0.5ポイント差の攻防、SFチャンピオン決まる! ~スーパーフォーミュラ最終戦~

10月21日(土)、22日(日)、スーパーフォーミュラのシリーズ最終戦(鈴鹿サーキット)。台風の影響で予選が途中でキャンセルに、そして決勝もキャンセルされるなど、イレギュラーなレースウィークを過ごしました。そして、予選Q1終了を持って石浦宏明選手(P.MU/CERUMO・INGING)の自身2度目のタイトルが決定!2年連続P.MU/CERUMO・INGINGのチームチャンピオンも決まりました。

今般、自力優勝でタイトルを獲得できる可能性のあるドライバーのみをカウントすると4人でしたが、大きな番狂わせのない限り、事実上ランキングトップの石浦宏明選手とピエール・ガスリー選手の一騎打ちと見られました。そして、そのポイント差は、0.5。わずかなようでこれが非常に大きなものでした。

GP2チャンピンという申し分ない肩書からスーパーフォーミュラへ参戦し、シーズン途中でF1へ昇格の決まった大型ルーキーのガスリー選手。前戦が終わった頃から今回の最終戦とバッティングするF1アメリカGPへの出走の可能性が高い報道が出ていました。それが、レース直近になった頃から鈴鹿に来る!という報道に変わり、個人的には直接対決が見たいので、来て欲しいという気持ちでエントリーリストの発表を待ちました。

燦然と輝く名前を見た時は、正直うれしかったです。F1に行ってしまったら、日本のレースにもう興味がないのではとも思ってしまったからです…。いかなる働きかけがあったか、ご本人の意志にせよ、鈴鹿に来てくれるんだという事実だけで、これは盛り上がると思いましたね。

そして、鈴鹿入りする前に発生した「台風」は、最終戦に大きく水を差してくれました。土曜日の予選はできるかも?しれないけれども、日曜日は無理という見方が大半。天気予報を見ればみるほど、また現地入りして、それは雨雲レーダーに負けないくらいの確信に変わっていきました(笑)。早速、土曜朝のフリー走行は、思いの外、雨量があり赤旗が相次ぎましたね。

運営側も最善の策を練ることに苦慮していたようですが、安全を考えた上で発表された公式通知には、いろんなパターンが想定されていました。下記、公式通知ご参照。

〇2017-10-21 10:01:34
全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦 選手権のポイント付与に関しての発表
http://superformula.net/apf/ap/NList02.dll/?id=4176&code=NS023012

今回の運用は、悪天候により何もかもイレギュラーです。安全を考慮した上で考えられている事ですので、当然です。

そして、この現状で重要なのは、ポールポジションに付与されるポイント「1」。予選がフリー走行で代替される場合も想定されるので、誰がこの1ポイントを取ってしまうのか、注目でした。よって、フリー走行から全員フルアタック!これまでにない展開です。川が出来てしまっているコース上をアタックするのですから、コースに留まることも難しい。やはり水煙で見えにくくハイドロに乗ってしまうクルマもあり、セッション序盤からコースアウトするクルマが続出しました…。

どうにか、セッションが途中でキャンセルされることはなく終了。20分以上走行が継続したので、予選の代替になる可能性も出てきたフリー走行のリザルトは、生きています。ホンダ勢がトップ3、3位ガスリー選手、4位石浦選手でした。石浦選手のひとつ上にガスリー選手…。石浦選手、これはもう心中おだやかではないはずです。

いつも堂々、落ち着いている石浦選手ですが、この時の心境を次のように語ってくれました。
「フリー走行の結果が予選結果になる可能性もあり、しかもちゃんと走ったタイムではないものでしたので、このまま採用されるとマズイと思いましたね。今シーズンで一番自分の心が落ち着かなく、鎮められずにトレーラーにこもっていました。トークショーにも出演しましたが、この事がずっと頭から離れませんでした。午後になり、予選が始まった段階で、朝の走行の結果は採用されないことになりましたから、それでいったん落ち着きを取り戻しました」

