魅惑のGT富士は、人の魅力にやられました… ~スーパーGT 現場レポート~

スーパーGT第2戦富士、終わりましたね…。寂しいね。毎年大盛り上がりの歩くのも大変なレースなのですがね、イベントも沢山展開のぎっしりスケジュール、どれも押さえきれないのが常なのがGT富士。そんな富士を振り返りますね。

(ジェームス・ロシター選手が撮ってくれたジェンソン・バトン選手)
(ジェームス・ロシター選手が撮ってくれたジェンソン・バトン選手)

予選日朝は、風の音と雷で目が覚め…。ホテルの駐車場のクルマに乗り込む時点で、雨を全身に浴びました。サーキットの駐車場からメディアセンターに向かう際に、雨はほとんど止み風だけ。どうなるんだろうと思っていたら十八番(おはこ)の富士ウェザー、霧が立ち込め公式練習キャンセルという事態。安全を考えたら仕方ないですね。しかし、ここで興味深い、変則スケジュールへと変更になりました。ポジティブに捉えることで楽しさも増えるという。

午後の晴れ間、30分の公式練習と公式予選は20分間の1本勝負。ドライバーの縛りナシと決定しました。準備の出来ているピットが動きます。公式練習が始まってからは、ほぼどこのピットもだと思いますが、予選アタックを担当するドライバーがひたすら走り予選に備えました。

予選一発勝負というのは、わたしは大好き。過去にもそんな時代がありました。ただ、予選を担当しないドライバーが、時間を持て余してしまうんですよね。だからというか理由は不明ですが、ノックダウン方式へと予選は変遷を遂げ二人でアタックするようになりました。今回は、イレギュラーね。

(予選を終え、インタビューを受ける立川祐路選手と石浦宏明選手)
(予選を終え、インタビューを受ける立川祐路選手と石浦宏明選手)

迎えた予選は、一番近道を知っている富士マイスターの38号車立川祐路選手が、23回目のポールポジションを獲得しました。盤石な展開に驚きます。富士と言えばと言っても、クルマが変わる年もあるし、同じクルマでも毎戦変化を遂げている訳だし、ウェイトだって違ったり、天候で気温と路面コンディションは違う訳だし。GTカーはさまざまなデータを基に人間が走らせていますが、立川さんは人間。どうしたら、最速ラインからポールとなるのでしょう。サーキットレイアウトだって、2005年に変わっているのにね。偉業に似合わないチープな言葉しか出て来ず、情けない…すみません。

(坪井翔選手です!お顔覚えてくださいね!他にも、F3で2連勝中です!)
(坪井翔選手です!お顔覚えてくださいね!他にも、F3で2連勝中です!)

さて、翌決勝日、見事な五月晴れでした。そうでなくちゃね! そして決勝は、もう彼に尽きますね。そうですよ、坪井翔選手!レクサス39号車の小林可夢偉選手がWEC開幕戦で不在の為、大抜擢された若手ドライバー。今季は、GT300クラスの25号車にエントリーという、代役だけど同じカテゴリーに参戦しているGT現役ドライバー。これは、彼の才能にさらに機会を与えたいというメーカーの考えではないかと思うのですよ。借り物競争(失礼)にしては、ありえないですよね?何も走ってるコを持ってこなくてもと、決まった時に思いました。しかし、よく考えたら違った…。

(加藤オーナーの横でレースを見守る坪井選手。決勝レース中のピットにて…)
(加藤オーナーの横でレースを見守る坪井選手。決勝レース中のピットにて…)

昨年、GT300クラスにRC Fで参戦。中山雄一選手とコンビを組んで2勝をあげました。スーパーGTデビューのシーズンで、タイヤもブリヂストンと、言い訳できない恵まれた体制で勝つことは、若い彼にとってはプレッシャーだった?と思います。大人の中でプロとして頑張る若さを見て来ました。いつも表情が緊張しているなーってね。今回も、ピットでレースを見守る彼は、肌けることなく、きっちりレーシングスーツを着たままで、サードの加藤オーナーの横に座っていました。

