【折原弘之の目】スーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久 を10倍楽しむ観戦のしかた教えます

僕の考える日本の3大レースシリーズは、オートバックスSUPER GT2022シリーズ、SUPER FORMULAシリーズとスーパー耐久シリーズ2022です。この3カテゴリーはそれぞれ特徴があり、それぞれのレースを知った上で、そのレースに合った見方をするとでより楽しく観戦することができます。それぞれのレースに合った観戦押し方を紹介しますので、ぜひ参考にして観戦していただければと思います。

メーカーの意地がぶつかり合うSUPER GTシリーズ

国内レース1番の人気を博すSUPER GTシリーズ

まず、国内レースで一番人気のあるSUPER GTシリーズの観戦方法です。このカテゴリーは、500クラスと300クラスの2クラスに分かれています。名前からも想像がつくと思いますが、名前の由来はそれぞれのクラスの馬力から来ています。GTシリーズが始まった当時は、500馬力だから500クラス、300馬力のだから00クラスと呼ばれていたのです。今でも馬力違いのマシンが混走するので、レースはより難しくなっています。

レース距離も300kmから500km近く走るので、二人のドライバーがタッグを組んで1台を走らせます。そのためレースを勝とうとするなら、最低でも二人のトップドライバーを揃える必要があります。ですからお目当てのドライバーを見つけて、応援というのもSUPER GTを楽しむ一つの方法です。

メーカーの意地のぶつかり合いが一番の見どころだ

僕がお勧めする1番の観戦方法は、メーカーの意地のぶつかり合いに注目して見る方法です。特にGT500クラスは、トヨタ、ニッサン、ホンダの3メーカーが、持てる技術を結集して作り上げたマシンを競争させるのです。どのカーメーカーも負けるわけにはいかない、メーカー同士の意地を賭けたレースでもあるのです。そうなるとドライバーは、国内屈指のドライバーがこぞって出場することになります。メーカーが力を入れトップドライバーが集まるレースですから、面白くないはずがありません。

一方300クラスもトヨタ、ホンダ、ニッサン以外のも、スバル、メルセデス、BMWといったメーカーも出場しています。予選から激しいポジション争いが展開され、各チーム1つでも良いポジションからスタートするために必死です。前からスタートする越したことはないのですが、ピットインのタイミングを間違えると10ポジションダウンなんて言うことも日常的に起こるのが300クラスです。マシンやドライバーの速さだけではなく、チームとしての戦略が大事になってくるのです。

300クラスも激戦となっている

他にもレースを盛り上げるためにハンディをつけたり、最終戦はウェイトハンデを無くしたり。レース運営上も思考を凝らしています。このように主催者側は、性能調整やハンディを行使することでチャンピオンシップを盛り上げています。対してメーカー側は厳しいレギュレーションの中、優位性を保とうと必死に技術革新を進めています。もちろんドライバーも各メーカー選りすぐり、国内屈指のトップドライバーが集結しています。

ですからSUPER GTシリーズの見どころは、メーカー同士の意地の張り合い。ここが最大の見どころだと思います。またレース規則を知れば知るほど面白くなるのがSUPER GTですので、ルールを知った上で観戦される事をお勧めします。

生粋のスプリンターを決めるのがSUPER FORMULAシリーズ

世界一タイム差がないレースと言っても過言ではないSUPER FORMULA

SUPER GTがメーカーの意地のぶつかり合いなら、スーパーフォーミュラはドライバーのプライドのぶつかり合いです。

SUPER GTと違いスーパーフォーミュラは、一人一台のマシンを作り上げて戦うレースです。特にドライバーは100%自分の好みのマシンに仕上げられるのだから、妥協する範囲が狭くなるわけです。マシンもタイヤもワンメークですので、速いも遅いもドライバー次第と言っても過言ではありません。しかもドライバーのレベルが、高次元で拮抗しているので、ちょっとしたミスが命取りになってしまうのです。

特に予選ですが21台出走中、12位までが1秒以内で順位を競い合っているのです。コンマ2秒ミスしただけで、簡単に3〜4ポジション落としてしまうのです。レースで1ポジション上げるのが、どれほど大変なのか知っているドライバー達にとって3っもポジションを落とすのは命取り。予選のポジション争いから、熾烈なレースが始まっているのです。

ドライバーのプライドがぶつかり合うのがSUPER FORMULA

これほどタイム差の少ないレースは、世界中探してもスーパーフォーミュラしかありません。そして予選から始まるこの緊張感は、レース当日は最高潮を迎えます。予選でのパフォーマンスをそのままに、レースでも接近戦が見られるのです。逆にタイム差がなさすぎて、抜きつ抜かれつのレース展開にはならないことが多いです。

