ルーメン、カンデラ、ケルビン・・・ヘッドライトの「単位の意味」とバルブ選びのポイント
夜間の安全確保はもちろん、ドレスアップの一翼も担うヘッドライト。交換するときには、明るさや色味などを変更する人も多いでしょう。
そして、バルブ選びをするときに出てくるのが、「ルーメン」や「カンデラ」「ルクス」といった数値の単位です。製品によってさまざまな数値が表示されていて、迷いますよね……。
そこで、LED・HIDなどのランプ類をメインに、カー用品を広く扱うPIAA(ピア)に、ヘッドライトの基礎知識や選び方を伺いました。PIAAは、TOYOTA GAZOO Racingにもライティングシステム採用実績がある自動車用ライトのプロフェッショナルです。
ハロゲン、HID、LED、それぞれのライトの違いって?
――まずはヘッドライトの種類について教えてください。今、どのようなタイプがあるのでしょうか?
ヘッドライトは大きく分けて3種類あります。
①ハロゲンライト
まず「ハロゲンライト」。これは、ハロゲンガスや不活性ガスなどを封入した電球のフィラメントに電流を流し、発光する仕組みのライトです。
ハロゲンは熱効率の関係で発熱するので、雪国に強いと言われています。他の3つに比べると明るさは落ちますが、比較的安価に入手できます。
②キセノンライト(HID)
2つ目は「キセノンライト」とも呼ばれる、「HID」(High Intensity Discharge lamp)です。アーク放電による光源で、蛍光灯のように放電させて光を放ちます。
明るくなるまでに時間がかかる体育館のライトと同じ仕組みといえば、わかりやすいかもしれません。自動車用のHIDは、一時的に強い電圧をかけてすぐに点灯するようになっています。明るさは3つの中でも申し分ないですが、価格は少々高く、消費電力もLEDと比べるとやや高めです。
③LEDライト
3つ目は近年、純正での採用例も増えている「LED」です。
半導体の発光ダイオードを使用し、電気を流すと発光するもので、その進化は目覚ましく、今後もさらにアップデートされていくと考えられます。明るさはHIDと比べるとやや劣りますが、ハロゲンよりは明るく、長寿命で省電力、価格もリーズナブル。発色の良さも特長です。
LEDは「雪に弱い」と言われることがありますが、それはハロゲンと比べて熱効率が良く、発熱量が少ないため。ライトに付着した雪が、溶けにくいのです。しかし、最近ではライトに装着して雪を溶かす「融雪ヒーター」もありますし、そこまで大きな問題ではないかと考えています。
――明るさでいうと、「HID>LED>ハロゲン」。価格(安価)でいうと「ハロゲン>LED>HID」ということですね。
その通りです。
ですが、今はLEDの高性能化が進み、HIDが少数派になりました。明るさを求めて交換する場合も、ハロゲン車をLEDにするケースがほとんどでしょう。ただし、車種によって適合バルブが異なるので、注意してください。ライトはご自身のクルマに対応したものを選ぶようにしましょう。
ルーメン、カンデラ、ケルビンって何?
