今年のアジア一速いドライバーは坪井翔に決定! 〜スーパーフォーミュラ最終ラウンド・鈴鹿サーキット〜
そんな簡単には取れませんよとオフテストで言っていましたが、終わってみれば怖いほどの安定感がありました。もう誰も止められない坪井翔選手が、ドライバーズタイトルを獲得!見事、シリーズチャンピオンに輝きました。おめでとうございます!
開幕戦の鈴鹿がノーポイントだったというのが嘘のようですね。前戦のホーム富士での2連勝、あそこで大きくタイトルを引き寄せました。
ミスのないドライバーですので、彼ならタイトルを取って当たり前(偉そうにごめんなさい)という気持ちも私の中にはありますので、喜ばしいことですがほんと落ち着いて見ていられますね。
今季は、昨年の約2倍のポイントを獲得しました。大きく飛躍したのはとても良い事なのですが、彼の技量と今季のチームを移籍したことにも起因すると考えると、トップチームの総合力というのはとんでもないなと。極端な比較ですが少しそれも考えました(前チームさんごめん)。
移籍したことで恩返しを両方のチームにできるとコメントをしていたので、ふとチームの事が頭をよぎりました。
坪井選手は、SUPER GTで過去に2度、タイトルを同じトムス36号車で獲得しているのですが、2回ともに相棒が違います。坪井選手も「毎年相方が違う」とおっしゃっていましたが、今年もタイトル争いの筆頭にいて、相棒は昨年の宮田莉朋選手から山下健太選手に変わりました。彼もとても速いドライバーですよね。
前戦で優勝したことで、さらにポイント的にも3度目のタイトルは確実視されています。もちろんレースは最後まで何が起こるかわかりませんが。坪井選手自身には、今回チャンピオンに輝いたことで宮田選手同様にダブルタイトルをかけての最終戦となりますね。チーム移籍初年度で達成しちゃうのかしら。楽しみにしたいと思います。
しかし、気になることがあります。スーパーフォーミュラのトムス37号車は36号車とは対照的にノーポイントです。まさかのまさかです。
このポイントが取れないことで、彼らはチームチャンピオン争いに加わることができませんでした。とても異例の事態に感じます。ポイント差は今までもあったけどね。
2台体制の一番のライバルは、身近なチームメイトだと思うのです。横で勝たれる事が一番辛いもの。2台共に速くないと、チームタイトルは取れないから悩ましいです。
チームランキング、チームの総合力が問われますが、かと言って、トムスのチーム力が低いとは思いません。チャンピオンを輩出している実績もあるからね。今年、タイトルを逃したチーム無限もトップチームであるのは間違いないですよね。
今回、いろんな方と話すなかで、物の置き方からトップチームは違うという関係者がおりました。そこからもチーム力が現れると。これ参考になるかも。外からピットを見るだけでも楽しいけど、整然と片付いているチームもあるし、必要なものを手近なところに置きたいチームもありますし、それぞれ理由があります。
でもきっと何か機能的な違いが出るんだと思うんだ。だから、物の置き方を例に出して言ったのかな。
チームだってドライバーだって、良いシーズンも悪い時もある。チームを取り巻く環境だったり得意不得意の出るシーズンもきっとある。
話を戻すと、チーム内のギャップは外野がどうこう言ってもしょうがないけど、話題になってしまうことは仕方ないと思います。笹原右京選手は、表彰式など全て終わってチームフォトに入るとき、ちょっと辛かったんだろうね。
チーム内でしかこれは解決できないことだと思うので、私はただただ心配だけしておきます。最終戦、ルーキーレーシングの大嶋和也選手と二人、どうにかポイントを取って欲しいと思って見ておりました。来季頑張ってもらいましょ。
ドライバーのチャンピオン争いももちろん熾烈でしたが、チームのタイトル争いも終盤熾烈でした。
DANDELION RACING(148pt)とチーム無限(131.5pt)、どちらもトップチームで実力があるのは間違いないですよね。17ポイント差は、数字から受ける印象ほど大きくなく僅差だと私は思っておりますが、DANDELION RACINGの勝ちとなりました。おめでとうございました。
2台ともに速いという条件で考えると、この2チームの戦いになるのは、わかっていましたよね、みなさんも。2チーム4台共に大活躍なシーズンでした。いつも通りかっこ良かったです、ほんとに。
そして、3位のトムスに続くのがKCMGです。今年はなんとチームランキング4位ですよ!
