このシーンが見たかったの… ~ル・マン24時間の戦いを終えて~
まず、待ちに待った悲願達成の翌日…、大阪で大地震が発生してしまいました。被害に遭われたみなさまへお見舞いを申し上げます。天変地異、人間のチカラではどうしようもなく常に現在進行形です。我が故郷が東日本大震災に遭っておりますので、重々承知。日本列島、全国民、明日は我が身です…。ご自愛ください、そして、今一度、防災グッズの確認を!
さて、とうとう終わってしまいましたね、ル・マン24時間。20回目のチャレンジにして、トヨタガズーレシング、いや、“トヨタ”としましょう、チャレンジが実を結び栄冠を掴み取りました!おめでとうございます! 簡単には、取らせてくれませんでしたねル・マンの神様は。終わって、とにかく安堵…、これしかありません。わたしが、何をしてあげた訳ではないですけどね。一ファン目線で感想を述べさせていただきますよ。
2年前になりますよね、3分前の悲劇。あの時は、とうとうトヨタがル・マンを制す!と思い、パブリックビューイングに向かう時間すらもったいなく、24時間をつぶさに見届けたい私は自宅に引きこもってレースを見ていました。そしてあのシーン。誰もがあんなことが起こるとは予想していなかった…。チェッカー目前で、クルマが止まってしまい、中嶋一貴選手の悲痛な無線の言葉“No Power”…。
あの年のモータースポーツ業界の流行語大賞的な言葉でした。関係者もファンのみなさまも“No Power”というこの短いフレーズで、あのアクシデントを思い出す方も多かったのではないでしょうか。あの際に受けたダメージは、トヨタファンではなくとも、自然と涙が流れてしまうほど、大きかったと思います。神様は、なんてむごいことをするのだろうと思いましたね。トヨタはまだル・マンウィナーとしてふさわしくないという判断なんだろうね、神様的には…。そんなお話など嫌いなタイプのリアリストですけど、そう思ってしまいました。ゴール直前の祝賀ムードを見事に打ち砕かれました。現地の映像も一貴に送る視線が、みな悲しげだったのを記憶しています。
5年前にありがたいことに、仕事で現地に行かせてもらいました。あの時は、仕事が決まっただけで涙した私です。素直にうれしかったんですよ。初めてのル・マンでしたし。知れば知るほど、緊張もしましたっけ…。イマイチわかってなくて、ひとりであたふた大変だったけどね。公開車検も何もかも歴史的イベント。歴史がいっぱい詰まっていましたね。ル・マンウィークを隅々まで堪能させていただきました。
ずっとTMGのホスピタリティの中にあるオフィスで、ドイツ人の方々の中で10日間の取材に没頭。取材は、ほぼひとりでしたので度胸がつきました。夜は、せっかく来たのでホテルに帰りたくなく、そこに居させてもらって、いつのまにか一人で爆睡してましたが、夜中のサーキットも見てまわりました…。ほら、好奇心旺盛だからね。
あの環境、非常に心細かったけど中々体験できないので、今思えばありがたかったです。仕事も役に立っていなかったかもしれないけど、よくやったなと今は思います(笑)。ル・マン滞在期間中のトータルで、10時間くらいしか寝てなかったなと。最後のパリの夜もレポート書いて睡眠2時間で帰国でしたね。おまけで、帰国の機内では元気なお子ちゃまがそばにいて(汗)、10時間くらいのフライトなのに、1時間しか寝られなかった(笑)。お子ちゃまのお母さまが二人子ども抱えて大変そうでした。これも良い思い出ですが、ル・マンに取材に行かれる方は、間違いなく寝不足の中頑張っていると思います。お疲れさまです!でも、好きな仕事だから私は耐えられます…。きっとみなさんもね。
話がそれましたが、現地で一番心に残っていること。酔っ払いにプロポーズされたこと!ではなく…(笑)。確かマルセイユで漁師をしている方で、連れてきたお子ちゃまが日本の漫画の“ワンピース”のファンで…って、酔っ払いだらけですからね、24時間楽しそうですホント現地は…。
ココロに残っていることは、ウィニングランから戻った優勝車が、ピットロードを逆走して、表彰台の下にある優勝車のみが入れるパルクフェルメに行くシーンです。この旗を掲げていくシーン。
- (この2枚は、わたしの撮影)
5年前の写真ですが、コレをチェッカー後、ル・マンのピットの上にあるスタンドから見ていたんですよ。これ撮って、すぐ表彰台の下に走りましたが、ココ、急こう配で怖いスタンドです。決勝日は人がいっぱいで、階段にも人が座ってしまうので入ると身動きできません。最後くらいはモニターではなく、しっかり目で見ようと思ってスタンドの階段からチェッカーを拝み目でクルマを追っていたら、アウディのピットの前で一旦停まり、ドライバーとアウディの代表のヴォルフガング・ウルリッヒさんを乗せてGO。これが素敵でね…。代表が乗ってるから、ドライバーひとりはクルマと一緒に走っていたような?
