「安全太郎」工事現場を見守り続けて50年!長く愛される理由とは?

道路の工事現場や車線規制でよく見かける、一生懸命に旗を振る人形。クルマを運転する人なら、きっと一度は目にしたことがあるでしょう。彼の名前は、「安全太郎」。実に約50年の歴史を持つ、大ベテランなのです。

では、この安全太郎、いつどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

誕生の経緯や活躍の現場について、メーカーであるトクデンコスモ株式会社の依田さんにお話を聞きました。

顔はすべて手書き!? 安全太郎が生まれた経緯

――そもそも「安全太郎」は、いつどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

高度経済成長期であった1970年ごろ、全国各地で高速道路の建設が進んでいました。当時は人間が工事現場で旗を振り、ドライバーに注意を呼びかけていましたが、作業員がはねられる事故が起きていました。

人命は、何よりも優先しなければなりません。そこで高速道路の関係者が、規制材(工事規制帯に設置して、注意喚起や警告を行うための規制用品)を製造・販売していた土井万里雄氏に相談したのがきっかけだとされています。

弊社は1987年ごろから、安全太郎の駆動装置の製造と組立てを行っていました。その後、全体的な権利を譲り受け、1995年から安全太郎の製造・販売のすべてを担当しています。

  • 工事現場の安全を確保するため、人間の代わりとして作られたガードマンロボット「安全太郎」

――安全太郎の種類はあるのでしょうか? また、値段も気になります

最初は右腕を振るタイプだけでしたが、バリエーションは増えています。今、製造・販売しているのは、左腕は固定で右腕だけ可動するタイプ(R)と、両方の車線に対応できる両腕振りタイプ(W)、左腕に回転灯を持ち、右腕が可動するタイプ(PR)の3種類です。

作業着の色は青色と蛍光オレンジ色の2種類で、ご要望があれば他の色もオプション対応しています。価格は税抜きで1体 80~93万円です。

  • 両腕振りタイプ、右腕振りタイプ、回転灯持ちタイプの3種類がある。

――安全太郎の主なスペックを教えてください

体重は、片腕振りタイプと両腕振りタイプで若干差があり約40~45kg、身長はいずれも185cmです。

構造はシンプルで、モーターが円盤を回し、そこにクランクシャフトと腕を接続しています。電源を入れると、回転によって腕が振られる仕組みです。ちなみに顔は手書きなので、個体差があります。

  • ネジと配線を接続することで、手にランプを取り付けられる

  • 腕を振るための動作スイッチは背中側にある

個人からも「ほしい」と問い合わせが!安全太郎が長く愛される理由

――安全太郎は、年間どれくらいの数を製造しているのでしょうか? また、製造にかかる期間は?

1年間でだいたい1~5台くらいを製造しています。製造期間は、1台あたり実働で1.5カ月くらいでしょうか。手作業で作っているので、それくらいかかりますね。新規製造のほか、修理の依頼が1年に20件ほどあります。

ごくたまに、道路関係者ではない方からも、お問い合わせをいただきます。いずれも受注には至りませんでしたが、「ゴルフ場で、獣害対策のために置くのはどうか」「家の玄関に置きたい」という問い合わせもあったようです。

――現場で破損するケースも多いと推測します。どのような修理依頼がくるのでしょうか?

やはり「衝突事故によりボディーが破損したので、修理してほしい」という依頼が多いですね。頭がとれた、腕がちぎれた……と、それだけを聞くと「どんな悲惨な交通事故だ?」と思われるかもしれませんね。

  • 腕振り角度は約100度。旗を大きく振ることで、ドライバーに注意を促す。

――最近はLEDの誘導表示も見かけます。そんな中でも、安全太郎は現役であり続けているのは、なぜだと思われますか?

人間の目は、人間的・立体的なものに素早く反応するからだと思います。立体的な安全太郎と平面的なLED画像では、やはり認識性が違うんでしょうね。

  • 「安全太郎」は今も現役として、工事現場の安全を確保し続けている

今回の取材で、「顔は手書き」「1体80~93万円」「両腕振りタイプもある」など、安全太郎の意外な事実を知ることができました。

人間のように見えることで、適度にドライバーへの警戒を促す安全太郎。道路工事に携わる人とドライバーの安全を確保する任務は、今後も続きそうです。

<取材協力>
トクデンコスモ株式会社

(取材・文:村中貴士/写真提供:トクデンコスモ株式会社/編集:木谷宗義 type-e+ノオト)

[GAZOO編集部]

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