どうしてもピット作業が注目されちゃいますが、それも仕方ない。これまで優勝争いをピットで落としてしまったことが多々ありましたので。今年も連続でミスをしてしまった為、なかなか辛かったです見ているこちらも。
しかし、初ポールポジションもありましたし、富士スピードウェイでも鈴鹿サーキットでも、福住仁嶺選手、5年ぶりに小林可夢偉選手も表彰台に乗りました。かなり大きな収穫です。
伸び代はまだまだ沢山あって、ここはもっとチームが伸びる時だと思います。福住選手がレース後、来年に繋がる3位と発言していたこともうれしかったので、チームと一緒に頑張って欲しいですね。
また長年の課題、小林可夢偉選手を初優勝が達成されておりません。
今季は決勝の速さと予選順位のギャップが埋まらず苦労しました。予選でもう少し前に行けていたらね。決勝の追い上げはシーズン後半になるに連れ、どんどん力強くなっていきました。今回もそうでした。
そしてチームの方も最終戦のピット作業は、速くてかっこよかったです。結果的にアンダーカットに繋がっていました。今回は、他チームのピット作業の大きなミスからSCが入ったりもありましたが、いつも上手いチームでもたまたまそうなることもありますね。ミスしたくてしている訳ではないからね。引き続き飛躍したこのシーズンを起点として、チームももっと伸びていくことを祈っています。
TGRチームについては、またTGRコラムで触れますのでよろしくお願いします。
そして、山本尚貴選手がスーパーフォーミュラを引退する決断を下したこと。驚きでしたが、考えてみたら昨年大クラッシュからお怪我もされていたと納得な事情もありました。
まずは15年間の長きに渡りこのカテゴリーを牽引するポジションで頑張って来られたこと、尊敬しております、お疲れ様でした。
鈴鹿へ向かう前に、スケジュールをチェックしていたんです。JRP(日本レースプロモーション)さんマメでして、メディア宛に最終案内のスケジュールをメールで流してくださいましたので、それをチェックしていたら、「山本尚貴引退会見」の文字を発見。ん?…。固まりましたね。とうとうその時が来てしまったのかと思いました。
15年の現役生活で3度のタイトル。偉大なドライバーですよね。まずは良かった、SUPER GTは引退しなくて良かったと思いました。まだまだハコは行っちゃいましょうね。ちょうど良い後輩がおりますよね。チームメイトの牧野任祐選手も尊敬している先輩であることが見て取れますし、お二人とても良いコンビになって来ました。
彼にもタイトルを取ってもらわないと!というか、その前にTGR勢もタイトル取ってないドライバーがおりますので、みんなで切磋琢磨していってもらわなくてはです。
来季の山本選手はHonda勢のサポートにまわるのかな。現時点では何も決まっていないとのことでしたけど、レジェンドですからね。奥様も花束を持って最後のセレモニーにサプライズで登場、メディアセンターでお見かけしましたので、ほんとに最後なんだなあとそこでまた実感が湧きました。
ありがとうのステッカーを貼っていた中嶋悟総監督
昨年の大怪我された時、弱虫ではなく「パパは強虫」といったくだりのSNSの奥様の投稿を見て言葉にならなかったのを覚えております。
今年の春に、まだお体が万全ではなさそうだよねと仕事仲間と話すこともあったのですが、開幕から表彰台に乗られたりと、何事もなかったかのように活躍されていて怪我のことも忘れそうに…なる訳ないですね。
このたび、お怪我のことやいろんなことを鑑み、「引退」の背中を押したのは、中嶋悟さんだったとのこと。俺が引退させたみたいになるから内緒と言ったみたいだけど、会見で引退の経緯を話す際に、エピソードが披露されていました。
デビューも中嶋企画ということで、その古巣での引退は感慨深い様子でした。ずっと続けて来たことを断ち切ることは、勇気のいる事ですよね。
ミックスゾーンで取材を受けていたHonda野尻智紀選手の言葉がちらっと聞こえてきたのですが、僕は自ら引退する勇気はないと。あんなに強い鋼のメンタルをお持ちの野尻選手がそう発言していましたが、これはお気持ちわかります。
選手生活をやめるという選択は、自らの意思でも言葉を受け入れるのに時間がかかるでしょう。決断されたこと、さみしいけど支持するかありません。
引退というシーンをこの目で見てしまうと色々思うこともあります。自分自身の話ですけどね。もちろん一般人でありますので、そっと姿を消せば良いのですが、退職などわたしたちでも立ち止まって人生を考える、振り返る瞬間はあります。
自分の気持ちとその道筋に整理やけじめをつけることは、なかなか大変。しばらくそんな決断をする機会もなく生きて来ましたけどね。まあ自分の場合、「加齢」という理由が重宝しそうなので、近い将来そんな決断をして立ち止まることでしょう(笑)。
鈴鹿ラウンドは、取材をしながら自分の気持ちはあちらこちらにしまって仕事をしていました。来月は、SUPER GTの最終戦が同じく鈴鹿であります。今季サーキットでは最後の現場となります。
今回もあったのですが、「最後」という報告を何人かからいただきました。将来を見越しての報告ばかりで良かったのですが、毎年さようならもあります。誰からも報告を受けないことを祈ります、さみしくなるので。
鈴鹿から戻ったばかりですが、すぐラリージャパンの現場へ移動です。長丁場ですので、楽しく頑張ります!では、また!
(写真:トヨタ自動車株式会社、日本レースプロモーション、大谷幸子 / テキスト:大谷幸子)
レポーター(お)ねえさん・大谷幸子
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