今年もWEC富士に行ってきたよ! 〜2024 FIA World Endurance Championship Round 7 6 Hours of Fuji〜

  • 2024 FIA 世界耐久選手権 第7戦 富士6時間耐久レース

トータルで6万人超え(65,800人)、前年比120パーセントの観客数。気づけば2012年から、この日本開催だけは取材することが一年の恒例行事となっている、WEC富士6時間耐久レースに行ってきました。

  • 8号車 TOYOTA GR010 – Hybrid / TOYOTA GAZOO Racing

まさかこの時期まで酷暑が続くとは思っておらず…。さすがにしんどい。富士山もホームコースのレースに華を添えるべく姿を現したのですが雪が全くないのが少し残念。7月から始まった真夏のサーキット取材の連戦も3か月目に入り、その場に居るだけでもなかなか大変でしたが、きっと海外から来日されたレース関係者の方々が一番驚かれているのではないでしょうか。それでは、フォトレポートで振り返りますね。

WEC富士は、ハイパーカークラス8メーカー18台、LMGT3クラス9メーカー18台による戦い。2012年には想像もつかなかった展開です。F1ワールドチャンピオン、日本でもSUPER GTでタイトルを獲得したジェンソン・バトン選手や、moto GPのこちらもワールドチャンピオンでレジェンド、二輪から四輪に転向したバレンティーノ・ロッシ選手、わたしはマカオグランプリでお見かけしたことがありますが、ミック・シューマッハ選手。元々WECに参戦しているドライバーがそもそも豪華ですので、話題てんこ盛りの大会となりました。

メーカーが増えただけでもさあ大変。木曜日からメディアセンターに人がいっぱいです。これは今まで見たことないかも。ロッカーをお借りできるのですが、早々に大きなロッカーは空きがなくなったそうです。パドックも豪華ドライバーの参戦で出待ち入り待ちのファンの方でいっぱいでした。

ホームで頑張って欲しいのですが、いろんな意味で心配なのは、彼。小林可夢偉選手。TOYOTA GAZOO Racingのチーム代表としての小林可夢偉選手。

彼を側で見ているだけのわたしですが、彼は自ら動くタイプですので、レース以外にもチームの為に、それこそ椅子一つ動かすだけでも自分がやってしまう人。今回は、チームケータリングを自らセッティング。食器からメニューまで。食器を揃えるために都内のチェーン店をはしごした話をされていましたが驚きませんでしたね。彼ならそこまでやると。日本人メカニックには、メニューの相談をしたそうです。1コーナー寄りの端っこのピットで、レストランまでは距離がある。そして日本開催ということで、チームのみんなへ日本流のおもてなし?彼らしいなと思いました。いつも忙しくされていますね。

レースのことに関しては、ざっくりの印象で申し訳ないですが、きっと何をやっても完璧にこなす国民性のわれわれ。その日本のチームに対して、いろんなことが厳しいこのカテゴリー(例えばBoPとか)。そんな環境下のもと可夢偉チーム代表、世界に立ち向かっています。だからね、応援したくなるんですよね。

国内でも走っていますが、なかなか彼の速さが結果に繋がらないので、それもずっと気になるところ。フラストレーションもいっぱいの中で、笑顔で頑張っているのです。ファンとの玉入れでも全力で頑張ってかわいらしいズルもします(笑)。ほんと常に全力で楽しませようとしている姿が、ほんとね。尊敬ですよ。

記者会見の際に、ほかのカテゴリーの走行が始まって、サーキットがちょっと騒がしくなったら、開いていたドアを会見中なのに歩いて行って閉めたり。どうしても彼ばかり見てしまうので、また気遣いの塊になっていると思って見ていました。まあ、それは彼のお人柄でして。

  • 平川亮選手 / TOYOTA GAZOO Racing

ホームコース富士で、ぜひタイトルに王手をかけて欲しいと願っていました。しかし、レースレポートなどをご覧になっていただけるとわかると思いますが、今回はTGRチームの2台にとって、決勝で2つの大きなアクシデント、ハプニング、いや不運か、に見舞われ、優勝どころか表彰台すら乗らなかった大会となってしまいました。これに関してはガッツリ応援している身ですので、どうしても納得はいきません。平川亮選手の追い上げにも期待していたのですが、それも…。

しかし、振り返ったとところで結果は何も変わらないので、最終戦で表彰台の真ん中に立って終わって欲しいと思います。世界と戦うことの厳しさがあるとは言え、きっと中の人はもっと悔しい思いをたくさんして来られていると思います。だから真摯に頑張る姿を応援するだけ。残念な結末だったけど、引き続き頑張ってください!

