相棒が不在の場合のセッティングはどうするの? ~SUPER GT テスト現場レポート その1~
6月17日(土)、18日(日)の両日にわたり、スポーツランドSUGO(宮城県柴田郡村田町)にて、SUPER GT公式テストが行われた。来月開催の第4戦SUGOラウンドに備え行われるものだが、公式テストと時を同じくして、ル・マン24時間耐久レースがフランスで開催され、LEXUS陣営から中嶋一貴、国本雄資、平川亮の3選手が参加となった為、今般のテストは不在となった。そのため、WedsSport ADVAN LC500 19号車は関口雄飛選手、au TOM'S LC500 36号車はジェームス・ロシター選手、KeePer TOM'S LC500 37号車はニック・キャシディ選手が単独でテストをすることとなった。
通常は、レース同様二人一組でセッティングを詰めていくが、今回のようなドライバーの一人が不在のケースでは、テストを担当するドライバー好みの仕上がりになるのか?どのようにテストを進めているのか?キャシディ選手とジェームス選手の2人に話を伺う事にした。取材を進めるにあたり、現在、外国人ドライバーとペアを組む国際レースも経験豊富なGT300クラスStudie BMW M6 7号車(ヨルグ・ミューラー / 荒 聖治組)を駆る荒選手に、まず上記の疑問を投げかけてみた。
「その状況ならほとんどのGTドライバーが、自分中心のセッティングをしがちだと思います。ドライバーとして評価もあげたいし、自分好みのセッティングならレース中も余裕をもって走れますからね。ドライバーとして、自分寄りのセッティングに向かうのは、ある意味自然だと思います。ただし、ル・マンで組んだようなベテランドライバーは逆でした。すでにドライバーとしての評価があるため、キミの乗りやすいようにセットしてくれ。後は僕らが合わせるから、と言われました」そして「もちろんヨギー(ヨルグ・ミューラー選手)も彼ら同様、ちゃんと僕をリスペクトしてくれますよ」と付け加えた。であるならば2人のトムスドライバーは、どのような進め方をするのか? 興味津々だった。
初日走行を終えた二人に伺うと、まずキャシディ選手は、「亮とはドライビングスタイルが似てるんだ。だから僕好みとか亮好みのセッティングというのは存在しないし、お互いの作ったマシンに不満を持つことはほとんどない。それにチームが多くのデータを持っているし、今回はタイヤのチョイスがメインだから、マシンのセットアップよりもマッチングの良いタイヤを探している感じだね」と優等生的なコメントだった。
そこで37号車の小枝正樹エンジニアに話を伺うと、「確かにドライビングは似たところがあります。ただニックの方がよりオーバーステアのマシンを好みますね。亮のセットの後にニックが乗ると、アンダーステアだとコメントしてきますから…。今回は、ニックがテストしたマシンに亮が乗るわけですから問題はないでしょう。亮の方がニックよりドライビングの幅が広いですから、ニックのセットに合わせるのは難しくないですよ」とコメントしてくれた。
一方、ジェームス選手は笑いながら「僕と一貴のドライビングは、ほとんど同じなんだ。ブレーキの入れ方からタイミング、アクセル開け方やポイント、ステアリングの入力まで全く同じなんだ。それは、データでも証明されているから数字的にも間違いない。SUPER GTや耐久レースを戦う上で、これ以上ないパートナーなんだよ。これはもう運命的な出会いというしかないほどにね。だから、二人のどちらかの好みのセッティングなんて存在しないんだ」と嬉しそうにコメントしてくれた。東條エンジニアも「そうなんですよ。二人のドライビングには、ほとんど差がないんですよ」とジェームス選手のコメントを裏付けた。
二人のドライバーが、一つのレーシングマシンに乗るのだから、もう少しセッティングの好みでぶつかるものと考えていたが、少々肩透かし…。ただ、荒選手から興味深い話も聞くことができた。荒選手とミューラー選手は、ドライビングスタイルが全く違うとのこと。ステアリングの入力も、アクセルもブレーキも全く違う使い方をしている。それなのにマシンのセットは、同じ方向を向いていると言う。
荒選手曰く、「マシンをどう曲げるかではなくどう動かすかが問題で、動かす手法が違っても動かしたい方向に動けばいいんです。だから問題なのは、ドライビングスタイルではないんです。どう動いて欲しいのかイメージすることなんです。同じイメージを持っていれば、入力の仕方が違っても同じセットで走れるんです」とコメントしてくれた。ドライビングスタイルが違っても同じでも、同じセッティングに行き着くこともあると知らされた。今回の取材を通して、またセッティングの奥深さに触れることができた。
ちなみに、単独のテストとなったLEXUS陣営の3選手だが、2日間で関口選手は、265周(約981km)、ジェームス選手は、297周(約1100km)、ニッキャシディ選手は、298周(約1103km)の距離を走行した。
(写真、テキスト 折原弘之)
レポーター(お)ねえさん・大谷幸子
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[ガズー編集部]
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