F1経験のない僕みたいな若手にも、道を作ってあげたいと思った ~パドック井戸端シリーズ 国本雄資選手編~

7月に入り、一か月のインターバルを経て国内のビッグレースが再開しました。スーパーフォーミュラ第3戦の富士では、公式予選でタイムが非常に拮抗するアタック合戦の中、ル・マン帰りの国本雄資選手が2番手以下を大きく引き離し堂々のポールポジションを獲得。日本に戻って来る前も、この時もそうでしたが、やっぱり海外の大舞台を経験すると人って変わるんじゃない?と、期待を込めた目で見ていたので、非常にうれしかったです。

ル・マン24時間では、残念ながら最後まで走ることはできませんでしたが、その経験値たるやご自身の人生にまでプラスになる要素は、計り知れないと勝手に推測していますが、さっそく、その予選のタイムに如実に現れ興奮。これは、ぜひ話を聞こうと思っていました。しかし、その富士では、レース結果がポールスタートながらマシントラブルに見舞われリタイアと悔しい結末。空気を読んで、お話を伺うのは次回へと持ち越しました。

迎えたSUPER GT第4戦菅生!事前テストが行われた日は、フランスではル・マン24時間が開催されていました。国本選手の駆る19号車 WedsportBandoh LC500 は、チームメイトの関口選手が2日間ひとりで頑張りトップタイムをマーク、本戦に備えました。その際に、海の向こうから飛び込んだ国本選手のTOYOTA GAZOO Racing 9号車リタイアの報に、チームの坂東正敬監督は、「俺がまた連れていってやる!と言いたいけど、それが出来ないカテゴリーだからなあ…」と、愛のあるコメントを寄せてくれました。メーカー同士の開発の戦場、LMP1クラスでなければ、本当に戦いの場を用意してくれるような気概のある人間だと坂東監督の事は思っているので、そんな一面を見られてちょっと良かったなと。普段わたくしいじられっぱなしですのでね。

話をSUPER GT菅生に戻しますが、予選は、今季、国本選手は初のアタックとなり関口選手から繋いだバトンで4番手を獲得。これは、攻めすぎて若干ミスをした結果とのこと。レースペースには自信があるので大丈夫という事でした。そこから、ちょっと近況などを伺って参りましたので、さらっとどうぞ。

――――WECという大舞台にチャレンジしましたが、クルマの違いの他に、漠然とですが“何が違いました”か?
国本:国内のカテゴリーでも沢山の方が関わって一緒にレースを戦っていますが、WECは更に…、とにかく人が多く、ドライバーも9人います。コメントもそれぞれ勉強になりました。クルマには、たくさんセンサーがついているので、走りも研究できたし、自分が疑問に思ったことを質問すると納得いくまで応えてくれるエンジニアもたくさんいました。とにかく自分に時間を割いてくれ、とことん分析してくれるんです。そこが大きな違いだったと思います。

――――やっぱり変わりますよね?というか、変わったと勝手に思っている!
国本:一昨年よりは、だいぶ変わりました。ロン毛時代よりは(笑)。

(昨年スーパーフォーミュラでチャンピオンを獲得した時の方が、変化が見られたかも?成熟した感じがしました僕が言うのもなんですが…。とチームメイトの関口雄飛選手談)

――――今、思い描いている目標って何でしょう?
国本:ル・マンにまた挑戦したいですね。クルマの走らせ方を把握し始め、チームのみんなともコミュニケーションを取り、やっといろんな事をわかり始めたところで、終わってしまったので、また出てみたいです。ただ、そんな中でも自分は悔い無くちゃんとやれることはやって来たと思っています。僕は終わってしまいましたが、日本に帰って来てから、役に立つことが沢山あるし、大変良い経験になりました。でもやっぱりもう一回!挑戦したいです!

――――GTの予選で行き過ぎてしまったというのは、WECのようなパワフルなクルマからの影響なのでしょうか?
国本:行き過ぎちゃうというのは、WECのクルマにはトラクションコントロールやディバイスがついているので、それを頼って自分はアクセルを踏んでいたので、国内では、行き過ぎてしまう部分があるんです。レースウィーク、徐々にあげていくスタイルの自分だったのですが、今は行き過ぎるのを抑えながら走っていますね。

――――英語が堪能なので心配はしていませんが、チームメイトの方とはどうでしたか?
国本:チームメイトの二人は、速いドライバーですし、経験豊富だし優しいし、いろんな事をたくさん教えてくれました。やりにくいとか全くなかったですよ。

――――SF富士のトークショーで緊張したと言っていましたが、前日とかやっぱり眠れませんでしたか?
国本:もちろんです!レース前は、寝られませんでした。というか、走るまでがとても緊張しました。F1を経験している中嶋一貴選手や小林可夢偉選手と、自分は全く違う立場です。日本のカテゴリーから行って頑張って、ここで結果残して、少しでも自分のような若手に道を作れたらと、そんな事も思っていました。あと、レース中に、自分のスティントでクラッシュするとか、避けたいと思っていましたね。でも、自分の仕事はちゃんとやって来られたと思っています。

――――また、ル・マン24時間出たいに決まってますよね~
国本:はい!また国内で、今、自分ができることを頑張って、WECに呼んでもらえるように精進しようと思います。この前のSF富士でも勝ちたかったです、あそこで勝つとまた違ったストーリーが産まれていたかもしれないですしね。

ありがとうございました!

チームメイトの関口雄飛選手も、世界3大レースに出てみたいと話していましたね。やっぱり感化されますよね。スーパーフォーミュラの方でもお二人良いライバルでもありますので、切磋琢磨して走り続けて欲しいです。

わたくし、こんな井戸端的立ち話をよくパドックでしています。興味深いお話、世に出して良いお話があったら、書いて行こうかなと思います。最後、国本選手とは二人の地元横浜の話で〆ました。野毛の飲み屋さんの美味しいとこ、教えてもらいましたよ(笑)。それでは、また!

(写真 折原弘之、テキスト 大谷幸子)

[ガズー編集部]