ダカールラリー 取材同行の旅No.6
メカニックの1日(後編)
メカニックはダカールラリーの期間中、どのように整備をし、休息を取り日々を過ごしているのか?過酷なレースをドライバーと共に戦うメカニックの1日を追った後編。
競技車がビバークに帰ってきたら、まずプリンシパルやエンジニアが、マシンの状況、不具合がないかなどを確認。そしてすでに破損箇所や不具合が明確な箇所があればメカニックに伝えられる。チェックリストが作成され、それに従い作業にとりかかる。
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- ヤジード選手とコンビを組むコドライバーのティモ選手から、マシンの状況を聞く。ティモ選手は2011年に総合優勝したコドライバー、的確な情報をエンジニアへ伝える
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- 好調な走りで楽しそうにプリンシパルに状況を話すリロイ選手。マシンがサービスに到着してすぐ選手の表情を見るのも言葉以上に大切な情報になる
メカニックはまずアンダーガードを外し、スペアタイヤを降ろして、下回りを中心にチェックする。砂埃程度であればそのまま作業を進めるが、湿った泥などがこびりついていたら、一度ここで洗車。
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- 手前の大きな板がアンダーガード。下回りを覆っているだけにとても大きい
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- 雨のステージを走ってきたマシンは、特にホイールに泥がこびりつき、ホイールバランスを崩すので徹底的に洗浄する
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- エンジンルームも、泥が付いていては燃料、オイル、冷却水漏れや緩みなどが見えないので洗ってきれいにする
そしてサービスに戻し、ジャッキで持ち上げ、ジャッキスタンド(ウマ)をかってホイールを外す。クロスカントリーラリーでは、特にブレーキローターや下周りに石が詰まったりするので、基本的なことだが毎日清掃する。メカニックは基本的に分業化されている。サスペンションやブレーキ関係の担当、下回り中心の担当、エンジンルーム担当といった具合だ。こうすることで責任が明確化できる。
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- 下回りは数人で作業する。不具合はないか、漏れや緩みはないか、ダブルチェック、トリプルチェックをしながら完璧に仕上げる
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- 足回りや駆動系の整備はやはり力がいる。撮っているこちらもぎゅっと奥歯を噛み締めてしまう
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- 洗車をしてから整備をしていても、どこからともなく土の塊が落ちてきたりする。しかしそんなことは気にしていられない
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- 晴れた日は作業もはかどる
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- 一通りメンテナンスが終わったら、ジャッキスタンドで持ち上げたままエンジンをかけ、ギヤを入れてタイヤに駆動を伝え、スムーズに回り、異音が出ていないかチェックする
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- ジャッキスタンドから降ろしたら、メカニックが試走する。毎日こうして万全の整備をして確認をし、自信を持って選手たちにマシンを託す
ただクラッシュしたりして、大幅な修理が必要な場合は、全員で手分けして進める。特に問題がなければ作業は4時間くらいで終わり、メカニックは遅い夕食を食べに食堂へ向かう。夜中までかかりそうな大きな作業がある場合は、一旦夕食を食べて、深夜まで作業をする。
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- マシンがビバークに帰ってくる時間が遅かったり、修理する箇所が多ければ作業は夜遅くまでかかることもある
休息日は一日かけてマシンをリフレッシュ
選手やオフィシャルのやすらぎのひととき、中間日にある休息日はメカニックにとっては逆にフル操業日となる。市販車部門のマシンはショックアブソーバーやクラッチ交換、エンジンオイルなど油脂交換から細かい作業をする。総合優勝を目指しているマシンは、市販車部門のマシンがする作業に加え、エンジンごと降ろすチームもあるが、だいたいミッションを降ろしてドライブシャフトを交換したり、サスペンションアームを交換。ボディで傷んだ箇所を交換したりして、スタート時とコンディションが同じようになるまで部品交換をする。またカミオンに積載しているタイヤを取り出しやすいように並べ替えたり、部品や工具の整理をする。こうして後半戦も新車同様にまで仕上げていく。
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- 休息日にはミッションを降ろして部品を交換していく
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- 市販車部門に参戦するマシンは、まるでディーラーで車検の整備をするかのように、ブッシュや磨耗した部品を新品の純正部品と交換したり、油脂の補充などをする
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- メカニックにとって命ともいえる工具も、このときにきれいにしながら整理整頓する
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- カミオン部門はタイヤをホイールから外すだけでも大変そうだ
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- カミオンのオイル交換は、オイル量が多いから大変だ。タイヤの上に載っている四角くて大きな黒い容器でエンジンオイルを受ける
撮影していても、メカニックが作業しているときの集中力に圧倒される。すべては毎日ベストな状態で選手たちに走ってもらいたい、そして完走はもちろん、上位でポディウムに上がりたい、そんな思いが伝わってくる。ダカールラリーはいくら優秀なドライバーがいても、決して勝つどころか完走すらできない。こうしてメカニックなどアシスタンスがいて初めて毎日スタートに立てる。ラリーの語源は再び集まるという意。選手、メカニックが毎日ビバークで笑顔で会えるのは、お互いが持てる技術のすべてをマシンにつぎ込み、日々ゴールへ向かうからだ。モータースポーツはチームスポーツであることを、ダカールラリーはあらためて気づかせてくれる。
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- 作業をしているときは厳しい顔をしているが、ふだんはこんなに朗らかな笑顔のメカニック、サポートクルーたち
(テキスト/写真:寺田昌弘)
[ガズー編集部]
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