毎年船便、空輸で届いた荷物を月曜日からアンパックしているのですが(今年はコンテナが遅れているチームがありました)、それが終わるとマシンの車検やピット設営。ドライバーたちはコースウォークがスケジュールされていて、その日が木曜日です。毎年ご尊顔を拝める日となります。コースから戻ってくるのを待って、挨拶したりの日です。スマホを向けたら日本人ドライバーの小泉選手が手を振ってくれました。過去には、SUPER GTに参戦の実績のあるドライバーさんですね。ありがたい。

日本でレースを戦い、いつも青い目をした侍と表現されている海外のドライバーたちの来日はいつも楽しみにしていますが、かつて一緒に仕事をしたアンドレ・ロッテラー選手とロイック・デュバル選手のお顔を見ると、やっぱりうれしいものですね。同時に1年の時の流れの早さも感じますけどね。

お二人はアウディからポルシェ、プジョーとメーカーはそれぞれ分かれてしまいましたが、健在というか君臨。かなりイケオジになりましたが、現役バリバリでハイパーカークラスで戦っています。

  • 6号車 Porsche 963 / PORSCHE Penske Motorsport

アンドレ・ロッテラー選手は、富士スピードウェイがホームと言っていることもあるのは納得。それだけ自信がある。わかります、ここで何度優勝したことか。

昨年のWEC富士でもTGRの平川亮選手と最後までデッドヒートを繰り広げ負けたんですが、表彰台でめちゃ悔しがっていてね。コースサイドであのバトルを見ていたら、怖くなってメディアセンターに戻りました。あまりの迫力でヘアピンのアウト側はコースサイドのすぐ脇なため、ずっと固まってました。

  • ハイパーカークラス優勝 6号車 PORSCHE Penske Motorsport

今年は、アンドレの駆る6号車が優勝しました。2015年以来、2回目のトヨタ以外のメーカーの勝利です。彼には、ずっと走っていて欲しいんです。すでにレジェンドでもあると思います。いつも覚えてくれていて、こちらも笑顔になってしまいますが、あの未だにかわいらしくもレースとなるとオーラに震えてしまうアンドレは、ほんと強いね。おめでとうアンドレ!でした。

  • 兄弟で表彰台 ローレンス・ヴァントール選手とドリス・ヴァントール選手

ちなみにチームメイトのローレンス・ヴァントール選手とBMW MハイブリッドV8のドリス・ヴァントール選手はご兄弟で表彰台を獲得しました。世界を兄弟で戦うってとても素晴らしいことですね、しかも表彰台だなんてね。

TGRのバチバチのライバルを間近で見られるのもWEC富士の醍醐味。しっかりハイパーカークラスのタイヤ交換を見学しました。ル・マン24時間は、昨年も今年もフェラーリに負けちゃったのでどうしてもライバルとして見ちゃいます。

たくさんのスタッフがおりますし、赤のユニフォームがカッコ良すぎてビビりますね。ヨーロッパなら見慣れた光景なのかもしれませんが。昨年も、メディアセンターに真っ赤なスタッフさんたちがティフォシのごとくたくさんいらしてね(大げさ)。今年はメディアセンターのお部屋の反対側に陣取っていたので、赤を強く感じることはなかったけれど、F1もやっているチームは、何か規模も違うなあという目線で見てしまいます。

二輪のレジェンド、バレンティーノ・ロッシ選手(チーム WRT/A.アル・ハーティ/V.ロッシ/M.マルタン組)が、3位表彰台を獲得。細かなレース内容は割愛しますが、予選12番手からロッシ自身もポジションを大きく上げ、今季2度目の表彰台。二輪のレジェンドは、息の長いドライバーになりそうですよ。おめでとうございます!

TFスポーツ 兜を用意するとは素敵すぎる

TF Sport 兜をかぶって集合写真

遠くのピットから眺めていたら、SUPER GTの車にリバリーがそっくりだったので走っていったら、集合写真を撮影していました。なんだろアレってことで近寄ったら、兜をかぶっていたんですよね。カメラマンさんにお話を伺ったら、チームのGMの方が用意してくださって、撮影となったそうです。紙だけどかなり凝った作りでしたね。ニホンノサムライ…みたいでウケが良さげでしたよ。欲しいと思ってしまいました。

ユナイテッド・オートスポーツ 日本人メカがお手伝い

  • 59号車 McLaren 720S LMGT3 Evo / UNITED AUTOSPORTS

ユナイテッド・オートスポーツのピットには、日本人メカニックがいて、ピットの前を歩いていたら声をかけられました。日本開催ですので、チームのお手伝いをする日本人は結構いるのですが、彼にはびっくり!海外でメカニックの仕事をしたいという志を持っていました。これね、ほんと若い頃にしかできないと思うんです。わたしの兄も仕事は違うけど、若い頃、海外に出て10年ほど仕事をしてたので応援したくなります。わたしも行きたかったけど、勇気がなくてフツーに過ごしてしまいました(後悔)。

