名門チームの再生はスタートしたばかり… ~スーパーフォーミュラ第5戦 オートポリス~

スーパーフォーミュラ第5戦が、オートポリス(大分県日田市)で9月9日(土)~10日(日)に行われ、SUNOCO TEAM LEMANS ローゼン・クヴィスト選手が2位、チームメイトの大嶋和也選手が3位とチームは2台をポディウムに送り込みました。ワールドクラスのドライバーとシリーズ復帰のドライバー、新監督も迎え2台ともにエンジニアを新しく出迎え、新体制のもとで出した結果に、チームは大いに沸いた。名門チームとしての期待値も大きいので、それに対してここ数年結果が低迷していると感じるが、チーム立て直しに頑張っている中での結果だった。

思えば、7月の第3戦富士、ピットに見慣れないお顔の方を発見。チームに伺ったところ、エンジニアを新しく出迎えるとのことだった。シーズン当初で一新したが、さらにシーズン途中での思い切った人事には、正直びっくりだったが成績考えると納得もしたし、リスクもあるのではないかと感じていた。成績を出したい願望はどこのチームにもある。さて何をやれば良いのか?人なのかマシンなのか…。何が正解なのか私は正直わからないけれど、今、前へ進む力を止められない雰囲気もあるのがこのチームでもある。今般、優勝した訳ではないが、レース後、片岡龍也監督、スティーブ・クラークエンジニア、ライアン・ディングルエンジニアに少しだけお話を聞いてみた。

片岡龍也監督

Q:いきなりですが、泣いていましたね
A:フェリックスは、これまでも上手くいっていたので良いのですが、大嶋選手がなかなか結果を出せず苦悩していました。前回もポイントが獲れそうでしたが、最後は上手くいかなかったりして、やはり、この自分のポジション(監督という立場)からすると、2台が上手くいって初めて喜べるところもありますから。

Q:チームががらりと変わりましたが
A:今年、チームの体制も一新したので、逆にチームとしての力も無い中で成績が出ていたのは、フェリックスという良いドライバーがいたからです。そして、それに続く形でチームの力も上がって来ました。大嶋選手も自分の立場というものを意識しているだろうし、今回、やっと結果に結びついて一安心できました。今回みたいなレースができて良かったです。

Q:これでチームにも自信がつきますね
A:チームとしてはもちろん、優勝したわけでもないのでウカウカしてられないですが、今年始まった頃のどうしようもない状況から、よくぞここまで中身を変えながらまとまって来たなと思います。2台が上位へ行けたことで、チームとしても認められたと思っています。これまでは、チームの中でもフェリックスが速いと思われていただろうけど、2台が揃ってリザルトが出せたというのは、チームの力だと思うので、ここから気を緩めることもなく行きたいですね。

Q:チームを変えようという意識が、スタッフのみなさんからものすごく感じますが
A:変えようと思い過ぎて、どこまで変えれば良いのか分からないので、ある程度で止めなければならないですね。今は、まさに“変わるタイミング”になってきているので、今後、上手くやっていけたらと思います。結果が出てきているという事は、一つの証明ではないかと思っていて、監督が来てから以前よりひどくなっていると思われたくないので、自分もチームの歯車の一つとなり、上手く機能するといいなと思っています。予選が遅いという課題もあるので、まだまだですが、とりあえず一安心ということで、次戦以降の残り2戦を頑張りたいと思います。

スティーブ・クラークエンジニア

Q:いらしてから、3戦連続のポディウムなのですが、何が変わったのか?どんな魔法をかけたのか教えてください
A:何もしていませんよ。ただ僕がラッキーなだけです。第3戦の富士の時にフェリックス(ローゼンクヴィスト選手)に来てくれと言われて日本に来ました。話があった時に、すぐにでも行きたくて、チームがどのような動きをしているか見たかったです。レースウィークにチームの様子を見ていたら、すごく良いチームと感じたので、このチームと一緒に働きたいと思って、今に至ります。

