ダカールラリー 取材同行の旅No.7

選手たちをサポートするメカニックなどチームクルーが乗るのが、アシスタントカー。どのようなクルマに乗っているのか、休息日のサルタのビバークで、いろいろなチームのサービスを歩いて見て回った。アシスタントカーに求められることは、ほぼ毎日メカニックたちが乗って長距離を移動するので、快適で疲れないこと。たまにオフロードを走ることもあったり、ビバークは砂地が多いので、スタックしにくいこと。そしてなにより故障しないこと。乗員を快適、確実に次のビバークへ運んでくれるアシスタントカーに最も選ばれているのは、どのクルマか。

TOPチームが選んだアシスタントカー

総合優勝を目指すMINIやプジョー、ハイラックスを支えるアシスタントカー。まずハイラックスのTOYOTA GAZOO Racing SOUTH AFRICAは、トヨタ ランドクルーザープラドやトヨタSW4とトヨタの代表的なSUVを使う。高い悪路走破性だけでなく、長距離を走っても疲れない快適性の高さがいい。

アルゼンチントヨタからサポートを受けて、レンタルしてもらったり、協力関係にあるベルギーのOVERDRIVE TOYOTAに頼み、ヨーロッパから持ち込んでもらう

つぎにALL4 RACING MINIのAXION X-RAID TEAMは、BMWを使う。あえてグランツアラーやSUVのXシリーズではなくクーペを走らせるところがかっこいい。

手前のMINIはチームの広報が乗っている。あとはみなBMW。毎日のロングクルージングが楽しめそう

そして2008 DKR PEUGEOTのTEAM PEUGEOT TOTAL。もちろんプジョー2008を使っていると思いきや、そうではなく日本では正規輸入されていないバンタイプを使う。やはり合理的なフランス人らしい選択だ。

4名乗車でリアには荷物を乗せている

しかしもう少し見回してみると

トヨタ ハイラックスのダブルキャブで荷台にキャノピーをつけたタイプが。実用性重視でやはり4WDであったほうがなにかと便利

さらに3台のワークスマシンが競技中にトラブルが出たりしたとき、コース内でサポートするために、市販車部門に2台の競技車をエントリー。それが

ランドクルーザー200!メカに精通した選手が乗り込み、工具やワークスマシンのスペアパーツを積んで走る。ランドクルーザー200は、プジョーワークスにも信頼されているクルマだ
ちなみに999cc2気筒エンジンを搭載し、オート部門で最も小さいエンジンで挑むポラリスのチームは、同じようにコース内でサポートするためにランドクルーザープラドを競技に参戦させて、メカに精通した選手が乗る

アシスタントカーはチームの個性が出る

ほとんどのチームは、合理的に考えてアシスタントカーを選択するが、なかにはスタイルにこだわるチームもある。NASCARで活躍し、ダカールラリーではアメリカ人として初めてステージ優勝をし、今もファンを魅了するロビー・ゴードン選手は、これぞアメリカといったスタイルのモーターホームをあえて4WDで引っ張っている。

カルフォルニア生まれの陽気なアメリカンは、2013年から自らSPEED Energy Formula Off-Road(通称スタジアム スーパートラック)というレースを主催。現在アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドで開催され、人気急拡大中のレース
またこんなクラシックなフォードのトラックをアシスタントに使うチームも。チームの個性が出ていておもしろい
ベネズエラから参戦するチームのアシスタントカー。トヨタ ハイラックスはアシスタントカーとしてポピュラーだが、このチームは、南米大陸の北にあるベネズエラからスタート地のアルゼンチンまでいくつも国境を越えながら、陸路で走ってくる。ラリーのスタート前からかなりの距離を走っている

カミオン部門やクワッドクラスもトヨタが多い

オート部門だけでなく、カミオン部門でもトヨタを選ぶチームは多い。まずは日本から参戦するHINO TEAM SUGAWARAは、ヨーロッパでトヨタ ハイラックスを購入しアシスタントカーとして使っている。

日本でハイラックスが販売されていたとき、日野自動車で生産していたので、ハイラックスを選ぶ
カミオン部門の常勝チーム、カマズのアシスタントカーはトヨタ ランドクルーザー200。ロシアではランドクルーザーの人気が高く絶対的な信頼性の高さから採用されている。オーバーフェンダーを装着してよりマッシブなスタイルにしているのがロシア人らしい
ヤマハやホンダといった日本メーカーが強いクワッド部門にcan-amで挑むボリビアのチームはアシスタントカーにトヨタ タンドラを使っていた

こうしてさまざまなアシスタントカーを観て回ると、もっとも多かったのがトヨタ ハイラックス。2009年から主催者が南米大陸でラリーのルートを作り上げるときに乗っているのもトヨタ ハイラックスで、今年からオフィシャルカーをトヨタが供給するようになって、オフィシャルもみなその信頼性の高さから歓迎している。市販車部門で連覇しているトヨタ ランドクルーザーとトヨタ ハイラックスは、世界一過酷なラリーで最も信頼されているクルマだということを証明している。

(テキスト/写真:寺田昌弘)

[ガズー編集部]