見かけた彼は、英語もお勉強していて、ちゃんと準備してるんだなあと思いながら話をしていると、それを見ていたチームの方がピットに招いてくれました。大サービスですね。わたしの素性を聞かれていましたが、その彼は「メカニックのお母さん的存在」と説明していてウケました。一応、サーキットで仕事しているんだぞと。でもありがたい話ですね。

国内カテゴリーで今までも見かける男子でしたが、現場で雑談をしているとサボっている感じに見受けられるので、サーキットで挨拶はするけれど、そんな深くまで話したことはなく。ましてやそんな野望を持っていたとはつゆ知らず、とにかく驚きました。彼の夢が叶うといいですねと、そのチームのエライ方に話しましたが、ニコニコ笑顔が返ってきました。きっと近い将来叶うかもと勝手に妄想。ただ、まだ夢の途中ということで写真は控えますが、彼の夢が成就した時、まだわたしがこの仕事をしていたら、彼の行く末も追いかけたいですね。がんばって!

海外で頑張る日本人メカ

8号車のリアタイヤ交換に注目してね めちゃくちゃ速いから

  • 8号車 TOYOTA GR010 – Hybrid / TOYOTA GAZOO Racing

もう何年経過したかな。海外に出て行った仲間というか息子のようなメカニックに会いにこのイベントには来たのに、なぜか会えず。忙しそうだから呼び出すのもね。だからフツーに取材して大人しくしていたら、土曜日にようやく再会となりました。8号車の木村メカ、一年ぶりでした。

  • TGR-E 木村メカ

過去にどこかで書いたかもしれません。トヨタ系の国内のレーシングチームで頑張っていて、海外に行きたいと語学留学をして英語を習得、渡欧してメカニックの仕事をしているうちに、古巣の仲間もいてTOYOTA GAZOO RacingのWECチームに現地採用されたというストーリー。シンデレラボーイです。ちゃんと努力して掴んだ夢ですので、われわれ中の人の間でもヒーロー。

現在のチームのムードメーカーと、チーム代表の小林可夢偉選手も言ってくれて、本当に良かったなと思っています。今でも懇意にしてくれているんですよね。これからも活躍すると思いますし、長くなるので彼の記事はここでは少しだけにしておきます(笑)。Instagramに頻繁に出てくると思います。よろしく!

キッザニア

  • ちょうど屋外でインタビューをしていました

これはかなり現実味のある企画。チーム広報の職業体験を今回、TOYOTA GAZOO Racingで行っていました。中学生が対象で英語の読み書きができるという基準をクリアされた方が、中嶋一貴TGR-E (TOYOTA GAZOO Racing Europe) 副会長と面接。その中から合格された方がサーキットでお仕事を体験します。ホームページで募集をかけていました。中学生という年齢から、10年以内にひょっとしたら広報希望でトヨタ自動車やTGR-Eに就職希望で面接に来られるかもしれませんよね。10年なんて、あっという間ですし。

そして、二日間にわたり熱心に取材をされていたんですよね。間近で見る機会が何度かありました。メモをしっかり取っていた姿にとても感銘を受けました。少子化ですし、また趣味が多様化していく中、モータースポーツにご興味を持ってくださる方がいるということが大切に感じるようになりました。だからうれしかったですね。サーキットに来てくれないと始まらない。切に思うことがありますが、彼らが将来モータースポーツを伝える立場になったら、とても素敵なことだと思います。老眼鏡をかけながら、そんな日が来るのを待とうと思います。お疲れ様でした。

  • 大歓声に包まれたドライバーズ トークショー

そのほか、長くなりましたので楽しかったコンテンツは、よろしければ私のインスタグラムをご参照ください。

レースを開催する度、観客数が右肩上がりの富士スピードウェイ。酷暑の中、よく数字が伸びたと思いました。WEC富士までこれだけ増えるのはうれしいですね。要因はなんだろう。豪華なドライバーの来日が大きいのかな。ホームコースとして戦うTGRのピット周りが出待ち入り待ちは、やっぱり一番多かったように見受けられました。念の為、書いておきますね(笑)。

開催当初、パドックはたくさんのコンテナとタイヤを置くテントが点在するだけでとても閑散としていました。あの光景は忘れませんが、今年は、あれがうそみたいに人・人・人でした。世界戦は、こうじゃなくちゃね。10年かかってここまで様変わりするとは、認知度が上がってきたかな。

もっと書きたいのですが、SUPER GT菅生大会のため移動となってしまいました。パッキングをせねば。残念。というわけでまた来年!

(写真 折原弘之、大谷幸子 / テキスト 大谷幸子)