌即売会に一般参加者として関わってきた中川さんは、2017年に同人誌即売会の運営を決心し、準備会を設立。それから半年後の2018年3月に、最初の「AMGモータース」を開催します。

1回目の会場となった「川口フレンディア」は、屋内にバイクを搬入できる施設。参加サークルは愛車も一緒に展示できるというユニークなスタイルで、話題となりました。中川さんはこの“最初のAMGモータース”の開催時に、「いつかスカイラウンジで開催する!」と宣言したそうです。

「箱根はいろいろなアニメやマンガ、ゲームの舞台となった、いわばクルマ・バイク作品の“聖地”。『頭文字D』の最後も、箱根にかつてのライバルが勢ぞろいしました。こうした作品が好きな人たちが箱根に集まることで、盛り上がれないかなと思ったのが、スカイラウンジで開催したかった理由です」(中川さん)

2019年に2回目となる「AMGモータース Round.2」を開催。このときも参加サークルの隣にバイクが展示できるスタイルを踏襲し、サークル、一般参加者の両方から「おもしろい」との評価を受けました。イベント終了後、中川さんはついにスカイラウンジでの開催に乗り出します。

  • 「AMGモータース Round.2」の様子(写真:アフタヌーンパーティー準備会)

「2023年には『MFゴースト(ヤングマガジン)』のアニメ放送があります。放送がはじまったら、ターンパイクにはファンが集まり、混んで走行が楽しめなくなるかもしれません。それまでになんとかスカイラウンジで開催しよう、と決意しました」(中川さん)

スカイラウンジでの同人誌即売会は、前代未聞。中川さんは打ち合わせに向けて、ターンパイクの営業担当者が感心するほどの準備を整えて挑んだそう。そのかいあって交渉はスムーズに進み、スカイラウンジでの開催が決まります。開催発表後、アフタヌーンパーティー準備会のもとにさまざまな声が寄せられました。

「当初より、スカイラウンジでの開催を目標として公言していたので、それを知っている方からは『いよいよ開催か!」という声が、AMGモータースを初めて知った方からは『あのスカイラウンジで?本当か?』という声が寄せられました。

多くの人に、大きなインパクトを与えたという手応えはありましたね。私自身も、標高1,000m以上、箱根エリアの頂上で同人誌即売会の開催なんて、聞いたことがありませんから」(中川さん)

  • スタッフの名札も凝った作りに(写真:アフタヌーンパーティー準備会)

運営の不安をよそに同人誌即売会もオーナーズミーティングも大盛況!

今回の「AMGモータース Round.3」には、43ものサークルが参加。それぞれのサークルブース(割り当てられた販売スペース)には、執筆者の想いが込められた書籍やアイテムが並びます。

即売会は12時からでしたが、10時を過ぎたあたりから一般参加者が集まりはじめ、ティーラウンジ前の階段には、入場を待つ列ができていました。

  • 同人誌即売会は、スカイラウンジ2Fにあるティーラウンジを貸し切って開催された

  • 開場内の様子。多彩な同人誌を目当てに多くの人で賑わった

  • 見覚えのあるクルマの姿に、思わず立ち止まって確認することも

  • 創作物だけでなく、特別なクルマやバイクの写真集を扱ったサークルもある

  • “ドラレコ録画中”のオリジナルステッカーなど、アイテムも扱われていた

一般参加者が、わざわざターンパイクまで来てくれるだろうか……? 主催するアフタヌーンパーティー準備会の中川さんは心配していたそうですが、その不安はうれしい方向にはずれ、同人誌即売会の終了時間まで、参加者が途切れることはありませんでした。

時代やジャンルを問わず集まったオーナーズミーティング

これまで好評だった、バイクの展示。しかし中川さんは、クルマを中心とした同人活動を行っている参加サークルやクルマ好きの一般参加者に、申し訳なさを感じていたそう。そこで3回目は、スカイラウンジの駐車場を貸し切り、同人誌即売会とオーナーズミーティングの同時開催を決めました。

開催日は肌寒く、雨がちらつく空模様でしたが、こちらも多くの参加者が集まり、駐車場やスカイラウンジのフードコートで愛車談義に花を咲かせていました。参加者のみなさんが乗ってきたクルマやバイクの種類の多さにも驚き!

  • オーナーズミーティングには参加費が設定されていたが、当日は予備スペースに参加者が飛び込むほどの賑わいをみせた

  • 旧車から最新車両、実用車からハイパフォーマンスカーまで。色とりどりの車両が集まる様は、なかなか見られない光景だ

  • 当日、早朝は大雨だったが、悪天候をものともしない多くのライダーが集まった

  • 耐寒装備の整ったライダーたちはバイクのすぐ横で、軽装のドライバーたちはスカイラウンジ内に集まり、談話を楽しんでいたようだ

同人誌即売会とオーナーズミーティングの同時開催は大成功を収めましたが、もうスカイラウンジでの開催は考えていないと中川さんは言います。

「スカイラウンジでの開催は特別です。同人誌即売会はサークル、一般、スタッフ、企業(いる場合)、すべての参加者の上で成り立っています。

またAMGモータースはクルマやバイクが登場するアニメ、マンガ、ゲームが好きな人たちが集まる場と考えています。
そのため、次は電車やバスでのアクセスのいい場所で開催したいと思っているんです。ウチか、ウチ以外かわかりませんが、またスカイラウンジで同人誌即売会が開催されることがあれば、私としてもうれしいです」(中川さん)

現在のところ、クルマとバイクの同人誌即売会は「AMGモータース」が最大級のもの。興味を持たれた方は、ぜひ公式サイトやSNSで今後の動向をチェックしてみてください。

<関連リンク>
AMGモータース
アネスト岩田ターンパイク箱根

(文・撮影:糸井賢一/取材協力・AMGモータース/編集:木谷宗義type-e+ノオト)

[GAZOO編集部]

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