――バルブには「ルーメン」「カンデラ」「ケルビン」と書かれていますが、それぞれの意味について教えてください。
ルーメンとカンデラは、明るさの指標、ケルビンは色の指標です。ルーメンは光束(こうそく)のことで、「明るさ」を示す単位としてもっとも使われます。
LEDバルブでは、ほぼすべてのパッケージにこの単位が表記されていて、「この数値が高いほど明るい」ということになりますが、ヘッドライトでは「どこまで路面を照らしているか」が重要です。数値だけで判断するのではなく、きちんとメーカーの説明を見るようにしましょう。
カンデラは光度のことで、光源から出る「光の強さ」を表す単位です。数値を計測するときはバルブをライトに装着し、10m/25mの壁面に照射された最高照度を測定します。
「光度の強さ」が良い製品の条件ですが、それだけでは、上方に光が漏れて対向車にとって眩しいことがあります。したがって、「照射がきちんとされているか」が重要となります。ちなみに、「ルクス」という照度の単位もありますが、測定位置基準がなくブレが出るため今ではほとんどのヘッドライトメーカーは使用していません。
――「ルーメン」「カンデラ」についてよくわかりました。「ケルビン」だけ色の指標なのですね。
おっしゃる通り、ケルビンは「光の色」を表す指標です。「色温度」とも呼ばれています。目安として、太陽光の色が5000ケルビンと言われています。そこから数値が上がって6000ケルビンになると白くなり、それ以上だと青白くなっていきます。反面、数値が下がって2000ケルビンほどになると黄色くなっていきます。
ケルビンに関しては判別が難しいため、ライトの用途や種類によって最適な色温度を選ぶ必要がありますから、点灯ディスプレイを見て判断することを強くおすすめします。車検に通るかも左右されますね。
――なるほど。では以上を踏まえると、どのようなヘッドライトが理想でしょうか。
ルーメンとカンデラ、両方の数値が高いのが理想ですが、見極めは非常に難しいです。
こちらの図のように、数値が高くてもグレア(上方に漏れた光)が大きかったり、全体にムラが出てしまったりするので一概に「この数値だから良い」とも言えないのです。そのため、信頼できるメーカーを選び、点灯ディスプレイを見て、ルーメン値が高く配光が優れているものを選んでいただきたいと思います。
昨今はハロゲンバルブをLEDバルブに交換するケースが多いと思いますが、そのときのポイントは、
- 基板が薄く作られていているか
- ハロゲンバルブと同じ位置か
- 放熱ボディに光を遮るような構造がないか
の大きく3点です。主に価格が高い製品は明るさと配光性能に優れているものですが、安価なモデルでも純正ハロゲンを凌ぐ製品もありますので比較することが肝心です。
――ありがとうございます。そのほかに知っておくべき法規などはありますか?
すべてをお伝えするのは大変ですので、主なものをお話しします。
光量は1つのライト(ロービーム)に対し6400カンデラ以上が車検の基準です。カットライン(光の境目)が明瞭で境界線があって、対向車のドライバーに眩しさを感じさせないよう「左上がり」に光が照らされているかどうかも重要。
車検場では機械判定になるので、光がカットライン上に止まらないと車検に通らないことになります。色はあまりに青白さが強いと車検NGとなりますので、車検対応品であることを確認しましょう。
もうひとつ、忘れてはいけないのがヘッドライトの基準です。かつては、イエロー光も季節により人気がありましたが、平成18年(2006年)1月1日以降に製作されたクルマは「白色のみ」が車検対応になっています。フォグライトへのイエロー光の装着は現在も車検対応です。
補足ですが、バルブ切れなどでライトが点灯しなくなってしまった場合、片方だけでなく両側とも一緒に交換してください。片方が寿命を迎えたということは、もう片方の寿命も近いためです。
PIAAからのメッセージ
――最後にPIAAさんからメッセージをお願いします。
ヘッドライト用LEDは、近年大きな進化を遂げています。ハロゲンバルブから交換すると圧倒的な見やすさを体感できるはずです。どんなにエンジンパワーがあっても、視界が確保されなければ安心してアクセルを踏めません。レースの世界でも一般公道でも、ヘッドライトは欠かせない部品ですから、安全なドライブのためにはしっかりヘッドライトにも気を配っていただきたいと思います。
「明るさ」だけでなく「光の質」も考慮して
バルブ交換時には、明るさや色温度の数値だけを気にしがちですが、配光特性やカットラインといった「光の質」も大切なことがわかりました。とはいえ、どの製品が愛車にとってベストかを見極めるのは難しいので、購入時はショップやディーラーに相談するとよさそうですね!
<取材協力>
PIAA
(取材・文:神田匠/写真:PIAA/編集:木谷宗義type-e+ノオト)
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