探求心と柔軟性、“骨太”莉朋、ハコの世界戦に初チャレンジ ~WTCR鈴鹿ラウンド現場レポート~

スーパーフォーミュラ最終戦が開催された鈴鹿サーキットでは、WTCR世界ツーリングカーカップ第8戦「JVCケンウッド・レース・オブ・ジャパン」という世界戦も併催されていました。

日本開催のワイルドカード枠として、SUPER GTやSUPER耐久でおなじみのAudi Team Hitotsuyamaから、富田竜一郎選手と宮田莉朋選手が、“Audi RS 3 LMS”で参戦。これはうれしかったですね。観る楽しみが増えましたので…。そして、メーカー所属の育成ドライバーが、他メーカーのクルマに乗るチャンスを得たことも、とても良かったと思います。縛りがあって当たり前の業界に理解を示してもらえて、宮田選手にとっても経験値が増えるので、ここは全力で前向きな思考が欲しいところ。だからつくづく良かったです。

そんな世界戦を、いつも写真を撮ってくださっている、フォトグラファーの折原弘之さんにレポートしていただきました。motoGP、F1と、私とは経験値がまるっきり違うカメラマンさん。ですので、私とは全く違った視点のレポートができあがりましたよ。それでは、どうぞ!

宮田選手は、全日本F3選手権とSUPER GT GT300クラスにエントリーする、トヨタ期待の若手選手。WTCR予選後に行われた、記者会見場に姿を現した宮田選手は、「最終的にはF1にチャレンジしたいので、国際レースで経験を積めるのはありがたい」とコメントするほど海外趣向の強い選手。そんな宮田選手に、8月に同じく鈴鹿で開催されたGT3車両の世界戦「鈴鹿10時間耐久レース」(以下、10H)で僕が感じた疑問をぶつけてみた。

僕が10Hを見て不思議に思ったのは、外人ドライバーのライン取り。特に鈴鹿のS字コーナーなのだが、SUPER GTを走るドライバー達は、縁石ギリギリを攻めてくるが、縁石の内側まで攻め込むことがない。対して10Hにやってきた外国人ドライバーは縁石に乗るどころか、さらに、その内側の芝生の上を走りタイムを削ってきた。このことを10H開催の初年度、2年前に10Hに参戦している小林可夢偉選手に質問すると、「クルマのセットが違うから、僕らのクルマでそのラインを走っても意味がない」と言う答えが返ってきた。その時は「そんなもんなんだ」と思っていたものの、スッキリしない気持ちだけが残った。しかし宮田選手は、全く違う感じ方をしていた。

宮田選手曰く、「最初は僕も、同じ様に(小林可夢偉選手と同様)感じていました。僕にとってGT3の車両は、SUPER GTの500クラスのクルマと同じように、空力を使って走るんだと思っていました。ですから、ある程度は縁石に乗れるけど、乗りすぎると飛んでいってしまうような印象だったんです。ところが僕は10Hに出ていないのでビデオを見ると、印象が変わったんです。さすがにスプーンコーナーの立ち上がりで、4輪脱輪とかは行けませんが、イン側の縁石を大きくカットして走るのは、今のGT3車両の流行りなのかなって。そう思ってSUPER GTのオートポリスと菅生でインカットする方向で試してみたんです。そうしたら、良い方向に行ってタイムも上がったんですよ!」と、かなり前向きなコメントを聞くことができた。その方向性自体が、正しいのかどうかはさておき、新しいことを受け入れ挑戦していこうとする姿勢には大きな可能性と伸び代を感じることができた。

さらに決勝について話が及ぶと「明日のレース1は7番手スタートなので(ペナルティ車両が2台出て実際には5番手スタート)、良い位置からスタートできる時こそ良い位置で終わりたいです。明後日のレース2、3のグリッドもすでに決まっているので(WTCRは2日間で3レースのフォーマット)、翌日のグリッドがレースリザルトに左右されないんです。僕にとってはレース1が見せ場だし、レース3が終わる頃には、車の形が残っていれば良いな…くらいの気持ちで臨まないと、正直、舐められます。それはマカオグランプリに参戦した時も感じました。舐められたら終わりなので、そうならないようなレースをしたいと思います!」と結んでいる。

新しいものへの探究心に加え、ワールドクラスの気の強さ。甘いルックスからは想像できない負けず嫌いは、次世代のドライバーとして魅力に溢れていた。今回のWTCRは、残念ながら、レース1はマシントラブル、レース2は25位、レース3は、クラッシュと“いいとこナシ”で終えた。だがあの探究心や気の強さがある限り、今後はグローバルに活躍するドライバーに成長するだろう。これからの宮田選手からも目が離せなくなりそうだ!

(写真:折原弘之 / テキスト:折原弘之・大谷幸子)

[ガズー編集部]

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