ドタバタ劇もひっくるめておもしろかった! ~スーパーフォーミュラ第4戦 観戦記~

スーパーフォーミュラ第4戦(8/19~20開催、ツインリンクもてぎ)へ行ってきました!昨年同様、今般と次のオートポリスの2戦に2スペックタイヤ(ソフトタイヤ3セット、ミディアムタイヤ2セット)が投入され、レースの流れがどう変わるのか?と言ったところが大きなポイントとなる大会です。結果、決勝時の気温も手伝ったようで、これまでにないバトルが生まれました。

(TEAM MUGEN ピエール・ガスリー選手)
(TEAM MUGEN ピエール・ガスリー選手)
(KCMG 小林可夢偉選手)
(KCMG 小林可夢偉選手)

まず予選日、ニュースになるほどの落雷があった関東地方、北関東、栃木県に位置するツインリンクもてぎも同様に雷雲が立ち込め、予選開始直前、辺りが一気に暗くなりました。すでに、ピットロードには、ソフトタイヤを装着したクルマが並び続々とコースイン。すぐに雨脚が強くなり、レインタイヤに履き替える為全車ピットに戻りました。しかし、レインタイヤも発熱するどころか、一気にヘビーウェットでコース上に留まることが困難に。結局、最初に履いたソフトタイヤのウォームラップが最速タイムとなる異例な事態でQ1を終えました。

(KONDO Racing 山下健太選手)
(KONDO Racing 山下健太選手)
(KONDO Racing ニック・キャシディ選手)
(KONDO Racing ニック・キャシディ選手)

その後、Q2、Q3はキャンセル。翌朝、再開というスケジュール変更。仕切り直しという言葉だと、全車がまたスタートできる訳ですが、Q1で既にグリッドの決まったクルマもあるので、また意味が違いますがそんな状況。しかも、チャンピオンチーム(P.MU/CERUMO・INGING)の2台が脱落と信じ難い状況。まさかの…でしたね。タイミングの問題でしたが、石浦宏明選手はライバルとの距離を保ちアタックしやすくするという盤石に進めた結果のQ1敗退との事でした。ランキングトップで臨むもてぎラウンドで、いきなり痛い。そうです、ここストップアンドゴーのもてぎでは、下位にしずむと抜きにくいので厳しいと誰もが思うわけです。まさか決勝があのような展開になるとは誰が予想したことでしょう。Q1だけでは予選成立にはならないようです。かと言って予選全部キャンセル、やり直しもない。ネットは自由な意見が飛び交っていたと聞きました。話題になるのもまたよし…と思ってみたり。

そして迎えた朝、夜中も雷鳴が轟いていたことを思い出しつつサーキットへ到着。タイヤの皮むきに忙しくしていたチームがほとんどの10分のフリー走行後、Q2、野尻智紀選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACINGDOCOMO DANDELION)、小林可夢偉選手(KCMG)、山下健太選手(KONDO RACING)、Q3、山下選手、小林選手、野尻選手がトップ3と珍しいけれども2セッションともに同じ顔触れで予選終了。最終的に、今季安定した速さを誇る大学生ルーキー、山下健太選手がポールポジションを獲得しました。

予選トップ3会見が興味深かったですね。手探りのままのタイヤの状況。ロングの経験も誰もないですし、どれだけソフトタイヤが持つのか決勝で走ってみないとわからない…。3人の“わからない”は共通の意識。しかし、わからないままの方がおもしろいと答えたのは、小林選手。タイヤのことをわかりきっていたら、トップチームのトムスとかが来そうだから、これはこれで楽しいとコメント。経験値のあるチームは、データも沢山あるし確かに有利かもしれません。だから、未知のタイヤを使ってのレースは面白くなるわけです。野尻選手はもう少し積み上げてからレースをしたい、これで良いのか?と若干疑問も投げかけていました。

悪天候ゆえのスケジュール変更で、フリー走行も10分だけになってしまったのは、仕方なく、これもみな同条件ですしね…。タイヤよりもスタートかな…と山下、小林両選手、エンジニアの指示に従って走ると野尻選手。そうそう、小林選手は、ソフトタイヤは、持つと思うとコメントし会見は終わりました。

この“わからない”という会見、私は逆にわかりやすかったですね。今、現場で何が起きているのかが把握できました。わからないのは、この3人のドライバーだけではなく、この“わからない”ということで、各陣営の戦略が別れて来る訳です。きっとこれが、主催者側の期待した事なのかもしれません。これまでと違ったレース展開、動きのあるレースをきっと見せたいに違いありませんからね。

実際、レースでも各陣営のスタートのタイヤ選択がソフト・ミディアム半々だったり、2ピット作戦を取ったチームがあったりといつもと違いました。何が正解なのかわからない、そんな中で、決勝が始まりました。