Q:実際やってみていかがですか?
A:8号車(大嶋和也選手)のエンジニアをしながら、チームエンジニアもしていますが、何が一番怖かったかというと、「言葉」ですね。例えば、オペレーションの言葉です。日本語が話せないので、チームの役割の話やセットアップするにあたっても、そこの部分に「言葉の壁」というものがあり、怖さがありました。しかし、やってみると徐々に上手くまわって行っているところもあって、7号車、8号車がほぼ同時にいろいろなものを開発できるという利点がありました。ここまで、常に良い状態でレースに臨むことができているので、来て良かったと思っています。

Q:チームからリクエストがあったりと、背負うものが多そうに思いますが
A:チームからのリクエストはいろいろありますが、特に7号車に関しては、コミュニケーションは問題ないので、リクエストがあってもそれに関してディスカッションをしたうえで、最終的に僕は新たにOKを出しています。8号車もコミュニケーションは問題なく、これからどんどん頑張っていきたいと思っています。

Q:ヨーロッパに比べて日本のモータースポーツ、チームはどうですか?
A:まだこのチームにしか所属していたことがないので、難しい質問ですねえ。ヨーロッパのチームと比較すると、チーム自体はあまり変わりません。しかし、人やお金の動きがF1は1000人以上の人たちがいるので、基本アマウントが違いますね。それと、僕はここに来て本当に驚いたのは、日本のレースのレベルの高さです。特にSUPER GTは、すごくハイレベルだと感じています。僕はヨーロッパでレースをしています。去年まではDTMに参戦し今年はGTの低いクラスをやっていますが、本当に素晴らしいと思いますね。あと、このチームに関しては、本当にいい人が多いので、そこはすごくありがたいと思っています。

ライアン・ディングルエンジニア

Q:チームがどんどん良い方向へと進んでいますが
A:そうですね、すごくオープンな感じで、私たち二人(エンジニア)とチームが把握している情報すべてをシェアして、お互いにレベルアップできればと感じています。また、クルマのセッティングやドライバーのコメント、2台が一つというイメージがあるので、そのように進むように上手くやって行きたいと思っています。フェリックスも大嶋選手も素晴らしいドライバーですから、そのドライバーたちのフィードバックから良いクルマが造れるだけではなく、チームの中で監督や全員が同じ考えで同じ方向へ行くのがすごく大切ですね。

Q:まだシーズン途中ですが、ここまではどんな感じで歩んで来られましたか?
A:今シーズンの開幕戦から、私は初めてスーパーフォーミュラの仕事をしました。その前にF3で3年経験を積みましたが、そこまで経験が深いわけではないんです。他にも、今季からやっているSUPER GTは初めてです。浅い経験の中で、あまり慣れていなく方向が定まっていないため、鈴鹿の開幕戦は非常に勿体ないことをしました。第2戦岡山の時から考え方が変わっていたので、それからいい方向へ初めの一歩を踏み出しました。そして、富士からは、初めてのトップカテゴリーのエンジニアとして抜擢され、プレッシャーでもありましたが、今はとても楽しいです。

チームにとって、フェリックスを迎えた事は正解でしたし、スティーブさんも経験があり、考え方もすごく合います。例えば、シンプルな事柄は正しくやることが大事で、何かをやる前に先に理解をするという科学的なアプローチで仕事をするんです。スティーブさんがF1でやっていたから、今もそういう風にやっているのではないかと思います。

Q:仕事が楽しいのは素敵ですね
A:9月は、GTがなくスーパーフォーミュラだけですので、それはそれで集中できます。今は、環境に恵まれ楽しく仕事をしていますね。ここ(オートポリス)から帰って、来週の火曜日からまた菅生戦に集中します!

みるみるチームもステップアップしているのをながめているが楽しくもあり…。苦悩しているチームは沢山ある。頑張っているのも当然このチームだけではない。前へ進みたいという力のボリュームなのか。いつか、近い将来、チャンピオン争いに真正面から加わるチームとなって欲しい。そして、この高度なことを沢山やっているトップカテゴリーも盛り上がって欲しい。切なる願望…。

(写真 折原弘之、 テキスト 大谷幸子)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road