高みを目指し、プロのコ・ドライバーへ ~北川紗衣さんと素敵な時間 vol.2~
vol.1の続きをお届けします。
全日本ラリー選手権でチャンピオンになられたことも、謙虚に捉える北川紗衣さん。謙虚を差し置いても人格的に素晴らしいなあと思うシーンに幾度となく接して来た私。さえちゃんのファンの方へ向けた感謝の気持ちのお辞儀は、なんと清々しいと思ったことでしょう。
それだけでなく、私に対しても心地よい時間を提供してくださるその言葉遣い。以前から感じていました。見習わないと!と思うことが沢山ありましてね。
サポートするこのコ・ドライバーというお仕事には、適任だと感じています。そんなスキルを身に付けた彼女から、まだ全く早いかもしれませんが、次世代の方々へいつか受け継ぐことは考えていないのかなと思い、質問をしてみました。
自分は年齢を考えると、最近はレース取材も自分としては大したことはしていないけれど、若い方々へその居場所を提供することも大事なのかなと思い始めましてね。
ただ何を引き渡すのかと考えると、カタチがないなあと思ったりもしています。まあ、そんなことも自分は少し考えていますが、まだまだ未来が広がるさえちゃんのモータースポーツの根幹に関わるようなお仕事は、今後どう展開して行くのだろうとか、今どんな視野をお持ちなのか…、そんなことも含めて伺ってみました。どうぞ。
――――コ・ドライバーとして“教えること”を考えたことはありませんか?
北川さん:錚々たるトップドライバーのみなさまが運営する、ラリースクールはありますが、コ・ドラのスクールはないですね。考えてみると、この仕事には“正解はない”のだと思います。
レースのアシスタントマネージャーと一緒で、マネージャーとして求められていることと、ドライバー・チームとの境界線がそれぞれのチームやドライバーで違うと思うんです。
また、コ・ドラを務める方の資質も大きいと思います。ドライバーと組んで仕事をやってみてから、それこそお見合いをしてからコ・ドラとして正式に仕事が出来ますので。
そして、基本的に必要なスキルが備わっていれば出来る仕事なのかもしれません。スクールほどできなくてもコ・ドラの仕事を教えていきたいと考えたことはありますが、ただ教えちゃうとあとは「OJT」になってしまうので、それも正解なのか今の時点ではわからないです。
一番必要なのは、ドライバーとの相性ですからね。
――――レース業界にも身を置かれていましたが、ラリーとSUPER GTの違いを感じましたか?
北川さん:一人一人がプロフェッショナルだと感じました。自分の仕事が一番大事と。
まず、SUPER GTは基本的に他の人の仕事には手を出さないのです。だからこそ自分の仕事はプロフェッショナル。
ラリーは、サービスパークで常に現場が回っているので、それぞれの役割に忙しいとこちらも待っていられなくて、他の人の仕事を勝手にやってしまうこともあります。それぞれに大きな違いがあると感じました。
また、ある時“おまえ強いなあ”とSUPER GTでエンジニアをされている方に言われたことがあるのですが、SUPER GTではドライバーが失敗しても、ある程度ひとりにしてあげて放っておける時間がある…。
ラリーは、自分が失敗したとしてもドライバーと常に一緒に仕事をしていかないといけない。失敗しても頭を冷やす時間もなく、時が進んでいくのでメンタルが強いと言われたことがあります。どのスポーツでもそうですが、やはりメンタルの強さは必要かもしれませんね。
――――ラリーは常に自分との戦い。タイムアタックで、SUPER GT(他のカテゴリーでも)のように同じトラックで戦うことがない為、ドライバーたちの仲が良くてサービスの雰囲気も良いと聞いたことがありますが、どう思われますか?また他チームの方とお話することはありますか?
