谷口信輝 ドライバーズコラム 第9回 テレビCMの影武者

最近のクルマのCMは、ドリフトというか、クルマを滑らせてるシーンが増えてきました。一昔前までは、事故を連想させるからなのか、全くありえませんでした。

僕がまだ小さい頃、いすずジェミニのCMを見た時のインパクトったらもう… 凄かった。誰もが知っているCMでした。クルマとクルマがシンクロするシーンがあったら…、「ジェミニみたい!」って誰もが言うくらい。

僕は昔から、CMに出るのが夢です。BMX少年だった頃…、ファンタのCMに憧れました。BMXがやってきて、クルッと1回転回り、そのまま走り去っていくシーンを見て、「僕もああいうCMやりたい!」と。

コカコーラのCMを見て、「爽やか~エブリデイ~♪」と、美味しそうにコーラを飲むだけのとっても爽やかなCM、あれやりたい!と(笑)

過去に、トヨタさんのラクティスのCMに佐藤隆太さんの影武者として出ました。あとBMW 320DのCMのスタントドライバーもやりました。この320Dの時は、特殊技術走行が必要だったので、まさに僕にうってつけです。

どノーマルの320Dで、ドリフト走行をします。今時のクルマでドリフトをするのは、めちゃくちゃ難しいのです。

なぜか?

まずは、マニュアルではなく、オートマ。そして、電子制御の塊。基本的にはオーバーステアが出ないような仕様になっている。

なので、ヒューズを抜いて、強制的にトラクションコントロールや、横滑り防止装置をオフにします。あと、ABSもオフにします。これでとりあえず、「あとは、僕がなんとかします仕様」になります。

とーこーろーが!

この320D…、角度を深くすると、ギアがドライブからニュートラルになっちゃうの。言ってることわかります? パワーがそんなにあるわけじゃないので、一旦オーバーステアが出始めたら、角度を深くつけたいわけなのですが、角度を深くつけると…、急に駆動がなくなり、ドリフトを維持できなくなるんです。

で、シフトを見ると…、DレンジからNに戻っちゃうんです。

なんて娘なの!

で、どうするか?角度を深くしないように走るしかない。ただでさえドリフトに持ち込むのが難しいのに、角度もつけてはいけないという。

そして、次の特殊技術走行は…。
地面に立てた花を、カウンターを当てた状態でスレッスレを通って下さいと。

僕は、「バンパーがですか?タイヤがですか?」
監督「タイヤです」

簡単に言いやがって…。

バンパーならまだしも、カウンターを当てた状態でタイヤがスレッスレって…、結構難しいぞ!だって…、バンパーの方が先にあるんだから。

僕は、僕なりの緻密な計算を元に、加速速度、サイドブレーキの効き具合、進入角度を計算し、パーフェクトな仕事をしてました。本当にスレッスレですよ。

スタッフさんからは、「花、1つしかないんで、壊さないでください」だって。

カメラマンは、花のすぐそばにいるし。

かなり難易度高い事をやらされていました。

朝4時に阿見飛行場に集合し、8時半までの4時間の撮影。そこから大渋滞の中、5時間もかけてSUPER GTのテストの為、富士スピードウェイへ。

かなり難易度の高い、僕にしか出来ない特殊技術走行の撮影をしたので、BMWからさぞかし高額なギャラが貰えるのだろうと思っていたら…(泣)。

GAZOOさんも、最近はとてもイカしたCMばかり。僕はとても嬉しいです。「ジェミニみたい」が、「ガズーみたい」って、世の中の人の共通語とかになるといいね。

アンドレア・カルダレッリ選手がブリヂストンのCMで、レーシングカーでカッコよく出てますが…、めちゃ羨ましい~。

YOKOHAMAさん、そろそろ「織戸×谷口」でCMやっていいんじゃないですか~(笑)

[ガズー編集部]