プリウス(60系)の実燃費 2パターンの運転特性、市街地、高速、山道で計測

  • 新型プリウス燃費計測スタート地点の新横浜

    新横浜から2台のプリウスで燃費計測を始める

1997年に世界初の「量産ハイブリッド自動車」である初代プリウスが誕生して以来、「低燃費」が車を購入する際の重視するポイントとなってきている。各社ともに更なる低燃費に向けた開発競争を繰り広げ、今では普通自動車購入の約半数がハイブリッド車(HEV)になっている。
だが筆者は燃費の良い車を愛車にしてきたことがないため、レンタカーで借りるプリウスやアクアはもちろん、ガソリンエンジンのカローラでさえ燃費が凄く良いことにいつも驚いてしまう。15km/Lを超えたら燃費いいな、20km/Lを超えたら凄いなと感じてしまうといった具合だ。

今では当たり前に語られる低燃費だが、以前はガソリンスタンドで燃料を入れるときに何となく頭の中で計算するぐらいしか燃費を知る余地が無く、ざっくりと燃費は知っているものの、細かな燃費まで気にする人は少なかったような記憶だ。
しかし、昨今の車はマルチメーターなどに航続可能距離、瞬間燃費や平均燃費などが表示されるため、自分の車の燃費を細かくイメージできている人が増えたのではないだろうか。

それでも、同じ車を乗っている人が、どのくらいの燃費なのかを知らない人は少なくないだろう。しかもWebサイトで実燃費を調べてみると、ユーザー投稿型の燃費比較ではかなりばらつきが見られるし、自動車メディアの試乗記などに掲載されている燃費は驚くほどばらついた数値になっている。

ばらつきの要因は運転の仕方、走行条件などによって違ってくるわけだが、実燃費の参考になるデータや走行条件が同じ中での燃費比較などがあまり無い状況でもある。そこで、運転の仕方で燃費が大きく変わると思われる“ハイブリッド車の燃費計測”を編集部で実施することにした。
車種は、スポーティーなスタイルに注目されがちではあるが、やはり燃費を意識しているオーナーさんが多いであろう新型プリウスにした。ただし、計測は1日だけのため、燃費は参考程度にご覧いただきたい。

燃費計測は、走行環境とアクセル操作の違いによる燃費の違いを明確にしたいため、市街地、郊外、高速、山道のルートを「普通の運転」と「加速強めの運転」で計測を行った。テスト車は60系プリウスG(2.0HEV)の19インチ。走行はノーマルモードでACはONとした。

(計測ルート)

走行地 距離(km) 計測ルート
市街地 24 新横浜~用賀IC (綱島街道→環七→国道246号→環八)
高速道路 119 用賀IC~新富士IC(東名→新東名)
郊外 35 新富士IC~御殿場駅(国道469富士南麓道路)
山道(登り) 31 御殿場駅~箱根神社
山道(下り) 16 箱根神社~小田原西IC(国道1号)
高速道路 50 小田原西IC~横浜町田IC(小田原厚木道路→東名高速)
市街地 14 横浜町田IC~新横浜(国道16号→環状2号)

※天気:快晴 計測日:1月下旬

プリウスのカタログ燃費について

まずはプリウス燃費について説明する。カタログに表示されている燃費はWLTCモード(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)というモードで計測された数値。そのためカタログには、市街地、郊外、高速道路などで構成されたモードの燃費と、3つのモードでの総合的な燃費が記載されている。
このように車の走行環境に応じた表示をすることにより、燃費を正確に知ることができるようになっているのだ。

新型プリウス燃費のカタログ値(2WD)

燃料消費率 Z(2.0HEV) G(2.0HEV) U(1.8HEV)
WLTC 26.0 28.6 32.6
市街地モード(km/L) 23.7 26.0 29.9
郊外モード(km/L) 28.7 31.1 37.3
高速道路モード(km/L) 25.5 28.2 31.2

【市街地】普通の運転でWLTCモードの9割ほどの燃費を記録

  • 新型プリウス燃費計測、国道246から環八への交差点

    瀬田交差点

ルート 距離(km) 燃費(km/L) EV走行率
午前:新横浜~用賀IC 24 24.9[19.7]※ 88%[84%]
夕方:横浜町田IC~新横浜 14 21.7[24.7]※ 84%[86%]

※普通の運転[加速強めの運転]

新横浜から用賀ICは平日の午前中に走行したが、交通量は普通で順調に都内を走っている感じがした。とは言うものの、横浜から都内を走行しているため23.6kmを走るのに1時間15分を要した。
宅配トラック等が停車して車線を塞いでいたり、信号で何度も停車、また法定速度までスピードが上がったとしても、すぐに減速をしなければいけない状況だった。また夕方の国道16号はお馴染みの大渋滞であったが、環状2号線に入ると順調に流れた。

そんな道路状況のため、午前中の市街地は、停車状態や減速後の加速が必要となる状況が多く、アクセルワークにより燃費に差が大きく発生した。普通の運転ではWLTCの96%近い燃費となり、加速強めの運転は、それでも20L/km近い燃費を記録している。

午後の市街地は、加速を強くできるポイントが少なく、運転の仕方による燃費の差はなかった。しかも、燃費を意識しない運転の方が、燃費が良い結果になった。これは、走行距離が13kmと短いため正しい計測ができなかったと思われる。

【高速道路】順調に走行できるかがポイント、運転の仕方で大きな差は生じない

  • 新型プリウス燃費計測走行ポイントの新東名の新富士IC

    新東名の新富士IC

ルート 距離(km) 燃費(km/L) EV走行率
午前:用賀IC~新富士IC(渋滞有) 119 23.1[21.8]※ 47%[44%]
夕方:小田原西IC~横浜町田IC 50 27.0[25.5]※ 64%[62%]

