近藤真彦監督、20年かけチームタイトルをつかんだ!最終戦もおもしろかったね! ~スーパーフォーミュラ第7戦 現場レポート~

スーパーフォーミュラ最終戦で、近藤真彦監督率いるコンドーレーシングのニック・キャシディ選手が2位、山下健太選手が3位表彰台を獲得、その結果を受け、2018年のチームタイトルを獲得しました!おめでとうございます!初めて獲得のチャンスが訪れたドライバーズタイトルは、ホンダの山本尚貴選手が逆転で獲得し、残念ながら逃しちゃった訳ですが、珠玉のチームタイトルだったのではないでしょうか?2位に、12ポイント差の圧勝で、シーズンを通して2台が速かったという事ですね。

最終戦は、思えばホンダの山本尚貴選手は、鈴鹿が大得意。そこがキーでした。予選、堂々のポールポジション。さすがです!これは、私、想定内でした(偉そうに言ってるつもりはないよ…)。だって本当に速いもの、特に鈴鹿。全く侮れません。そして、2番手に、山下健太選手(以下、愛を込めて健太で)。ニック・キャシディ選手(以下、愛を込めてニックで)は4番手。鈴鹿があまり得意ではない印象のコンドーレーシングですが、ここはかなり頑張りましたよね。練習走行の時は、やっぱり苦手なのかと思って心配になりましたが。

予選結果は、山本選手がそのまま勝てばチャンピオン。健太が抜けばニックのポジション次第ですが、ニックがチャンピオンの可能性が高かったです。予選のトップ3会見でも、予選3番手の中嶋一貴選手に、健太は「勝てばいいんだよ」と言われてましたしね。

健太が、「自分の仕事」と言っていましたが、決勝で山本選手を抜いて前に出る事を指しますね。自分の頑張りが貢献すると考えていたようです、もちろんそれもあります。その他に、チームとしては、キャシディ選手のポジションを考え、万が一、健太が前に出られたとして、山本選手をおさえる戦略も当然出て来るでしょう。タイトルへの近道なら、チームプレイはありでしょう。でもね、健太が自力で前に出るのは当然良い事なのですが、その“おさえる”という事は、ニックが彼(健太)の為にならない?だったかな…、そんなニュアンスの事を言い却下したそうです。

若くて、やんちゃなイメージのドライバーだったけど見直した!感覚は、非常にまともだったとチームから伺いました。実際、健太はスタートで山本選手の前に出られなかったのと、レース中に前に行く事がなかったので、何ごともなかった訳ですけどね。スタートで前に出られなかった事は、健太は悔やんでいましたね。自分の仕事が出来なかったと。そうだけど、ちゃんと表彰台に乗ったからチームタイトルがついて来た訳で、立派でしたよね。


近藤監督は、3年計画でチームを改革する旨を、昨年、この二人のドライバーを起用した際におっしゃっていました。2年でもうチームタイトル獲得ですが、なんだかんだここ数年で経験値を増やしていたと感じます。

ジェームス・ロシター選手が在籍していた時代からすると、今は、“安定”を感じます。ロシター選手は、今季トムス37号車を駆った訳ですが、元F1のテストドライバーというポテンシャル、やっぱり経験は違ったようです。2014年は、コンドーレーシングで22ポイントも獲ってランキング6位。Q3への進出も珍しいものではありませんでした。ただ、その持っているポテンシャルの受け皿が、当時のチームには、まだなかった…と伺いました。

エンジニアが変わったりで、なかなか苦労している感じが見て取れました。ロシター選手が何かうまく行かない状況で、チームにお願いをしているところを目撃した事があります。ちょっと落ち着いてやりましょうと、ドライバーが言葉を発している、そんなシーンでした。チームと一緒に対処したいという動きでした。