今回、トヨタでそれが実現しました。パブリックビューイング会場で見ていましたが、感無量でした。始まる前から、どんな気持ちになるのか今回は想像がつきませんでした。伝統の耐久レースに参戦する訳ですから、きっちり準備もして来ます。しかし、コンストラクターの参戦がトヨタのみ。勝って当然の状況です。ただ、24時間、ノートラブルで走り切るのは、非常に大変でそんなレースで難しさも当然わかっています。
勝っても負けても何か言われるんだろうなあとスタート前は思っていました。優勝のチェッカーを受けてから、その気持ちは変わりました。あの中嶋一貴選手の表情が映し出されてからです。ずっとカメラが追ってくれました。やっと掴んだ勝利を喜ぶ顔は、非常に安堵感に満ちていましたね。ピットロードの逆走は、もっとゆっくりでもトヨタピットの前で停まっても良かったと思うぞ一貴!(笑)。
チームメイトのセバスチャン・ブエミ選手は、いつもSNSの更新がマメだから楽しみにしていました。感謝です、ほんと。ポディウムでもスマホいじってましたね。そして、フェルナンド・アロンソ選手!もうね、この方がトヨタに加入した際、え?って正直思いました。だったら、アンドレ入れてって…。ホントに走るの?ってね。勝ったら、これまでのトヨタの努力とかみんな彼が話題持ってっちゃいそうと危惧しました(笑)。終わってみたら、あの無線聞きました? 「You are the man! You are the man! アリガトウゴザイマス!」と言ってましたよね一貴に。謙虚じゃないか~!自分大好きじゃなかったのかと、うれしくなりました(笑)。アロンソ様、大物過ぎてどう表現したら良いのかわかりません。ファンの方、ごめんね、尊敬込みなのよ。
ル・マンウィークがスタートしたら、アロンソ選手とジェンソン・バトン選手の露出度は当然高く、アロンソ選手は毎日大きくクローズアップされていてちょっとヤキモチ妬きました(笑)。だから、中嶋一貴選手と小林可夢偉選手がラストスティントを任されたときは安心しました。他のドライバーのファンのみなさま、日本人的な考えでごめん!
特に一貴は、あのノーパワーの過去がル・マンウィナーに書き変わる訳ですから、絶対チェッカーを受けて欲しかったのです。あの出来事から2年かかりましたが、あの屈辱がトヨタを成長させ優勝に導いたと信じています。だからこそ、モリゾウさん!参戦を継続してくださり、優勝シーンを見せてくださってありがとうございます!撤退していたら、敗者のままだった…。
そして、このレースの難しさをファンの方も知っているのか、覚悟をしていたのに一貴のSNSには、ネガティブなコメントが今のところついておりません。管理しているのは私なのですが、心配をしていました。始まる前は、他でちらっと見ていました、「トヨタはルーザー」という海外からの書き込みをね…。
努力は裏切らない。信念を持って続けることが大事ですね。個人的に、エンジン担当の東富士研究所の小宮山さん!おめでとうございます!F1時代からそっと心の中で応援して、今では友だちとしてお付き合いしてくださる憧れの人なのですが、とにかくおめでとうございます!WEC富士での凱旋帰国、みなさんのお顔が拝めるかと思うと非常に楽しみです!めちゃくちゃ混みそうだね!これは絶対来なくちゃね!
以上、現地に行ってないけど感想文でした!
(写真:トヨタ自動車・大谷幸子 / テキスト:大谷幸子)
レポーター(お)ねえさん・大谷幸子
随時、クルマに関する様々なイベント・テーマでレポートしていきます!
[ガズー編集部]
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