LEXUS LC500が戴冠! SUPER GTシリーズ 幕を閉じる

11月11日(土)、12日(日)、SUPER GTシリーズ最終戦が、ツインリンクもてぎ(栃木県)にて開催されました。タイトル争いは、GT500クラスは、今年デビューをしたLEXUS LC500が戴冠、Keeper TOM’S LC500 平川亮/ニック・キャシディ組(37号車)が史上最年少の23歳コンビでタイトルを獲得、GT300クラスは、グッドスマイル 初音ミク AMG谷口信輝/片岡龍也組(4号車)のベテランコンビが獲得でシリーズに決着がつきました。

GT500クラスについて思ったことを少々。シリーズを席巻してきたLC500がタイトルを手中に収めましたが、最終戦は若干ひやりとする展開。最後の予選、GT-R勢が速かったですよね。特に、MOTUL AUTECH GT-R 松田次生/ロニー・クインタレッリ組(23号車)! ん?何が起きた?と思うほど。2番手をコンマ9秒も離してコースレコードをマーク。各セッションで、タイムを削り取っていく様は、鳥肌ものでした。

今般、23号車は自力でのタイトル獲得の可能性はなかったものの、ポールポジションをまず決め、逆転タイトル獲得へ向けその可能性に迫りました。全力でタイトルを獲りに来たニスモ、さすがでしたね。惜しくもタイトルは逃すこととなりましたが、最終的に、ポイントランキングは、トップと2点差のランキング2位!で、レクサスはギリギリ逃げ切ったカタチとなりますね。

あの勢いのわりに、2点差?と思ってしまうのは、何度か書いた気もしますが、レクサスが勝星を分け合った事でライバルに水を開けることができなかった事が最大の理由かもしれません。どのクルマも速く、シーズン中、どれが勝ってもおかしくないと、エンジニアたちが口を揃えて言っていたのを思い出しました。それに、新車の開発は、TRDとチームのエンジニアを交えて全体で行った訳ですからね。どれも速い訳です。

また、レクサスの同士討ちもありました。これは、同じポジションあたりにいるのが常に身内で、どのクルマも速かったということでしょうか? シーズンの序盤は、レクサス最大のライバルは、レクサスだったのでは?と思います。

星を分けあったことから、一人勝ち(ちょっと言葉が良くないけど…)のLC500 は存在しませんでした。WAKO’S4CR LC500 大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ組(6号車)は、優勝こそなかったものの、ポイントを積み上げていくことでランキング2位で最終戦に臨みました。LC500 6台中、4台が優勝を獲得していますが、そんな中で37号車が2勝した事は、チャンピオシップに大きく影響しました。タイラウンドの優勝で、タイトルを引き寄せたことは確実ですが、終わって見ればシーズンで2勝を挙げてもタイトルを逃す可能性もあった訳ですので、勝ち続けることも必要なことだったかもしれませんね。もちろん終わってみてからの感想ですけどね。

ここでちょっと思い出してみてください、開幕戦の決勝を。LC500の6台が上位を独占するこれ以上ない結果でシーズンが幕を開けましたが、さて今回の最終戦でウェイトを下ろしてみたら、3メーカー入り混じったリザルトになりました。開幕でのアドバンテージは、どこへ行ったのやら? 各メーカーの開発が、そのギャップを縮めしまったのでしょう。どの程度シーズン中にできるのかは私はわかりませんが。開発に終わりはなく負けっぱなしでいる訳がないですよね。もちろん、そんな技術競争があってこそ、SUPER GTはおもしろい訳で…。GT-Rの逆襲には、とにかくびっくりしましたし、大人気のクルマですので、最終戦の集客にも結び付いたと言っても過言ではないと思います。

つくづく思うのは、もてぎが得意なWAKO’S4CR LC500 大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ組(6号車)の走りも見たかったです。タイトルに一番近い3台(6号車、23号車、37号車)の戦いで魅了して欲しかったというのが本音。23号車は、予選の速さを見る限り逃げ切るだろうとは思っていましたが、何が起こるかわからないのがレースですので、6号車が手負いのクルマではない状態で見たかったね。でも、これも“レース”なのかな?