北川さん:同じトラックで競うことがないので、レースのピット、パドックとラリーのサービスパークの雰囲気は全く違いますね。別のチームの方と話すこともあります。
ラリージャパンの時に、タイムコントロールで勝田貴元選手と3分ほどお話したのですが、勝田貴元選手がクラッシュした際のことをヘイキさんが質問しました。
すると、勝田選手がコ・ドラのアーロン・ジョンストン選手に「ヘイキに教えてあげて」と言ってくれて、路面のミューが変わった箇所など細かに説明してくださったんです。
これは、ラリーだからこそ教えてくれたのだと思いましたね。レースの現場ではきっとないことだと思います。手の内を見せないのが、レースですから。
また、タイヤ選択を迷ったときのヘイキさんの相談相手は、勝田貴元選手のお父様、勝田範彦選手(以下、ノリさん)です。ノリさんとあまりにタイヤ選択が違うと、ノリさんは「スペアはこれを持って行くと良いかも」と三味線を弾くこともなく全て教えてくれて、そのお人柄に驚きますね。
沢山の素敵なお話を伺うことができました。さえちゃん、ありがとうございました!
これまで聞きたかった、ラリーとSUPER GT(さえちゃんがこのカテゴリーでお仕事をしたので、敢えて。もちろん他カテゴリーでも良いのですが)との違いをどう感じたかなど、伺えて良かったです。
どちらが良い悪いということではなく、それぞれの戦い方があるのでね。そして、ファンになるもならないもみなさん次第ですしね。
ドライバー同士が戦うという根本は同じですが、ラリーは他人と“いがみ合わない”と数年前にある方に言われたことがずっと気になっていたんですよね。いがみ合うという表現が、どう受け取って良いのかと。そう見えるといえば見えますから、これも仕方ないのですけどね、戦いだから。
また、それぞれがプロフェッショナル(仕事に関して)と、さえちゃんが表現したSUPER GT。
ラリーのサービスパークを観に行った際に、さえちゃんもクルマの整備を手伝っているシーンも見かけて、何でもできるんだなあと思ったことがあります。
時間が足りないから他人の仕事にも手を出してしまう、というのも納得ですよね。クラッシュしたりすると、SUPER GTでは、ピットでドライバーは手を出さなくても、他の方が手伝って修復したりは当たり前ですし、モータースポーツは団体競技と感じるところです。
だからこそ、「仲間」という意識も強いですし、私はもともとチーム仕事が好きだったところが、そこに根本としてあるかなと…。
現在は、取材する立場になってしまったので、チームの一員ということがありませんが、そういう経験もまたしてみたいですね、機会はもうないけど(涙)。
女性としてという視点で、わたしは九州から北海道に嫁いだ彼女を尊敬します。勢いで、というのもわかります。自分が親という目線で見ると、ご家族はさみしいだろうなあと思ったりしてね。自分も遠くに嫁いだので、同じか(笑)。
嫁ぎ先の北海道での生活は、雪がなければ快適ということでした。私みたいに雪に心躍っているのとは違いますよね。春まで雪が残りますし、桜も5月。雪のない時期の方が短いのかも…。生活するのと観光とは当然違いますのでね。
しっかし、北海道では外は極寒だれけど、中はとっても暖かくて、北海道から羽田に到着して自宅に帰るまでの途中の駅が寒くて凍えました。北海道では屋内は駅の地下道も含めて全て暖かくて、下に着たシャツが暖かすぎて汗をかきました。振り返ってみてれば寒さも暖かさもハンパないけれど、総じて快適に過ごせましたよ。
楽しいお話を聞きつつ、もう北海道に行きたいです。そして、全日本ラリー、WRCにまた行ける時間を作れたらと思いながら帰還しました。まだまだ取材したい事がたくさんですね…。では、また!
〇関連ページ
Rally Team AICELLOのYouTube
(写真、テキスト 大谷幸子)
レポーター(お)ねえさん・大谷幸子
随時、クルマに関する様々なイベント・テーマでレポートしていきます!
[GAZOO編集部]
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