そして、レースが終わってからの関係者の言葉から、さらに彼の素晴らしさを実感することになった私。ホンダさんでは、牧野任祐選手がF2へ、日産さんでは、高星明誠選手がGT500へデビューと若手が活躍中。おふたりとも、スポット参戦でスーパーGTを走っていますが、牧野選手は2016年の鈴鹿千キロでいきなりポールポジション、高星選手は、千代勝正選手の代打で走り、鈴鹿で表彰台だったかな?そんな他メーカーの若手の活躍を称賛しつつ、うちにもすごいのがいると見ていたトヨタ関係者は、坪井選手の今回の姿を早く披露したかったようです。育成ドライバーに選ばれるからには、素晴らしい才能の持ち主だとは当然認識していますが、なーんだ早く言って!私はそう思いましたよ…。

(松田次生選手が、坪井選手を称えてますね。表彰式より…)
(松田次生選手が、坪井選手を称えてますね。表彰式より…)

速いし、混走で難しいGT300クラスの処理も落ち着いている…、そして、元F1ドライバーのヘイキ・コバライネン選手と同等に走って堂々の2位表彰台。もうかわいいお顔に頼もしい走り!いいじゃん! 代役ドライバーが、レギュラードライバーと遜色ない活躍をやってのけたので、テレビの解説も盛り上がったようですね。アメージングって。私は、坪井翔選手が、すごい翔選手と…ダジャレで(笑)。優勝記者会見で、23号車の松田次生選手が褒めたたえた事で、改めて大物ルーキーなのだと実感しました。来季の彼のシートの行方、注目ですね!

(黙とうが終わりピットに戻る故山田健二エンジニア夫人、気丈に振舞っていて泣けました…)
(黙とうが終わりピットに戻る故山田健二エンジニア夫人、気丈に振舞っていて泣けました…)

そして、予選日朝の事ですが、先般お亡くなりになった6号車エンジニアの山田健二さんを悼み、公式練習の前に黙とうが捧げられました。奥様のりかこちゃんが、元気なのが更に辛くてね…。黙とうをそっと見守りあとで声をかけようと思ったら、りかこちゃんの方から声かけてもらってしばし号泣。いろんな話をしました。でね、写真撮ってっていうんですよ。遺影でイェイ!だって。余計泣けるって…。

今年のレーススケジュールがタイトでキツイとわたし何度も書いていますが、やっぱり奥様としても、ケンジさんのカラダの心配をしていたそうです。病院にも行かれたりしていました。そして、ご夫婦は愛犬家でウェスティを2頭飼っているんだけど、そのワンコたちとお仲間と亡くなる直前に時間を作って出かけたのが最後のプライベートだったとか。ケンジさんの遺影となったワンコとの写真は、りかこちゃんがあまりに良く撮れていて「遺影にしようかしら?」と冗談で言っていたものなんだって。わんこを抱きしめるケンジさんが素敵な写真でね。冗談が本当になっちゃったと笑顔で話すんですよ。最愛の人を亡くした彼女にかける言葉がありませんでした。

(焦らずじっくり、いつかケンジさんに優勝をプレゼントしてください!)
(焦らずじっくり、いつかケンジさんに優勝をプレゼントしてください!)

そのケンジさんに報いるためにも、6号車のみなさんは勝ちたかったと思います。予選は2番手と、フロントロウにつけましたから…。今回は、レクサスがホームで勝てずに終わってしまいましたが、ぜひケンジさんに大腕を振るって報告できるレースを捧げて欲しいですね。焦らず行ってください。待っててくれるはずだからね。

あと、わたしカメラ買い替えたんですよ~!って長くなりましたので、お終い。絶賛練習中です…。GT富士の続きはInstagram(https://www.instagram.com/yucco_ne_san/)で。

では、シーズン入りレースが続きます!伝えたいこと全然書き切れておりませんが、第3戦の鈴鹿は来週末! 1000キロレースから、300キロレースに生まれ変わりました!西のみなさま、サーキットに来てね!お待ちしています!

(写真 ヘッダーの素敵な写真はフォトグラファーの折原弘之氏、残りの写真は筆者)

[ガズー編集部]