ピックアップ!坪井翔選手 ~TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ RACE~

名立たるレーシングドライバーが2013年のシリーズ開幕時から多数参戦している「TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race」。ナンバー付きのワンメイク車両を使ったスプリントレースなのだが、服部尚貴選手や羽根幸浩選手、山田英二選手などのベテランドライバーを筆頭に、SUPER GTで活躍している谷口信輝選手や織戸学選手、平中克幸選手、井口卓人選手、久保凜太郎選手など参戦しているドライバーはバラエティに富んでいる。
どのドライバーも「86/BRZレースは、レースで勝つことはもちろんタイムを出すことも難しく、プロドライバー泣かせのレース」だと口を揃えて語るほど、ハイレベルな戦いが繰り広げられている。

そんなベテランドライバーやトップドライバーとともに、将来を期待されている多くの若手ドライバーも参戦していて、「ベテランドライバー」vs.「現役トップドライバー」vs.「若手ドライバー」の世代別の争いもレースの魅力を引き立てている要素なのだ。

昨年からスポット参戦している若手ドライバーの坪井翔選手も、“86/BRZレースの厳しい洗礼”を受けた一人でもある。v

5歳からレーシングカートを始めた坪井選手は幼いころから頭角を現し、トヨタのスカラシップにより17歳でフォーミュラレースにデビュー。2015年にはFIA F4の初代シリーズチャンピオンにも輝き、今シーズンは、SUPER GT、全日本F3選手権、スーパー耐久、インタープロトシリーズ、86/BRZレースとほぼ毎週末に何かのレースに出場するほど多忙を極めている。

昨シーズンの第4戦として開催された富士スピードウェイラウンドで86/BRZレースにデビューした坪井選手は、予選で12位を獲得し、決勝レースでは18位という結果に終わった。当時を振り返って「昨年まではフォーミュラカーを中心に乗っていたので、まず箱車(ツーリングカー)の走らせ方が分かっていませんでした。とくに86のレースカーは、ナンバー付きでラジアルタイヤを履いているので、丁寧に運転しないと好成績を残せません」と、レースカーへの対応力が足りていなかったそうだ。昨シーズンはデビュー戦となった富士スピードウェイラウンドから4戦にスポット参戦したが、第5戦十勝スピードウェイラウンドの9位というのが決勝レースの最高成績だった。

参戦2年目となる今シーズンも、昨シーズンと同様で数戦にスポット参戦。まず参戦初戦となったのが。6月3日-4日に富士スピードウェイで行われた第3戦になる。今シーズンは、5つのカテゴリーに参戦して多忙なスケジュールをこなしている坪井選手なので、事前の練習走行ができずにぶっつけ本番となったが、2日に実施された公式練習でトップタイムをマーク。経験に長けているドライバー達を押さえてのトップタイムなので周囲を驚かせたのだった。
「昨年は、まだまだ箱車の経験が少なかったのですが、今シーズンはSUPER GTやインタープロト、スーパー耐久などの多くのカテゴリーに乗らせてもらうことができ、ドライバーとしての引き出しが増えたように感じています。そのため86のワンメイクカーに乗ってもすぐに違和感なく操作できました」。このように、様々なカテゴリーを経験することによって86/BRZレースにもすぐに順応できるようになったようだ。

第3戦のレース結果は、予選がトップから0.2秒差の7位で、決勝は8位となりシリーズポイントを獲得している。
「予選はタイヤの暖めるタイミングを間違ってしまい、アタック周回の後半にはグリップ感が薄くなってしまいました。それでもトップとコンマ2秒差だったので、昨年より状況は良くなったと思います。決勝レースは、序盤に前を押さえられてしまってトップ集団を逃してしまったのが悔やまれます。ワンメイクレースなので、抜きにくいのは当たり前なので、やはり予選で上位に付けないと好成績は残せません」と昨シーズンよりも上位陣と戦える状況にはなっているが、やはりポイントを獲得するだけでは納得がいかないようだ。

最後に86/BRZレースに参戦する意義については、「今回の予選を見てもわかるようにトップから1秒差に20台以上が入るレースなので、ミスは許されません。また、マシンもタイヤも繊細なコントロールを必要とします。過度な操作や無理をするとタイムが伸びません。この繊細なドライビングは他のカテゴリーにも活かせるはずで、とくにSUPER GTの決勝などでは応用できると思っています」と誰もが気軽に参戦できるナンバー付きのワンメイクレースだが、トップカテゴリーのレースにも活かせるドライビング技術を培える場でもあるという。

(写真、テキスト:真鍋裕行)

[ガズー編集部]