憶測ですがドライバーが怒り出しても不思議ではない感じの事でもあったのかと思った事もありましたが、そんな経験もしつつ、徐々にチームも力をつけて来たのかなと思います。今年の夏、ピット作業などの心配は、もうないだろうと言っていたベテランメカさん。しかし今回に限って言えば、チャンピオンをかけたプレッシャーはハンパなかったでしょうね。手も震えますよね!でも、きっちりやってのけました。山本選手のピット作業も速かった。みなさん、胃が痛かったでしょう…。ホントお疲れさまでした。

ん?ロシター選手のコンドーレーシング時代の戦績は悪くないシーズンもあったけど、今季ノーポイントだったよね。これは、チーム(トムス)が不調って事ですかねえ。トムスは、ヨコハマタイヤに代わってから苦労している感が否めません。来季は、復活してもらいましょ。

それと、セルモ・インギングさん。近年の常勝チームですが、最終戦こそ国本雄資選手が4位で追い上げましたが、今シーズン珍しく優勝がなかったですね。国本選手は、この4位が来季に活きそうな感じがします。石浦宏明選手は、一年置きにチャンピオンと考えて、来年また狙います!とおっしゃってくれました!

余談ですが、石浦選手は、お話を伺うと常に笑顔だったり、とても明るい表情で応対してくれますが、とても悔しい気持ちでいっぱいだったはず。最終戦の笑顔の写真は、私はわざと出してないよとレースウィークに話すと、確かに勘違いされたくないと…。ゼッケン1だった訳ですから、悔しさは人一倍なはず。ネット社会はそう反応してくれなかったりするのでね、私も考えてるんですよ。

チーム・インパルの2台は、今年切磋琢磨して良い感じの速い二人でしたが、何かもったいなかったね。きっともっと上位に食い込むと思っていましたが、また来年彼らの続きがみたいです!
KCMGの小林可夢偉選手は、菅生が…。もうね、勝ってて不思議ではないレースをしていますので、来年こそ!ではないでしょうか。チーム ル・マンは、開幕でエンジニアの山田健二さんを病気で失ってしまい、今季は大変だったと思います。ドライバーがけがをして代わったりと、バタバタなシーズンだったのではないでしょうか。

さて、話を戻しますが、この↑写真、ファイナルラップのシケインですが、ニックの追い上げすごかった!最後は、コンマ6秒ですよ。並んでもなかなか抜けない鈴鹿サーキットだけどね。32周でベストラップを出してからの残り10周は、魅了されました。山本選手にピタリと張り付いた事で、ミスを誘発する事だってありますから、抜けないサーキットだけどチャンスは最後まであります。終盤、シケインのところで、少しだけそんなシーンもありましたが、残りは、たった1周。山本選手は見事に逃げ切りました。お見事!

終盤、コンドーのピットに向かいましたが、ピットにスタンドのお客さんの歓声が聞こえてくるのが、嗚呼、鈴鹿でレースをしていると感じる瞬間でした。こんなに素晴らしいレースで、今シーズンを締めくくる事になるとは思ってもいませんでした。ごめんなさいJRPさん。とにかく良いレースでしたね!

そうそう、レースウィークには、来季の車両SF19のデモランも行われました。開発車両を、インディ500ウィナーの佐藤琢磨選手とル・マン24時間ウィナーの中嶋一貴選手が走らせてくれましたよ。すでに、レーススピードかと見紛うほど、開発は進んでいるようで、デモランも見応えがありました。ハロ(halo:ドライバーの頭部を保護する装置)を初めてみました。下駄の鼻緒に似たカタチで、体を守ってくれるデバイス。実際、最近のF1でも活躍してドライバーの命を守っていますね。安全面も向上して、来季はまたコースレコードを更新していく事間違いなし!この車両で、最初に勝利をつかみ取るのは誰でしょう? 来季を楽しみに待ちたいと思います!

今季も素晴らしいレースをありがとうございました!来週は、SUPER GT最終戦で、また山本選手のホンダ陣営とこちらの二人の戦いも見られます。今季もモータースポーツはおもしろいね!

(写真:折原弘之・大谷幸子 / テキスト:大谷幸子)

[ガズー編集部]

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