関谷正徳 レジェンドコラム 第4回 当たり前の国日本

みなさま、こんにちは!関谷正徳です。
よく皆さんに聞かれるのが「関谷さんは、どんなクルマに乗っているんですか?です。
「エスティマ!大好きです!」と、即答します。ちなみに僕は、初代の卵のエスティマを3台、現行のエスティマを2台乗り続けています。この5台のエスティマは、すべて10万キロオーバーで乗り換えていましたが、前回のエスティマは20万キロ走り、いまだ友人の元で元気に走り続けています。それぐらいエスティマを気に入っています!エスティマが快適なので、オートポリスや岡山以外のサーキットへは、全てエスティマで移動しています。

僕が免許取り立ての頃のクルマは、よくトラブルがあったものです。ファンベルトが切れる、プラグ交換、ポイント交換、ウォーターホースの交換などしっかりメンテナンスをしないと走行中えらい目に遭うことが良くありました。今の時代では信じられないでしょう。

クルマの進化は目覚ましく、最近では殆どメンテナンスフリーな感じですよね。これらはすべて、一つ一つの部品の精度、耐久性が飛躍的に向上したことで、これまでのトラブルが解消されました。ですから10万キロオーバーした自分のエスティマは、全てがノートラブル。トヨタの回し者ではありませんよ。事実なのです。部品の耐久性が上がることで日本車の信頼性が世界中で高まり、今や世界一の自動車生産国です。そして信頼性の高い日本の中古車も世界に輸出され、新しい事業も生まれています。

トラブルの心配をする必要がなく、安心してドライブが出来る事が当たり前になった今日ですが、更にクルマに対してユーザーが多くの要求を求めるようになり、その結果、クルマは益々便利になってきました。多種多様の要求に答えるために、メーカー側はアイデア満載のクルマを発信しています。

当たり前ってどうなんでしょう?
僕が子どもの頃は、クルマが珍しくクルマを所有しているだけで優越感がありましたけど、今ではクルマは珍しいものではなく、当たり前になっています。ただ、当たり前なので有り難みが薄くなるのも当然です。

レースで世界を訪れるたびに、今の日本人は、多分世界で一番安全、安心な環境で暮らし、世界中の美味しい物を食し、世界一清潔で、世界で一番便利な国で生活しているのではないかと感じます。今の私たちにとって、これも当たり前なのです。すごい国ですよね。僕は、この国に生まれて本当に幸せだと思っています。

すごい事を当たり前にしてしまう日本で、自動車産業が日本の基幹産業になっていることはご存知かと思います。しかし、自動車文化とか、モータースポーツについて考えますと決して多くの人から理解を得ているとは言えません。それは何故、どうしてなのかという疑問が残ります。

どうしてなのでしょう? クルマを当たり前に使用しながら、余りありがたがってもらえない。クルマを使用した事故や犯罪、クルマに良いイメージを持つことが出来ないニュースが多過ぎるのではないでしょうか? 残念な事に、そんな悪い事ばかりニュースで取り上げられますよね。当たり前だから価値がないのでしょうか?

クルマ関連の仕事で生活している人たちは何百万人といるのに、モータースポーツは贅沢、ムダ、お金持ちの遊び、事故死など悪しきイメージが作られてしまった結果が、今のモータースポーツの一面に加えられてしまっていると感じる時があります。

日本には、国際サーキットが7カ所存在しますよね。この事も実は凄いことなのです。ここで競争が生まれます。タイヤの競争を一国で出来てしまうのは日本だけなのです。先日スーパーGTの最終戦が、栃木県​のツインリンクもてぎというサーキットで行われ、最高に楽しいハイレベルなレースを見ることが出来ました。このスーパーGTというレースも世界で一番面白いモータースポーツだと心底思っているのですが、当たり前なのでその価値を理解出来ずにいることが残念でなりません。

この競争をすることでクルマの性能が上がったのは事実です。競争だけが全てではないけれど、競争をする事で商品価値が上がり、人が育ち日本のクルマ文化が進化していく。でも、これも当たり前になってしまっていて凄いこととはならない。

アメリカのように、モータースポーツが野球やアメフトと同等のスポーツにならなければ本当の意味での自動車大国にはならないのではないでしょうか。関係者もメディアもこの事にもっと目を向けて”当たり前“のフィルターを外して行くことが、私たち関係者が求めている方向に向かうべき方法だと考えています。

関谷正徳

[ガズー編集部]