片岡龍也 ドライバーズコラム 第9回 タイヤテストのお話

こんにちは!レーシングドライバーの片岡龍也です。先週の予告にもしましたが、今週はいよいよ始まったテスト走行についてお話します。

1月25日26日、27日はメンテナンスデー、28日29日の4日間マレーシアのセパンサーキットで毎日7時間走行しました。

主な目的は、今シーズン用のタイヤテストになります。最近多くのレースはワンメイク(1つのメーカーのみ)が主流なのですがスーパーGTでは、我らが装着するヨコハマタイヤ、ライバルにはブリヂストン、ダンロップ、ミシュランなどのタイヤメーカーが参戦しております。

ライバルがいるのでタイヤ開発を行い、常に性能の向上を続けていかないと負けてしまいます。レースに詳しくない人からすれば、タイヤなんて黒くて丸い見た目も変わらない物だと思いますが、クルマと地面が唯一接している大切なパーツです。

もちろん、乗用車用のタイヤにもグリップを重視した物や、燃費を重視したものもありますが、分かりやすく大きな違いで例えるなら、ノーマルタイヤ(夏タイヤ)とスタッドレス(冬タイヤ)がありますよね、これは、使用条件で使い分けていることが分かります。同じような形と色をしていても色々とある訳です。

レーシングスリックタイヤでは、使用条件でタイヤのゴムの硬さを変えたり、タイヤの作り方(構造)の違うものを選んで使用したりします。これは、気温やアスファルトの種類、コースレイアウトによるタイヤへの負担のかかり方で、条件に合ったタイヤを選んでいるわけです。

そして、タイヤに求めるものは“グリップ力”と”耐久性”です。しかし、グリップ力はゴムが柔らかいほど発生します。耐久性は、ゴムが固いほど持続します。これを両立するのは、とても難しいことが分かると思います。

レース距離をギリギリ走り切れる柔らかさを追求すれば良いのですが、レースの現場に持ち込むタイヤを製造するのは、レースが開催される随分前になります。当日の気温が予想と10℃違えば、選んで持ち込んできたタイヤのストライクゾーンから大きく外れてしまします。ならばどれだけストライクゾーンの大きなタイヤを作るか、グリップ力と持久力の両立が出来るゴムを開発するかを競争しています。

今回のテストでは、一日に10種類上のタイヤを走行テストします。グリップ力や持久力をテストしていきますが、それ以外にも、マシンの動きに与える影響もタイヤによって変わってきます。例えば、このタイヤは曲がりやすいとか曲がりにくいとかもタイヤの違いで全く動きが変わります。

レースの週末であれば、選んだタイヤにマシンを合わせるセッティングを行いますが、タイヤテストでは一定の状況でタイヤの違いだけを見るので、ひたすらタイヤを交換して走り続けます。

気温が37℃を超え、路面温度が55℃を超える灼熱の中でマシンを整備し続けるメカニックさんの仕事も大変だと思います。また、ホイールとタイヤを組んでバラシしての作業を繰り返しているヨコハマタイヤのサービススタッフも大変です。一日に、70セット以上の組み換えをしているようで、280本以上のタイヤを組み替えていることになりますね。

そして、チームマネージャーの仕事ぶりも忘れてはいけません。ドライバーのレーシングスーツやメカニックスーツを毎日洗濯して気持ちよく仕事が出来るようにしてくれています。毎日の昼食や軽食も作ってくれています。さらには、ドライバーへのサポートもありますからとにかく大忙しです。

このように、多くのスタッフの協力のもと一日700キロ以上の距離を走り、4日間で3000キロ以上の走行テストをしました。

このデーターを日本に持ち帰り、次のタイヤへ反映されることが楽しみです。このように、レースが始まる前から見えない所で戦いが始まっています。普段は見えない部分ですが、こうやって知るとまたレースの見方が変わってくるのではないでしょうか。

[ガズー編集部]