レースの内容は、こちらのハイライトをご覧くださいませ。
[動画]決勝ハイライト
https://www.youtube.com/watch?v=UPxhBiHX29Q&feature=youtu.be

(KONDO Racing 山下健太選手 グリッドにて)
(KONDO Racing 山下健太選手 グリッドにて)
(KCMG 小林可夢偉選手 グリッドにて)
(KCMG 小林可夢偉選手 グリッドにて)

決勝は、スタートからソフトタイヤで大量リードを図りトップを快走していた小林選手。ピットのタイミングが謎でしたが、どうも無線が壊れていたという話。そして、入りたいけれども、ピットに入ったのにタイヤがなかったら困るので…と、じっとBOXの指示を待ってピットに入ります。その際、作業ミスがありタイムロス、その間に優勝したピエール・ガスリー選手(TEAM MUGEN)に先行を許してしまいます。小林選手は、その様子を目の前で見ていたリポーターの現役ドライバー、松田次生選手のミスに驚く顔をみていたら、笑ってしまったとのことでした。レースが終わってからは、ご本人、思うことはあれどサバサバしていたように見え、どれもこれも全部が小林選手らしい結末と感じました。チーム(KCMG)のフロントロースタートも初めてですし、2位表彰台はこれまでで最上位。タラればを言いたくなりますが、次に期待します。チームにも、ドライバーの頑張りが強力に伝わっているはず。チームから謝罪があったようですが、いつか先日の話も笑い話にできるようみなさんに頑張っていただきたいですね!きっと、小林選手とチームのまだスタート地点だと思いますから。

(TEAM MUGEN ピエール・ガスリー選手)
(TEAM MUGEN ピエール・ガスリー選手)

ガスリー選手、おめでとうございます!初めて走るサーキットとのこと。グローバルスタンダードは、格が違いますね。ぼちぼち優勝の声を聞きたかったし、ご本人も…だったのではないでしょうか。

(SUNOCO TEAM LEMANS フェリックス・ローゼンクヴィスト選手)
(SUNOCO TEAM LEMANS フェリックス・ローゼンクヴィスト選手)

そして、同じくグローバルスタンダート、3位のローゼン・クヴィスト選手(SUNOCO TEAM LEMANS)も、なんと2戦連続の表彰台!そしてランキングは、3位に上がりました。彼も素晴らしい経歴の持ち主でありますし、一見おとなしいけれど、大注目なドライバーです。覚えてくださいませ!

そして、もうこの人に「賞」があったらあげたい。ランキングトップでレースウィークを迎えたというものの、まさかの予選17番手スタートとなった石浦宏明選手。ご自身、予選結果には心が折れかけたとのことですが、誰よりもエンジニアが諦めなかったとのことです。決勝、ファイナルラップは、3位争いに加わるほどまでに、大きくポジションを回復しチェッカーを受けました。これ、ありえない…(失礼)、ストップアンドゴーのもてぎで、しかもドライで…。みなさんも驚きませんでしたか?

(P.MU/CERUMO・INGING 石浦宏明選手)
(P.MU/CERUMO・INGING 石浦宏明選手)

もちろん諦めずにエンジニアと共に頑張りましたとのことですが、ご本人の口から、結果タイヤのおかげでおもしろいレースになった…とコメントがありました。以前、中嶋一貴選手(VANTELIN TEAM TOM’S)、小林選手と共に、スーパーフォーミュラの運営団体、日本レースプロモーションに“タレるタイヤ”を作って欲しいと嘆願に行ったことがあるとのコメントも出てきました。彼らは、自分たちのレース以上に、このカテゴリーを大切に、そして盛り上がることに期待をしていることが伺えました。最後に勝つのは自分だと考えるのは当たり前のことですが、プロセスとしてレースを魅せたいと考えた行動でしょう。運営団体さんも頑張っていらっしゃいますし、わたしスーパーフォーミュラも大好きなので、しっかり見届けていきたいと思います。

今大会、2スペックタイヤでジェットコースターのような週末を送った石浦選手は、スキルと意地と、タイヤをうまく利用しランキングトップを保持です。クレバー!手堅い!とにかく強いね!という印象を大きく抱きレース終了です。

さて、サーキットは「ツインリンクもてぎ開業20周年」のイベントなどもあり、いつもと雰囲気も若干違いましたが、雷雨からの残念もあったわりに具だくさんで、純粋にレースが楽しいスーパーフォーミュラもてぎでした!

次戦、スーパーフォーミュラ第5戦は、9月9日(土)、10日(日)オートポリス(大分県日田市)で開催されます。今からとても楽しみですよ! 長々すみません!それではまた!

(写真 折原弘之、テキスト 大谷幸子)

[ガズー編集部]