立川祐路/石浦宏明組 ZENT CERUMO LC500(38号車)が、予選でQ1落ちしたものの、決勝では、3位表彰台というのもさすがと思いました。決勝、めっぽう強いですね。レースは、終盤、前後のタイム差が開いてバトルは減りましたが、しっかり37号車を守ってくれていた気がします。最終戦でのワークス最大の仕事をしたと…。この38号車も、二人でコンビを組んで、毎年タイトル最有力候補と思っていますが、なかなか届きませんね。来季、期待していますからね。

長年現場にいると、業界には応援している方がいっぱいいるというか、どのチームも頑張れ!なスタンスだけど、今回チャンピオンになった37号車のチーフメカは、私にとって弟みたいな存在(めちゃ個人的な話ですが)。トムスの37がチャンピオンになるって、これまでのチームの歴史を振り返ると、私の中では?スゴイことなんです。37がエースになった日ですよあの日は。チャンピオンメカの勲章がついて良かったとつくづく思いました。

他チームのメカニックたちも真っ先に37のメカニックを称えに来たりと、その瞬間はとても素敵でしたね。もちろん、裏方の頑張りはどのチームも一緒です。手なんか誰も抜かないしね。ドライバーの命を預かっている訳だから。でも、総合力で勝つのが、SUPER GTだから、クルマを仕上げるメカニックたちの存在も大きいわけで、たくさんの拍手を送りたいですね。おめでとうございます!

そうそう、23歳の史上最年少チャンピオンコンビということも忘れてはなりません。わたくし的に、よくぞこの二人を組ませてくれた!と思います。昨年のキャシディ選手は、36号車でGTデビューということもあり、レースウィーク、伊藤大輔選手(現在は、監督)主導で動いていました、私が現場で少し見る限りですが。まだ新人だからねと関谷監督も言っていました。一年、SUPER GTを学び、今季は、エースナンバー36に中嶋一貴選手が復帰したこともあり、37号車へチーム内で移籍。結果的にこれが大当たりした訳です。チームメイトの平川選手とキャシディ選手とのコミュニケーションは元々ばっちり。それは、昨年の現場でもクルマは違えど、二人で話している姿を良くみました。トムスは、2台体制でみんな英語が堪能ですので、4人で話したり移動するチームでもありますけどね。同世代というのは、物事に対し感じる温度も近い気がしますから、相性さえ良ければすぐに心を許しあえる存在になるのではと思います。もちろん速さのある二人ではありますが、若さが放つ可能性って、すごいですね!

しかし、若い才能を育てるにも、限られたシートの中で…ですのでなかなか難しいですが、この二人の起用は、今後他のドライバーへも良い影響もありそうだし、もっともっと才能のある若手をガンガン起用して欲しいと業界全体に思っています。それは、世代交代という訳ではなく、ベテランも長く長くドライブしてくれればと。排除する必要はないです。ベテランの巧みなドライブテクニックで、若手を魅了して欲しいし、やっぱりお手本となるべきことは、現役のまま見せて欲しいですよね。それが生きた勉強になると思うんだ。

来季も切磋琢磨したシーズンが待ち受けていると思います。あのワクワクと感動まで、シーズンは少しお休みとなりますが、ストーブリーグに注目しつつ、開幕を待ちたいと思います。最終戦は、若干寒かったけど、青空の元で戦う姿が見られて良かった…と、心から思うわたしでした。

写真は、最終戦は、レースを盛り上げるコンテンツがいっぱいでした。DTM(ドイツツーリングカー選手権)から3台が来日し、一緒にデモランした様子などもご覧くださいね。DTMとの交流戦の実現も今から楽しみです! そうそう、F2戦闘機ももてぎ上空を展示飛行しました。何より天候に恵まれた最高の最終戦でしたが、終わってしまうとやっぱり寂しいものですね。それでは、また!

(写真、折原弘之 テキスト、大谷幸子)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road