進路変更に関する道路標示を正しく理解していますか?2021年に増えた新たな表示も解説

道路にはさまざまな標識や標示があります。学科試験や技能試験をクリアして免許を取得したのにも関わらず、忘れてしまっているルールや誤って理解をしている法律もあるはずです。また、車の技術の進歩や危険運転による悲惨な事故などにより、法律が変更されたり、新たなルールが追加されたりしています。今回は、2021年に新たに新設された「進路変更禁止の注意喚起表示」を含めて、進路変更に関する道路標示やルールを解説します。

道路交通法における進路変更

道路交通法 第26条の2「進路変更の禁止」では、進路変更について『車両は、みだりにその進路を変更してはならない。』と定めています。つまり、自分勝手に進路変更という行為を行うことは禁止されているです。

しかし、実際の交通場面では、駐車車両や工事現場などの障害物があったり、右左折のために通行帯を変更したりしなければなりません。そのため、道路交通法 第26条の2第3項には、例外が定められているのです。

進路変更の禁止の例外とは

進路変更の禁止の例外に関する条文を要約すると、道路交通法 第40条「緊急自動車の優先」の規定に従う時と、道路の損壊、道路工事、その他の障害など道路の状況・事情による場合をわけて考える必要があります。

緊急自動車を優先させる場合は、交差点や交差点付近では、交差点を避けてかつ左側に寄せて(一方通行の場合は右側も許容される)一時停止、上記外は道路の左に寄って進路をゆずります(一時停止の必要はありません)。

道路の損壊、道路工事、その他の障害など道路の状況・事情の場合は、車両通行帯を超えて進路変更ができます

進路変更をするときの注意点

道路交通法 第26条の2 第2項には『車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。』と定められています。

条文を言い換えると、進路変更後の車線を走行している車両に急ブレーキや急ハンドルをさせてしまう恐れがあるときは進路変更をしてはならない、ということです。

何らかの理由により進路を変更する場合には、進路を変更しようとする約3秒前に合図を出し、ミラーや目視で周囲の安全を確かめてから、進路を変更しましょう。ただし、緊急自動車を優先させるときや道路工事などの障害物を避けて通行する場合には、進路変更禁止の例外になるため、通行している通行帯の線を超えて通行することができます。

進路変更に関する道路標示

進路変更に関する標示には、黄や白でペイントされている道路標示、交通の円滑を図る目的で車を誘導する区画線や法定外表示などがあります。道路にペイントされる標示・区画線・表示は、同じ線でも色によって意味が異なるのです。ここからは、それぞれの線の色や形状による意味を理解していきましょう。

黄で示される道路標示

黄で示される道路標識は、規制標示であることが多いです。通行帯が黄の実線または二重の黄の実線で区画されている場合は、線を超えて進路を変更することができません。また、黄と白の並行線で区画されている通行帯の場合は、黄側の通行帯から進路を変えることができません。

黄の実線の場合には、基本的に線を超えて進路を変更したり、はみ出したりすることができないと覚えておくと良いでしょう。

2021年、黄ペイントの矢羽型の表示が新設されました。この表示は、進路変更禁止区間の手前にある「進路変更禁止の注意喚起表示」です。詳しい内容は、"新設された「進路変更禁止の注意喚起表示」について"の項目をご覧ください。

白で示される道路標示

白で示される道路標示には、実線や破線などがあります。線がペイントされている場所によって中央線や車線境界線など、さまざまな意味をあわせ持っているため、理解が少し難しいでしょう。ここでは、一般道路によくある中央線と車両通行帯について解説します。

【中央線】

白の中央線は、道路の幅が6m以上の場合に実線、6m未満の場合に破線になります。白の実線の中央線は、線を超えてはみ出すことができません。ただし、線を超えなければ追い越しができます。一方、破線の中央線は、はみ出しや追い越しが可能です。

【車両通行帯】

車両通行帯の場合は、白の実線・破線のどちらも車線変更や追い越しができます。ただし、交差点・踏切・横断歩道・自転車横断帯の手前から30m以内の部分は追い越し禁止場所であるため、白の道路標示であっても追い越しができません。

新設された「進路変更禁止の注意喚起表示」について

2021年に新設された「進路変更禁止の注意喚起表示」は、1月16日から3月13日まで東京都内2ヶ所の交差点で試行設置され、4月に発表された法定外表示です。

法定外表示とは、交通の安全と円滑を図るために設置される路面表示・カラー舗装・交通規制の実効性を高めることを目的として設置する看板などを指します。

進路変更禁止区間の注意喚起表示は、進路変更禁止区間の手前にある黄ペイントの矢羽型の表示で、運転者に対して事前に進路変更禁止区間を知らせるために設置されました。

進路変更禁止区間と同じ色でペイントされているため、注意喚起部分で進路変更をして良いのか悩むかもしれません。警視庁よると「進路変更禁止区間の注意喚起表示」の注意喚起区間での進路変更ができると公表されています。ただし、注意喚起区間のすぐ先にある進路変更禁止区間では、これまでどおり進路変更はできません。つまり、黄の矢羽型(注意喚起区間)から黄の実線(進路変更禁止区間)までの区間は、進路変更禁止違反にならないということになります。

進路変更の方法

進路変更の方法は、国家公安委員会が公表している「交通の方法に関する教則 第5章 自動車の運転の方法 第5節 進路変更など」に表記されています。進路変更の手順は次の通りです。

1.進路変更をするときは、ミラーなどを使い、あらかじめ安全を確かめます。
2.進路を変えようとする約3秒前に合図を出します。
3.合図を出してから約3秒後に進路変更を開始します。
4.進路変更をしている最中は合図を継続します。
5.進路変更が終わったら合図を消します。

進路変更を開始する直前に再度ミラーと目視で周囲の安全確認をしてから進路変更をしましょう。また、進路変更をする際のハンドル操作量は少ないこともあるため、合図の消し忘れがないよう注意してください。

合図を出した状態を継続した場合、合図制限違反になることがあります。合図制限違反は、合図の時期や方法を守らない場合に適用される違反です。合図制限違反の点数は1点で、反則金は普通車が6,000円、大型車が7,000円、二輪車が6,000円、小型特殊が5,000円、原付が5,000円となっています。

進路変更禁止違反の罰則

進路変更が禁止されている場所で進路変更をすると、進路変更禁止違反はとなります。違反点数は1点です。反則金は、普通車が6,000円、大型車が7,000円、二輪車が6,000円、小型特殊が5,000円、原付が5,000円となっています。

意味を理解して安全運転を

進路変更に関する道路標示は、線の色と形で意味が異なります。また、進路変更禁止の注意喚起表示については、新たに設置された表示であるため、初めて見たときに戸惑ってしまうかもしれません。新しい表示の意味や進路変更に関するルールを正しく理解して、安全運転をしましょう。

(文/写真:齊藤優太 編集:ガズー編集部 岡本)

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