予選前のコースインスペクションは、石浦選手とガスリー選手も連れてコースに向かっていました。ちょうど戻って来たところが、モニターに映し出されていましたが、ドライバーの判断も考慮にいれ運営していることを、今さらながら初めて知りました。ただ、石浦選手は、是が非でも予選をやりたいはずですので、冷静な判断が自分でできるのだろうか?と、トークショーで冗談っぽく話していましたが。

そして、公式予選が開始されることが決まり石浦選手のピットに伺うと、スタッフは、いつも通りですが走り始めると空気がさすがに張り詰めていました。赤旗が続き、午前同様なかなかアタックが出来ないでいたので、見ている私の方が焦りました。やっとグリッドの先頭につきアタックを開始すると、トップタイム。すぐさま、アンドレ・ロッテラー選手がタイムを塗り替えポールを奪取。これに続き、ガスリー選手も前車と間合いをあけてアタックに向かいましたが、残念ながら1コーナーでスピン。これで呈示された赤旗でセッションは終了。そして、残りの公式予選も終了となりました。

ここで、1点を取らないとタイトルを引き寄せられないガスリー選手の渾身のアタックは悲しいかな、一瞬で結末を迎えてしまいました…。最速をマークしないと得られない1点が、今季のタイトルを決めたと言っても過言ではないでしょう。ガスリー選手は、会見で“この結果を受け入れ難い”と述べていましたが、いろんな想いが渦巻いたことでしょうね。

石浦選手、予選時の心境は、「予選の時も、凄くうまいドライバーでも飛び出してしまうくらいリスキーなコンディションでした。もし、自分があれをやってしまったら…。予選は、当然Q3までやるつもりでいましたので、Q1で飛び出したら、Q2へ進めない、しかし、飛び出してはいけないけれども、前に行かないとタイトルは無い。そんな独特なチャンピオンシップに関わる人間にしか味わうことのない、かなりの緊張感を持ちました。ライバルはスピンしてしまいましたが、自分はしっかり自分自身をコントロールして4番手になることができました。ライバルの前に居ることで、チャンピオンシップを勝ち取ったと思っています。ライバルの前にいるということが重要でしたので、この結果は自分の中で良しとしました」

予選に入ってからは、いつもの冷静な石浦選手でしょうか。スピンするドライバーがたくさんいた1コーナーでのハイドロは、朝からの流れでドライバー全員があそこで起きるとわかっていたはず…とも話していたので、その判断力、メンタルは一歩先を行っていたのかなとも思います。そして、赤旗の中、集中力を保ち続けるレーシングドライバーのみなさんの能力のすごさも改めて感じました。

予選後、すぐに決勝レースのキャンセルがアナウンスされました。予選時に決勝以上の緊張感を味わった矢先のあっけない幕切れ、しかし、想定内でもありましたね。この決断は運営側の英断だったのは言うまでもありません。そして、チャンピオンが決まった瞬間、SUPER GTではチームメイトの立川祐路監督は、キッズピットウォーク中だった石浦選手に、そっと握手して消え去ったそうです。会見でエピソードが披露されていましたが、これもまたこのチームらしいと思いました。

最後まで、0.5ポイント差でタイトル獲得にはならなかったガスリー選手。会見では、日本で得た経験やスタッフなどへの感謝の気持ちをジョークを交えながら話していました。ルーキーながらチャンピオンシップにからむ大活躍。やっぱり大物です。会見で、こんなに素敵な笑顔を見せる方って、今までいましたっけ? ルーキーオブザイヤーの肩書が小さく見えるほど、大物。今後のF1での活躍にも期待したいですね。

レースキャンセルは恨まず、台風を恨みましょう! 今シーズンのスーパーフォーミュラ、これにてお終い! 来季も素晴らしい戦いに期待します! それでは、また来年!

(写真 折原弘之、テキスト 大谷幸子)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road