ダカールラリー 取材同行の旅No.9

モータースポーツが公正かつ安全、円滑に進行していくのは、ひとえにオフィシャルのおかげだ。特にダカールラリーでは、オフィシャルも日々長距離を移動しながら競技を支える。彼らの献身的な思いがなければダカールラリーは成り立たない。参加台数が多いから、チェックポイントひとつとっても、半日近く外にいて、埃まみれになったりする。それでも彼らは、オフィシャルをしながら、南米大陸を旅しているといった陽気な感覚でダカールラリーの一員として楽しんでいる。

ダカールラリーを支えるオフィシャル

オフィシャルは、チェックポイントでスタンプを押すなど競技に直接関わる者、ビバークでフランスと交信しながら選手の位置情報をチェックしたり、レスキュー、食事、広報、撮影、オフィシャルカーの管理など多岐にわたる。大会ディレクターひとりでは到底、目が行き届かない。各パートがひとつのチームとなり、チームごとに隊が編成される。特にラリーの時間計測をする隊は、何時までにどのポイントで待機することだけは指示されるが、後は各自に任せられる。朝、競技車がビバークを出発する担当は比較的に楽。

ビバークからリエゾンをスタートするときは、選手たちが各自、自分たちの出発時刻に合わせタイムコントロールに集まってくる。選手たちは自分の出発前後のマシンのゼッケンを確認しながら出発順を整頓していく。オフィシャルはその確認をし、タイムカードを渡す

高い責任感と自主性が求められるのがチェックポイント(CP)担当。選手たちが通過する前にCPの準備をする。出来上がれば一安心だが、選手が通過し始めたら、ひとつの試練が待っている。

こうしてCPを準備し、選手の到着を待つ
まずはモト部門が到着し始める。こうして2台同時に来ることもあるので、すぐスタンプを押して選手がすぐ走れるようにしなければと俊敏さが求められる
続いてクワッドも到着する。ちなみにNo.259は女性ライダーのカメリア・リパロチ選手。 今回で7年連続完走。しかも毎回15位以内というすごい選手。マシンはヤマハYFM700R
そしてオート部門が着き始める。1秒を争うトップチームは、勢いよくやってくるので派手なジェスチャーをしながらスタンプを持って待ち受ける
サイドウィンドウの小さなスライドウィンドウを開けて、ナビゲーターがタイムカードを出す。そこをめがけてスタンプを押す
オート部門が続くと、こうして埃まみれになる。トラック部門も合わせるとこの環境下で数百回も作業を続けなければならない
上位集団が通過すると、やってくるマシンもまばらになってくる。こうしたときの楽しみは、やはりデザート
最終集団としてトラック部門が到着。高い位置に選手たちが乗っていて、おまけにシートベルトで固定されているので、ナビゲーターもタイムカードを持ち、できるだけ手を下げるが、あとはオフィシャルが手を伸ばして押してくれる。最悪トラックによじ登ることも
右側奥に停まっている「C4」のトヨタ・ハイラックスはチェックポイントのオフィシャルが乗るクルマ。左手前の「T8」のトヨタ・ランドクルーザー70は、救急車。ステージルート上で怪我をした選手が出て、ヘリコプターが入れない場所であれば、このクルマで助けに行く。この大切な仕事の相棒は、やはりトヨタ・ランドクルーザー70以外考えられないと同乗する医師は言う
ビバークへ到着すると医師同士で情報共有することも多い。このトヨタ・ランドクルーザー70の救急車は毎回フランスから持ち込まれる。だからフランスのナンバープレート
選手がステージルート上で再スタートができない怪我をしたら、ヘリコプターに医師が同乗して駆けつける。またバイクはこうしてヘリコプターで吊ってビバ-クまで持ち帰ることも

ダカールラリーを支えるトヨタのSUV

救急車のトヨタ・ランドクルーザー70はヨーロッパ・アフリカ大陸で開催されていた時代より使用されている。そして今大会からチェックポイント用のトヨタ・ハイラックスをはじめ、オフィシャルカーはすべてトヨタのSUVとなった。2009年、南米大陸に舞台を移してから、ルート開拓などにトヨタ・ハイラックスが使われているが、今回からトヨタ・ランドクルーザー プラドやトヨタ・SW4そして新型ハイラックスも数台使用されている。それらに乗るドライバー達に聞くと、これなら心配なくステージルートに入っていけるし、長距離移動も楽だから、ずっと乗っていたいとみな歓迎している。

今回から新たに加わったトヨタ・ランドクルーザー プラド(右)ノーマルは街中も似合うスタイリングだが、こうしてアンダーガードやアクセサリーランプをつけただけで、ラリーマシンのようだ
右側の赤いカラーリングがトヨタ・SW4、シルバーがトヨタ・ハイラックス
10年ぶりにフルモデルチェンジをしたトヨタ・ハイラックス
オフィシャルカーのメンテナンスは、アルゼンチントヨタが担当。優秀なメカニックたちがオフィシャルカーをサポートしている

ラリーを競技として走るだけでなく、オフィシャルカーとしてモータースポーツを支えるトヨタのSUVは、市販車部門で優勝するトヨタ・ランドクルーザー200だけでなく、ダカールラリーでもっとも信頼される市販車である。

(テキスト/写真:寺田昌弘)
 

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road