関谷正徳 レジェンドコラム 第6回 これからのモータースポーツの在り方
みなさま、こんにちは!
今回は、これからのモータースポーツの在り方について私の考えをお話ししましょう。
モータースポーツは、これからどうなって行くのか?
どうなっていくというよりも、FIAとかJAF、自動車メーカーの関係者が、より良いと考えた方向に進んできた結果が今のモータースポーツだというのは明白です。しかし、最近のF1をみていると、どの角度から見てもエキサイティングなスポーツには見えて来ないのはどうしてでしょう?
長年レースに関わったプロの人達が考えて、今のF1ルールにしました。全てよりよいと思って決めてきたことなのですが、答えは…、皆さんご存知の通りです。F1は、常に進化を遂げ新しい技術を取り入れ、世界最高峰のモータースポーツとして認識されてきました。そして、後進国にも新設のサーキットを作らせ発信しました。しかしながら、後進国の人にいたっては、まだ現時点ではF1の面白さや価値観はなかなか伝わっていないのが現状ではないでしょうか。
今世界が必要としている新しい技術は、F1が向かおうとしている方向では無くなってきているように感じます。私ごときが発言することでもないと思いますが、F1が面白くないというのは事実です。WECにおいては、自動車メーカーにとって新技術の競争の場としてこれからも継続していくでしょう。
今、一般車では燃費と自動運転、燃料電池、電気自動車の方向に進んでいます。今までとは違う形での自動車の技術革新が生まれつつあるのです。
私は、モータースポーツの世界で生きているレース屋なものですから、モータースポーツがより発展し、大衆の人達に愛されるモータースポーツになっていかなければいけないと日々考えている毎日です。本当に毎日考えています。皆さんにはあまりピンとこないかもしれませんが、日本のモータースポーツは今、世界で最高のモータースポーツをしています。
SUPER GTが、世界で一番面白いレースだと気がついている方は私だけではないでしょう。
内容、レベルにおいても世界一だと自信を持って発言したいと思います。F1ドライバーが来ても、未だに表彰台に上がることができない位レベルは高く、GT300クラスとGT500クラスのそれぞれのカテゴリーの混走の中で、接触を避けパスして行く技術は、相当なテクニックを要します。
ところがです。日本人は、というよりも日本のモータースポーツ関係者は、この凄いレースを自らが価値あるものとして理解し、価値あるものとして発信していくことが実は苦手なのかもしれません。有料チャンネルではありますが、F1を始めDTM、ナスカー、インディなど世界で行われているレースを目にしますが、SUPER GTの面白さとハイレベルな内容はこれらのレースを圧倒しています。
日本では、このように外国のモータースポーツはたくさん国内に発信しているのに、自分たちのモータースポーツであるSUPER GTやSUPER FORMULAをなぜ世界に向けて発信しないのでしょうか?
その理由として考えられるのは、そこに関係者の意識の目が向かない、誰かがやってくれる、世界に発信するほど凄いことと思っていない、めんどくさい、今のままで十分…ということでしょうか。
もし、関係者が日本のモータースポーツの価値を解らなければ、そのようなことは十分理解できますが、私的にはものすごい価値があるモータースポーツだと思いますし、関係者も実は心の内ではそうしたい!と思っているでしょう。しかし、自分だけではどうにもならないですね!
日本人というのは面白い民族で、よく言えば謙虚、悪く言えばコンプレックスがあるので、海外で認められたスポーツは凄い!でも、日本の中だけで認められるスポーツは凄くないと考えてしまうようです。ですから、もし逆に、今、この日本の最高に面白いレースを世界に発信して海外で火が付いたとしたら、その時初めて日本人は、日本のSUPER GTやSUPER FOURMULAが凄いレースだと気づいてくれるのかもしれません。
私は、これからのモータースポーツは「自動車競争」と「ドライビング(運転すること)競争」をスポーツとして理解した上で、二つの方向に分けて進んで行くことがこれからの道ではないか?と考えるようになってきました。
自動車競争とドライビング競争。自動車競争ではハードの闘いではありますが、そこに開発者やドライバーのセッティング能力が反映されて“このクルマが凄い”という答えは出ますが、ドライビング競争ではレーシングドライバーの誰が速い、上手いという答えは、今のモータースポーツではなかなか見えにくいのでしょう。
相撲では白鵬VS日馬富士どちらが強い、答えは明白です。テニスでは、ジョコビッチVS錦織、ゴルフではバッハ・ワトソンと石川遼。全て直接対決をしています。そしてテニスやゴルフで選手が勝利を手にしたとき、観客は、ジョコビッチのラケットが凄いとか、石川遼のドライバーやボールが凄いとは思わないでしょう。彼らがスポーツ選手として凄いと見てわかるのです。
では、アロンソVS可夢偉はどっちが速いの?ドライバーとして優れているの?私にもわかりません。想像ではアロンソと答える方が多いのではと想像しますが、私は「わからない」と答えます。ひと昔前と違い、今のモータースポーツはドライバーのスポーツ選手としての凄さが解らないスポーツになってしまっているからなのだと思えてならないのです。
関係者がこれからやらなければいけないことは、もっとシンプルにこのスポーツの良さや素晴らしさを伝えていく方法を考えて実行していくことだと思います。私たちのモータースポーツは、野球やサッカーに負けないぐらいエキサイティングなスポーツなのですから。
関谷正徳
[ガズー編集部]
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