※普通の運転[加速強めの運転]、小田原厚木道路は一般国道

平日の昼間であるが、用賀ICから厚木まで間は交通量が多く、横浜町田IC手前から4kmほどは渋滞であった。また大井松田から先の右ルートと左ルートが選択できる箇所では、右ルートが工事のため閉鎖されており、トラックが先導するような走行を強いられた。
そのため、全体的にブレーキを踏んで、再加速をするようなタイミングが通常の高速走行よりかなり多く発生した。御殿場ICを過ぎると順調に走行でき、夕方に走行した小田原厚木道路(一般国道)も順調に走行できた。

そんな道路状況のため、午前中の燃費は23.1[21.8]km/Lと高速道路としては低めの数値となった。御殿場まで登り区間があるもの要因の一つかもしれない。
いっぽう、小田原厚木道路は自動車専用道であるが一般国道のため最高速度が70km。しかも順調に流れていたため、27.0[25.5]km/LとWLTCモードの96%[90%]とカタログ燃費に近い数値となった。

高速道路(自動車専用道路含む)の場合、道路が混雑していなければ等速で移動する時間が長くなるはずのため、普通の運転と加速強めの運転(運転特性)で燃費に大差が生じないはずだ。この計測でも、交通量が増えることにより燃費が悪化したものの、運転の仕方では大差が無いことがわかった。

【山道】登り道でも優しい運転をすれば燃費は良くなる

  • 新型プリウス燃費計測走行ポイントの元箱根より芦ノ湖、富士山を望む

    元箱根港付近

ルート 距離(km) 燃費(km/L) EV走行率
登り:御殿場駅~元箱根港付近 31 17.4[15.8]※ 68%[69%]
下り:箱根(最高地点)~小田原西IC 16 93.2[62.8]※ 45%[46%]

※普通の運転[加速強めの運転]

御殿場駅の標高が457m、元箱根港の標高が730mのため、約300mの山登りなった。芦ノ湖までは登りが続くが、芦ノ湖の湖尻から箱根神社までは湖の淵を走るため、大きな登りはないがカーブが多いルートだ。今回は大型バスが多く走っており、多くの車が1列に連なり、ゆっくり登っていった印象である。
下りは国道1号の最高地点(874m)から小田原付近の標高31mまでを下った。下りでは観光客の車で数珠つなぎではあったが、ストレスなく下ることができた。

登りは17.4[15.8]km/Lで、運転の仕方による大きな差も生じていない。これは大型バスに先導されたため、加減速をすることが通常の山道より少なくなり、若干良い燃費になったかもしれない。
プリウスでの登りの計測は1回しかしていないが、登りでも過度にアクセルを踏んだりしない限り、驚くように悪い燃費にならないのではないだろうか。

下りは93.2[62.8]km/Lと想像を超える燃費、運転の仕方による差が生じたが、燃料消費量がわずかであるため、誤差ともいえる。

【郊外】箱根以上の標高差があったため山道となってしまった

  • 新型プリウス燃費計測走行中にぐるり富士山風景街道の国道469号、殿場と裾野市境付近

    ぐるり富士山風景街道の一つである国道469号、御殿場と裾野市境付近

ルート 距離(km) 燃費(km/L) EV走行率
登り:新富士IC~御殿場駅 35 19.5[18.4]※ 64%[55%]

※普通の運転[加速強めの運転]

郊外とは、国土交通省やカタログを見ると、信号や渋滞などの影響をあまり受けない走行と定義されている。今回走行した国道469号富士南麓道路は、信号は少なく、渋滞は全くなく、小さなカーブが連続することが少ないコース。しかしスタートの標高が118m、富士サファリパーク周辺が最高地点で870m、ゴールの御殿場駅が457mだった。

計測時、前半の登り区間は、想定以上に遅い車やトラックなどの後ろにつくことなった。前方にクルマがいない状況と比較すると、加減速は多めだった。最高地点を過ぎてからの後半は、前方に車がいなくなり、スムーズに運転をすることができた。

実はこのコースの標高差は走行するまで把握できていなかった。そのため郊外モードとしての計測は上手くできなかったが、山道だと考えると悪い燃費ではなく、運転の仕方による燃費の差は小さい結果となった。

まとめ

1日走行してトータルの燃費は以下の結果だ。

普通の運転 加速強めの運転
23.3km/L 21.6Km/L

※走行路比率:市街12%、高速60%、郊外(山道)12%、山道16%

新型プリウス(60系)の燃費について改めてわかったことは、

  • 市街地は運転の仕方で燃費に大きな差がある
  • 高速は運転の仕方で燃費に大きな差はない
  • 高速は順調に流れている時は、普通の運転をすればかなり良い燃費が期待できる
  • 山登りは、普通の運転をすれば驚くほど悪い燃費にならない

 

当たり前であるが「新型プリウスは加減速を繰り返すことにより燃費は大きく悪化する」ということだ。逆に言えば、信号待ちでのダッシュ、高速道路では走行車線と追い越し車線を頻繁に行ききするような運転、山道では必要以上の加減速などをしなければ、大きく燃費が悪化することはない。しかも市街地だけであれば、24km/L以上が期待できそうだ。ただし、計測日はエアコンがあまり働いていない状況ではあったため、夏場となると数値は下がることが予想される。

今回、走行環境、運転の仕方を明らかにしながら、同じ2台のプリウスで違うタイプの走りで比較したことで、より具体的な走行をイメージしながら読んでいただけているとうれしい。
また改めて感じたことは、燃費を意識し丁寧に運転をすることは安全運転にもつながるということだ。ぜひみなさんも地球環境と周りの車への配慮を忘れずに安全運転を心がけてほしい。

(GAZOO編集部)

MORIZO on the Road