それでもチョットしたミスで、簡単に順位が入れ替わりますから見応え十分です。1レースに1度のピットインとタイヤ交換が義務付けられているので、ドライバーはもとよりピットクルーもミスが許されません。並外れた集中力と強い意志、そして運までも味方につけないとレースには勝てません。ウィナーが毎回変わるのも、不思議なことではないのです。

僕が個人的にお勧めするのは、スーパーフォーミュラです。抜いたり抜かれたりの大雑把なレースとは違い、本当に完璧な仕事をしたチームが勝利を収めるのです。少々マニアックではありますが、一度ハマれば最高に楽しめるレースであることは間違いありません。

参加型レースの頂点とも言えるのがスーパー耐久シリーズ

ビッツからレーシングマシンまで、多種多様なレースマシンが混走する

近年まで「アマチュアの祭典」とか、「日本最大の草レース」などと言われていましたが、最近のスーパー耐久シリーズはレベルが上がってきています。その最大の要因は、国内のトップドライバーが参加するようになったからです。少し前までは速いアマチュアドライバーが、優勝を狙っていました。
ところが最近は速いアマチュアと、プロドライバーが組んでトップ争いをするようになってきたのです。そのためレース自体のレベルが上がり、観戦していても楽しめるようになってきました。

話題のQクラスには多くのメーカーが参戦新しいレースの形を作り出している

加えて新しく設定されたQクイラスに、メーカーが参戦しだしたのです。このQクラスと言うのは改造範囲の制限が無いため、次世代のレーシングマシンの開発の場となりつつあります。次世代のレーシングマシンとは、水素やバイオ燃料を使用してCO2排出0を目指すレーシングマシンのことです。この取り組みを始めたトヨタに、スバル、マツダと言ったメーカーが呼応し、次々とエントリーし盛り上がっているのです。
そういった近未来のレーシングマシンが走っているのも興味深いのですが、スーパー耐久はピクニックの場として楽しみたいカテゴリーです。

富士スピードウェイでは日本唯一の24時間レースが行われる

レース観戦なのになぜピクニック気分なのかと言えば、レース自体が長丁場だからです。レースと言えば順位を決めるものですから、基本的に誰が何位なのか知っておきたい。

しかし、3時間レースを2日間だったり、5時間レースだったりするので最初から最後まで見るのは退屈だし疲れてしまいます。ですからスタートを見たら、BBQでも楽しんでチェッカーを観れば良い。くらいの気持ちで観戦するのがお勧めです。特に6月4〜5日に行われる富士24時間レースは、キャンプにもってこいのイベントです。

富士24時間レースは、土曜日の午後3時にスタートします。このスタートを見たら、BBQの準備を始め、のんびりと過ごし夕食を楽しむ。レース好きの友人と観戦すれば、色々なレース話に花が咲くことでしょう。そのまま焚き火を楽しみながら、夕暮れの富士山を眺めつつ夜更かしするも良し飲んで寝てしまうも良しです。
そして明け方の澄んだ空気の中、レーシングマシンの音を聞くのも楽しいと思います。あとはキャンプの片付けをしながら、昼食を取ってチェッカーを待つのみです。キャンプしながらの観戦は、意外と時間が早く過ぎるものです。スーパー耐久に関して言えばレースというより、サーキットの雰囲気を楽しみながら時間を過ごすのが楽しい観戦の仕方かと思います。

自分の観戦スタイルに合ったレースを選んでサーキットへ行こう

僕の独断ではありますが、それぞれのレースの性格がお分かりいただけたでしょうか。あとは、自分の観戦スタイルにあったレースを選んでサーキットへ行くだけです。

サーキットの雰囲気を味わいながら、友人と楽しい時間を過ごすにはスーパー耐久が最適です。ドライバー同士の意地のぶつかり合いや、レースに詳しい方にはスーパーフォーミュラが良いと思います。ZやNSX、スープラに乗っている方は、自分と同じ車が走っているスーパーGTで思いっきり贔屓のメーカーを応援しましょう。

一度サーキットに行けば、ハマること請け合いです。ぜひレースを見に行って、自身の楽しいカーライフのコンテンツを増やしてください。

(文、写真:折原弘之)

折原弘之 プロカメラマン

自転車、バイク、クルマなどレース、ほかにもスポーツに関わるものを対象に撮影活動を行っている。MotoGP、 F1の撮影で活躍し、国内の主なレースも活動の場としており、スーパー耐久も撮影の場として活動している。また、レース記事だけでなく、自ら企画取材して記事を執筆するなどライティングも行っている。

作品は、こちらのウェブで公開中
https://www.hiroyukiorihara.com/

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