トヨタ自動車のクルマ好き社員紹介 ― 自ら手がけたMARK X GRMN買っちゃいました!(後編) 水野陽一さん

MARK X GRMNの開発責任者でもあり、実際クルマを購入したという水野さん。開発者がご購入されたというのが、一番説得力があると感じますが、再びその特別仕様車を世に出すまでの道程など、なかなか聞くことのできないエピソードを伺いましょう!どうぞ!

―――――MARK X GRMNの“味付け”は、どのようにされたのでしょうか?

G’S、GRMNは、ユーザーさんからの意見は考慮しません。逆にこちらからお客様へ提案するクルマですので。お客様からは、これ違うと言われることも当然あります。開発をすごく頑張ったんだけど、ダメだと言われ玉砕されることも当然ありますが、我々の味付けで提供しています。

例えば、ポルシェとかめちゃくちゃ乗り心地が良いですよね。ニュルブルクリンクのコースを走っても一般道を走っても、どこを走ってもポルシェだと感じます。同じ様に訴えていきたいので、我々が好き放題に作っている訳ではなく、一本筋の通った、これがGRMNです!と言われる味付けをしています。

ボデー タイヤ、アブソーバー、骨格はいじれないので、いろいろ付ける外すを繰り返して、弊社のテストドライバーの勝又さんと共にテストをして来ました。
MARK X GRMN(http://grmn.gazooracing.com/Mark_X/)サイトご参照

サーキットでテストをしていますが、サーキットで速く走るクルマを作ると乗り心地は悪くなります、でもサーキットでテストしているクルマを一般道で走らせるとこうなるよね!という感覚がわかるのが、弊社のテストドライバーです。市販車に関しては、一般道もサーキットもなく感覚でわかる人たち(弊社テストドライバー)へお願いします。このままニュルブルクリンクの過酷なコースで走っても大丈夫!となるまで。そうならない時は、何かがおかしいということです。

―――――さて、無事にクルマが誕生し手を離れると次のステップは販売ですよね?

違うんです。開発だけをしていれば良いのではなくて、補給パーツに関しても考えないといけません。将来のために、自分も含め、オーナーからオーダーが来たら作れるように100台分だけの部品を用意しておきます。供給の依頼が来るかどうかわからない部品に対して、お願いをしておかないといけないんですよ。

ユーザーマニュアルに関してもそうです。100冊必要です。普通のクルマは、弊社の製品企画室が会社中に指示書を出すと、指示書に沿って説明に行かなくてもシステム上で作業が流れていきます。それに合わせて、“取り扱い説明書”が出来上がって来るんです。しかし、GRMNとなると、システムに乗らないので、すみません…作ってくださいとお願いをしにいかないといけません。すべてがゼロからなんです。

ようやく、iQ 2台、Vttz、MARK Xと経て、100台だけの取り扱い説明書に関係部署のみなさんが構えてくれるようになりました。初代のGRMNの時は、そうとう周囲に怒られているはずです(笑)、自分も大変でしたが…。

―――――既に完売ですが、反響はいかがでしたか?

GRMNのMARK Xは、以前やっていたWEBから販売とは違って、店頭で売りたいというのもありトヨペット店で販売をしました。弊社から見て、売れちゃった瞬間は、相手がディーラーさんでしたからあっという間でした。ですので、自分も欲しかったので、ディーラーさんへ行って買いましたよ。

―――――TGRFには、お仕事ではなく、オーナーとして※ご参加されたそうですが、他のオーナーの方々にお会いしていかがでしたか?

(※TOYOTA GAZOO Racing Festivalでは、毎年GRMNオーナー向けのドライビングレッスンが、前日に富士スピードウェイで開催されている)

半分あたり、半分ハズレという感じですね。GRMNのオーナーが約70人集まり、そのうちMARK Xが発売された100台中約20台参加していました。圧巻です。結構若い方が多かったのですね。この時期に100台出ます!というタイミングで、突然の告知にフルローンでお買い求めの方もいたので、ありがたいですね。開発者だということをご存じで、オーナーとしての参加に驚かれました。

―――――ところで、以前は何に乗っていらっしゃいましたか?

マークⅡツアラーVに、10年乗っていました。その前は海外駐在で自家用車はなく、またその前に日本に居たときは、チェイサーですね。基本、4ドアセダンオタクなんです。海外から戻ってマークⅡを買った時は、その時点で中古で、カスタマイズしているものを購入。ちょっと品のないクルマねえと、言われたことがあるクルマでしたね(笑)。

もっと遡ると、家内の助手席の変遷をたどると、学生時代の終わりにシティターボから始まり、86が2台、スーパーストラットと言っていたスーパーチャージャーのトレノ、そして、子どもが生まれ2ドアのクルマはダメということになり、前述のマークⅡツアラーVに乗りました。家族にとっては、それが我が家のクルマなので一番乗り心地が良くこれまで反対はありません(笑)。

―――――早速どこかへ、ロングドライブへは行かれましたか?

新車を買った時は、慣らしの3000キロまでは一気に終わらせたいんです。最初の1000キロまで何回転、次の500キロで何回転、半分くらい回したところで、オイルなどを交換しました。久しぶりの新車で、最近オートバックスやジェームスにやたら行くようになりました(笑)。

―――――自分の作ったクルマは、いかがですか?

どうも、タイヤの空気圧調整をせずに納車されたらしく、俺こんなクルマ作ったかな?というのが最初の感想。そう思ったけど、仕事が忙しくて1週間ほど放置しておきました。そして、出かけるために高速に乗ったら、クルマがフラフラするんですよ。タイヤが変形しないように、新車は工場で空気圧を高くしているんですが、そのまま納車されてしまったようです。それをスタンドで自分で調整しました。そうしたら快適になりました!

―――――周囲の反応は?

会社では、買っちゃったね!と言われることもありますね。当初、社長にプランを見せたときに、500万なら買う!と言われました。だから、絶対500万で仕上げる!と心に決めていました。価格も自分たちで決め決裁をもらったのですが、人によっては、3.5リットルで500万円?という方、これがなぜ500万もするのか、またなぜ500万でできるの?と見てくれる角度がそれぞれ違います。もともとベースのクルマが、400万超えているんですが、沢山の方の協力と元町工場で生産できたという事が非常に大きいですね。

―――――今後のGRMNの動向は?

これまでは、成瀬さんがあたためていたもの、MRみたいにベース車がなく実現できないものもありましたが、それらを我々の手でGRMNとして世に出して来ました。自分は関係部署からは離れましたが、今後は、これまでと違った新たなGRMNが出てきますので、期待してくださいね。

今も将来に向けて、さまざまなプロジェクトが動いているのでしょうね。自分の手掛けたものが世に出る喜び。味わってみたいですね~。ありがとうございました!

[ガズ―編集部]