我楽しむポンコツライフ・AE85改86 ~愛車紹介 フォトグラファー田村弥~

普段、クルマ・モータースポーツ業界でメディアの仕事をしている私ですが、その際にサーキットの駐車場でずっと気になっていたクルマがありました。フォトグラファーの田村 弥さん所有のAE86です。とてもキレイで、SNSで素敵な写真を見かけることもしばしば。これはもう紹介していただこうと、作文をお願いいたしました。という訳で、愛車紹介です! どうぞ!

-------以下、田村弥氏寄稿

クルマ好き、という割には、今まで所有したクルマは2台。一台は、フリーランスになった時に購入した初代日産プリメーラ。独立したてで、お金はありませんでしたが、長く乗る事を考え、無理をして新車を奮発しました。おかげさまで(?)22年たった今でも一応現役。総走行距離は48万Km!の愛称「ポンコツ1号機」。仕事のお供に日々、がんばってくれています。

そしてもう1台が、今回のテーマである、愛称「ポンコツ2号機」。デビューから30年以上経っている旧車なのに、衰えるどころか大人気のいわゆる「ハチロク」レビン&トレノ。車名よりも形式であるAE86の「ハチロク」の愛称で親しまれている庶民のスポーツカー。

ウチのクルマは、昭和61年式リトラクタブル・ヘッドライトのトレノの3ドア・ハッチバックのタイプ。でも、この僕のハチロク、実は「ハチゴー」なんです…。

このクルマとの出会いは十数年前。某ハチロク専門誌の撮影をレギュラーで承っていた頃に遡ります。当時、ハチロクは今ほどプレミアムな値段ではなく、まだまだ「走り屋兄ちゃん」達の遊び道具(汗)。サーキットや峠で酷使される事が多かったのです。そして年代的にもそろそろサビやクサリも目立つお年頃でした。大体のクルマのボディはボロボロ…。それらを補修するにはかなりのコストがかかります。

そこで皆が目を付けたのは、ハチロクの廉価バージョンの「ハチゴー」。ボディこそハチロクと同じですが、エンジンは、ハチロクに搭載されている「4AG」ツインカムではなく、ローパワーシングルカム、しかもキャブレータの「3A」。「走り屋兄ちゃん」達がそんなとろいエンジンに興味があるハズもなく、主なユーザーはカッコいいスタイルが好きな、女性やお父さん達です。つまり、「酷使されていないボディ」が安く手に入る訳です。

その「酷使されていないボディ」に自分の「ハチロク」のエンジンを載せれば、お金のかかる、いわゆるレストア作業をせずとも良いクルマが出来るではないですか!
「AE85改86」はこうして生まれる訳ですが、僕が携わっていた専門誌の企画で、その「AE85改86」を実際に造ってみよう!と言う事になりました。

京都の有名ハチロクショップにて車両の制作が順調に進む中、本来このクルマのオーナーになる筈だった編集スタッフさんが、事情により乗れなくなり、さあどうする?となった時、僕に白羽の矢が立ちました。

しかし、その当時は「ハチロク」というクルマには良いイメージが無く、非常に悩みました。しかもウチには既に主力戦闘機の「ポンコツ1号機 」があり、経済的にも2台持ちなんて想像も出来ない頃でした。まあ、何事も経験。せっかくの機会ですし、嫌になったら手放せば良いな、と開き直り所有したのが運の尽き…。乗れば乗る程に楽しくなってしまい、気がつけばあちらを直し、こちらを直しのポンコツ生活の始まりです。でもでも、ちゃんと整備することでドンドン良く走るようになっていく「ポンコツ2号機 ハチゴー改」。ドリフトブームを巻き起こした漫画の影響や、その他の事情で現在では価格高騰のハチロクです。今となっては、あの時に手に入れられたのは幸運だったと思っています。勝手な話しですね(汗)。

最大の魅力は、小さくて軽い事につきます。その軽快さは、打ち合わせ等で都内を徘徊する時も最高です。コンパクトなボディサイズは渋滞の幹線道路もスイスイ。駐車場のサイズも気にしなくていいシティコミュータの能力もあったりします。たまに出動する取材撮影でも全く不便さを感じる事はありません。ハッチバックなので、ラゲッジに沢山の撮影機材を載せる事が出来ます。リアシートを倒せば三脚や脚立など、長い物も問題ありません。

そして、趣味の時間はもちろん格別。峠道やたまに訪れるサーキットは本当に最高!ハンドリングは現代のクルマ達に比べれば全く不安定。パワーも無いので全然速くありませんが、そんなところも含め、クルマを操る喜びに溢れています。

また、このクルマをきっかけに、様々の人たちと巡り会い、お付き合いさせて頂いている事にも感謝しています。トラブルが発生した時も、そういった皆さんのおかげで乗り越えて来られたと思っております。信頼出来るショップ、つまり主治医がいてくれる事が、困った特に助けてくれる仲間達。旧車と付き合っていくのに、一番大切なのはそんな所かも…。そんなこんなで、辛くも楽しいポンコツライフはまだまだ続きそうです!

▽筆者 田村 弥 (たむら わたる)フリーランスフォトグラファー

昭和47年生まれ、神奈川県出身。子供の頃に読んだ漫画「よろしくメカドック」の影響でクルマに興味を持ったのをきっかけに、その後、親戚にたまたま連れていかれた富士スピードウェイでモータースポーツが好きになり、写真を撮ってみたくなった高校時代、なけなしのお小遣いで購入したカメラでサーキットに通い撮影を開始。日本写真芸術専門学校卒業後、幸運な事に写真家・小林 稔氏に師事。その後フリーランスとなり自動車専門の雑誌やwebを中心に活動。モータースポーツはもちろん、新車から旧車、チューニングカーまでなんでも興味津々のクルマ好きで、自らステアリングを握りサーキットや早朝のワインディングに出没したりする、走り好きでもあったりもする。日本レース写真家協会(JRPA)に所属。

(テキスト、写真 田村 弥)

[ガズー編集部]